ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦   作:ボルメテウスさん

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警察官3人

荒巻恭吾――レッドレーサーが前へ出た瞬間、空気の流れが変わった。

モノスの群れが斜面を埋める勢いで迫る。数だけなら押し潰せる。そう言わんばかりの密度。だが、荒巻は一度も退かない。肩を落とし、踏み込みだけで距離を奪う。

 

手にしたフェンダーソードが、月明かりを薄く切った。

 

「どけぇぇぇ!!」

 

叫び声が山に反響する。怒鳴り声というより、突風の始まりみたいな音だった。

次の瞬間、刃が走る。横一文字。続けて縦。斜め。モノスの胴が遅れて分かれ、黒い影がばらばらに転がる。血の色はない。代わりに、灰じみた破片が散り、乾いた臭いが一瞬だけ濃くなる。

 

荒巻の足が止まらない。

踏む。切る。踏む。切る。

刃が当たるたび、モノスの列が“穴”になる。その穴へさらに踏み込み、次の列を切り裂く。まるで嵐が通り過ぎるように、次々と斜面の黒を剥いでいった。

 

「邪魔なんだよォォ!!」

 

フェンダーソードが弧を描き、数体まとめて吹き飛ぶ。

モノスが腕を伸ばしても、伸ばす前に切り裂かれる。背後へ回ろうとした個体が、回り込む途中で斬線に絡め取られ、空中でほどけて落ちた。荒巻の動きには迷いがない。止まる理由がない。怒りが推進力みたいに見えた。

 

角乃は、その背中を一瞬だけ見た。

怖い。正直、怖い。けれど、頼もしい。――今は、それで十分だ。

 

旭は思わず声を漏らす。モノスの断末魔のような擦れ音の合間に、気の抜けた呟きが落ちた。

 

「うわぁ、相変わらず、怖い人だなぁ」

 

角乃が横目で睨む。口元だけがわずかに動く。

「けど、今は頼もしく感じるでしょ。ほら、旭もさっさと構えなさい」

 

「はい!分かりました!」

 

旭の返事が跳ねる。

パトレン1号が銃を構え直す。指先が引き金に触れ、呼吸が整う。

荒巻が切り開いた“風の通り道”の向こうで、新たなモノスが群れを成して迫ってくる。

 

角乃の視線が前へ戻る。

 

斜面を埋める黒が、また押し寄せてきた。

荒巻が切り裂いた“風の通り道”は、息を吸う間もなく塞がる。モノスの列は崩れても、崩れたまま次の列が押し上げる。踏み場が消える。視界の端が黒で濁る。

 

「旭、今!」

 

角乃の声は短い。だが、指先の向きで十分だった。

“撃て”じゃない。“止めろ”だ。

 

パトレン1号――旭明が一歩前へ出る。

踏み込む足は軽いのに、腰が落ちている。銃を構える腕がぶれない。呼吸は細く、短い。面の内側で、息が一拍ごとに切られていく。

 

「了解です、先輩!」

 

VSチェンジャーの金属が掌に冷たく張りつく。引き金の遊びを確かめるように、指が一度だけ動いた。

次の瞬間には、銃口がもう“最初の標的”を捉えていた。

 

一発目。

狙いは胸でも頭でもない。群れの前列の、足元――小石が積もって滑りやすい場所。水圧の線が地面を抉り、モノスの脚が一斉にずれる。先頭が転べば、後ろは詰まる。詰まれば、列は崩れる。

 

二発目。

今度は右側面。群れの外縁にいる個体の足首を“叩く”。倒れた影が横へ転がり、逃げ道を塞ぐ壁になる。勝手にバリケードができる。

 

三発目。

左の斜面、飛び出そうとした個体の肩を掠める。掠めた、というより“向きを変えさせた”。撃たれた衝撃で体が半回転し、仲間とぶつかって足を止める。

 

「……っ、狙撃じゃなくて、誘導か」

 

角乃の呟きが漏れる。

旭は返事をしない。返事の代わりに、次の一発を撃つ。目線がもう次の“詰まり”を読んでいる。

 

モノスが背後へ回り込もうとする。

その動きが始まった瞬間、旭の銃口がぴたりとそちらへ向いた。迷いがない。

撃ったのは、背中へ回る個体の“影の先”――足が置かれる場所だ。水の線が先にそこへ走り、地面が滑る。モノスは踏み外し、勢いのまま前へ転がった。

 

「危なっ……!」

 

旭が息を吐く。焦りじゃない。照準を切り替えるための吐息だ。

銃を動かしているのに、肘が揺れない。肩が浮かない。腕だけで撃っていない。下半身で銃を支えている。

 

スロットへ滑り込ませたトリガーマシンスプラッシュが、淡く光った。

 

『トリガーマシン スプラッシュ!』

『警察ブースト!』

 

