ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
手元のテガソードが、ふいに熱を持つ。
刃の輪郭が白く滲み、芯から光が押し出される。握っているのに、握られている感覚が増していく。形がほどけ、整い直し――名を変えた。
テガソードオリジン。
息を吸うより先に、背後の空気が跳ねた。
消えたはずの場所で、風が一度だけ逆流する。灰の匂いの奥から、足音が戻ってきた。
「……禽次郎。……戻ったんだな」
視界の端に、ゴジュウイーグルが立っている。装甲の継ぎ目を確かめるみたいに、自分の胸元へ指を当て、少し遅れて顔を上げた。
「長生きはしていたが、まさか、本当にこんな奇跡があるとはな」
その言葉に、陸王が喉を鳴らして笑った。いつもの余裕が、今は薄く震えている。
「うん。……やっと、揃った」
角乃は一歩だけ近づき、言いかけて止めた。手を伸ばしそうになった指先が空を掴み、握り直す。
「……ほんと、馬鹿。……勝手にいなくなるな」
竜儀の肩が大きく上下する。祈りの前の呼吸。拳を胸に当て、短く叫ぶ。
「これこそ、テガソード様の奇跡!」
――ただ。
真白の位置だけが空白のまま残っていた。折れた木の影に、氷の反射だけがちらつく。そこへ触れないまま、指輪が夜空を裂いて戻ってくる。一本の光が吠の手元へ、もう一本が角乃へ。陸王へ、竜儀へ、禽次郎へ。指に収まる音が、やけに現実的だった。
レクスが、たしかに動揺を隠せない顔で身を乗り出す。
声が割れ、怒りが漏れた。
「お前達は一体、何なんだ!」
吠はテガソードオリジンを見上げ、次にレクスを見た。視線を逸らさない。喉の奥に残ったざらつきを噛み潰す。
「お前はもう知っているだろ、けど、せっかくだ、名乗ってやるよ、エンゲージ!」
テガソードへ指輪をセットする。
場面が切り替わる。
吠が叫ぶ「エンゲージ」の余韻に、陸王が顔の横で二回、軽くクラップする。乾いた音が澄んで響く。
竜儀は脚で二度ステップを踏み、山の地面を叩く。重さが返ってきた。
禽次郎は顔の横で一回だけクラップする。迷いがない、短い合図。
角乃は前で大きく円を描き、腰の横で二回クラップ。空気を整える動きが鋭い。
五人が同時に、頭の上へ円を描くようにターンする。
装甲の継ぎ目へ光が走り、身体の芯に“戻る”感覚が噛み合う。最後に、頭上で一回。
『クラップユアハンズ!』
『ハッハッハッ!ゴジュウウルフ!』
『ゴジュウレオン!』
『ゴジュウティラノ』
『ゴジュウイーグル!』
『ゴジュウユニコーン!』
名が揃った瞬間、山の空気が変わった。
吠は一歩だけ前へ出る。背中に残る空白が刺さる。刺さったまま、拳を握り直す。目の前の厄災は、まだ笑う余裕を探している顔だった。
山の夜気を、先に破ったのは敵でも味方でもなかった。
ファイヤキャンドルが槍の石突きを地面へ打ちつけ、火花みたいな声を張り上げる。
「さぁ来い来い来い! 最後の名乗り合いだァ!」
隣でブーケが扇をひらき、目を輝かせて身を乗り出した。砕けた岩にヒールを乗せる、その姿だけ妙に優雅だ。
「拍手の準備を! 一番輝く方に、全部捧げますわ!」
アーイー達が一斉に腕を振る。
「いざ掴め!ナンバーワン!」
乾いた山に、無邪気な熱だけが先に満ちていく。
その熱を、レクスは冷たい目で見下ろした。
巨躯の影が月を踏みつけるみたいに揺れ、声だけがやけに静かに落ちる。
「いい名乗りだ。だが、拍手は要らん。私は厄災のレクス――お前達の“ナンバーワン”を、世界ごと無かったことにする者だ」
空気が、すっと細くなる。
笑い声も、風の音も、半拍だけ消えた。
次の瞬間、ファイヤキャンドルが牙を剥くように笑った。
「上等! 世界ごと? なら世界ごと応援してやる!」
ブーケも扇を閉じ、ぱん、と手を打つ。
「拍手はいらない? ますます鳴らしたくなりましたわ!」
「クラップ! クラップ! クラップ!」
アーイー達の手拍子が戻る。
それは挑発であり、祈りであり、戦場の号令だった。
吠が一歩前に出る。
背後に戻った仲間の気配。禽次郎の呼吸。竜儀の踏みしめる足。角乃の視線。陸王の、場を照らすような気配。そこへ、響たち六人の歌う前の静けさが重なる。
「俺は、所詮、この世のはぐれ者――それでも手にした、この絆! はぐれ一匹、ゴジュウウルフ!」
「僕は、みんなのゴジュウレオン!」
「怪力伝道師、ゴジュウティラノ!」
「チャララっといこうよ、ゴジュウイーグル!」
「ハイクラス&ラグジュアリー、ゴジュウユニコーン!」
間を継ぐように、響が前へ出た。拳を握る音が聞こえる気がした。
「握った手は離さない! ぶつかって、繋いで――未来の為に! 立花響ッ!」
「剣は祈り、歌は刃――風鳴翼!」
「うるせぇ運命は撃ち抜く! 雪音クリス!」
「奪わせない。守るために、私はここに立つ! マリア・カデンツァヴナ・イヴ!」
「怖くても進むデス! 暁切歌!」
「壊させない。私はここにいる。月読調!」
名が重なるたび、山の空気が押し返される。
レクスの足元に伸びた影が、わずかに揺れた。
吠は皆の声を背に受けたまま、低く、噛みしめるように呟く。
「我ら、ナンバーワン戦隊……!」
その続きは、誰か一人のものじゃなかった。
ゴジュウジャーの五人が。シンフォギアの六人が。拍手を止めない応援団の熱まで巻き込んで、同じ名を叩きつける。
「ゴジュウジャーッ!!!!」
山が鳴った。
手拍子と名乗りがひとつの波になって、厄災の巨体へぶつかっていく。
この場にいる全員の意地が、いまだけは同じ旗の下に立っていた。