鳴った瞬間、空気が湿る。

水が噴き出した――ただの水じゃない。圧の線が網の目を描き、モノスの足元へ刺さる。地面の砂利が跳ね、土が削れる。そこへ旭が、追撃のように“狙い撃ち”を重ねた。

 

逃げようとした個体の前に一発。

止まった個体の背後に一発。

勢いで押される列の側面に一発。

狙いはすべて同じ――「行きたい方向」を奪うこと。

 

「集まれ!」

 

声と同時に、チェンジャーが唸る。

水の線が輪郭を持ち、光の枠になる。手錠の輪のような、逃げ道のない枠。

ばらけていた黒が、強引に同じ場所へ寄せられていく。押され、押され、押される。壁に追い込まれる動きではない。交通整理だ。逃げ道の選択肢を減らして、選べる道を一本にする。

 

旭の撃ちは、そこで終わらない。

輪の外へ出ようとした個体の足元を、寸分の狂いもなく叩く。

跳ねた破片が輪の内側へ転がり、さらに足場が悪くなる。

一体が転べば、三体が詰まる。三体が詰まれば、十体が重なる。

 

「……撃つのが上手いとか、そういう話じゃないわね」

 

角乃の声は低い。

撃つたびに状況が変わっていく。旭の弾は敵を倒すためじゃなく、盤面を作り替えるために飛んでいる。

 

荒巻が舌打ちする。

「ちっ、綺麗に片づけやがって」

 

その瞬間、三人が自然に並んだ。

中央に角乃。左右に旭と荒巻。肩幅の距離で、視線の高さが揃う。

警察だった頃の空気が一瞬だけ戻ってきて、すぐ戦場の熱に溶けた。

 

角乃が短く息を吐く。

「……よし。ここで止まった。今なら、通せる」

 

旭が頷く。

「はい。次、指示ください」

 

荒巻が剣を構え直す。

「いいねぇ。じゃあ、ぶち抜くぞ」

 

荒巻が切り開いた斜面の“穴”は、すぐ黒で埋まりかけた。モノスの軍勢が、崩れても崩れても押し上がってくる。湿った靄が足元へ絡み、息を吸うたび喉が重くなる。角乃は一歩引き、旭の肩越しに前列の密度を測った。

 

「旭、今のままだと呑まれる。上を――」

 

言い切る前に、旭が小さく頷く。VSチェンジャーを握る手が、震えを止めるように一度だけ締まった。テガソードオリジンの光が、遠くの戦線から細い糸みたいに伸びてくる。触れた瞬間、旭の全身を赤い光が包んだ。

 

「うわ……」

 

声が漏れたのは、驚きのほうだった。装甲が“厚く”なる。肩が張り、背中に重みが乗る。サイレンの輪郭が上半身へ噛み合い、両肩の砲台が起き上がった。赤い光がすっと引くと、スーパーパトレン1号がそこに立っていた。

 

「先輩。いけます」

 

「……言ったわね」

 

角乃が前へ出る。旭の肩の横、ハンドル型のトリガーへ手を伸ばす。荒巻も同時に踏み込み、反対側を乱暴に掴んだ。指が食い込み、金属がきしむ。

 

「てめぇ、撃つなら一発で終わらせろ」

 

「言われなくても」

 

モノスが雪崩れ込む。前列の影が、三人の間合いを喰いに来る。角乃は視線だけで“中心”を決めた。密度が一番濃い塊。そこを吹き飛ばせば、流れが裂ける。

 

「これで、終わりよ!」

 

声と同時に、角乃と荒巻の指が一斉にトリガーを引いた。肩の砲台が震え、空気が張り詰める。次の瞬間、四つのエネルギー弾が放たれた。飛び出した光は、途中で形を結ぶ。角乃の胸元の意匠に引かれるように、一本角の輪郭――ユニコーンの姿へ変わり、夜を駆けた。

 

轟音。衝撃。

斜面の黒が、まとめて“剥がれる”。前列が押しつぶされる前に浮き、後列を巻き込み、モノスの群れが空へ散った。靄が裂け、足場が見える。土煙の向こうで、残った影がよろめき、陣形が一度崩壊した。

 

旭が肩で息をしている。赤い光の残滓が装甲の縁に薄く揺れた。角乃はトリガーから手を離し、すぐに前を睨む。倒し切った感触より、道が開いた手応えのほうが強い。

 

「……よし。ここは抜ける」

 

荒巻がソードを肩に担ぎ直し、舌打ちをひとつ落とす。

 

「次、どこだ。角乃」

 

角乃が答えかけた、そのとき。遠くで別の爆発が起き、空が一瞬だけ白く染まった。吠の咆哮とも、響の叫びとも違う声が混ざる。ユニバース戦士が増えている。戦線が、別の場所でも同時に動いている。

 

角乃は一拍だけ目を閉じ、緒乙の名を喉の奥で押し込んだ。今は、視野を狭めるな。

 

「行くわよ。――同じ時刻、他も持ちこたえてる。こっちが崩した分、向こうが攻めに出る」

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