ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
モリスの軍勢は、他の厄災の兵よりも静かだった。
静かなまま、数だけが増える。灰色の影が斜面を埋め、足音もなく距離を詰めてくる。囲まれているのに、音が薄い。その不気味さが、かえって息を詰まらせた。
マリアは一歩も引かない。
短剣を返す。刃が蛇腹のようにほどけ、節ごとに軌道を変えながら、前後左右へ斬線を走らせた。正面の首を裂き、横の腕を断ち、その背後の膝を払う。斬った。だが、足りない。崩れた影の隙間を、次のモリスが埋める。灰が舞い、乾いた匂いが喉に残る。
「まだ……来るの」
吐き出した声に、疲れは混ざっても、折れる音はない。
そのとき、遠くの戦線から伸びた光が、夜の空気をまっすぐ貫いた。白く、強い。テガソードオリジンの輝きだった。人々の願いを束ねて生まれた神の光が、戦場じゅうへ染み込むように広がっていく。
赤い閃きが、その光を正面から受けた。
ヒロミの装甲が軋み、輪郭が膨らむ。肩口から胸へ、より鋭く、より厚い強化装甲が噛み合い、赤い光が一段濃く燃え上がる。レッドバスター・パワードカスタム。踏み込みと同時に、目で追うより先にモリスの列が裂けた。
「下がらないで。今、一気に押し返す!」
ヒロミの声は鋭い。
銃撃が三発。最前列の間合いを崩し、続けて刃が走る。最短距離だけを選び抜いた赤い軌跡が、灰色の群れに一本の道を刻んだ。
その光の余波が、今度はマリアへ触れる。
空気が震える。歌わずとも、周囲の願いそのものがフォニックゲインに変わっていく。押し潰されそうだった戦場の熱、誰かを守りたい祈り、立ち上がれという声――それらが、マリアのギアへ流れ込んだ。
白銀の輝きが、装甲を包む。
刃が鳴る。背に光が生まれ、身体がふっと軽くなる。エクスドライブ。視界が一段高く開けた。
「……そう。ここまで、届くのね」
マリアが宙へ半歩だけ浮く。
蛇腹の刃が空中で大きく弧を描き、上から、横から、斜めから、同時に落ちる。平面だった斬撃が、立体へ変わる。モリスの軍勢がまとめて裂け、地に縫い止められる。
ヒロミがその下を駆け抜けた。
マリアが切り開いた“面”の中を、赤い点のような速度で突き進む。銃で一体の足を止め、剣で二体を断ち、振り向かずに次の列へ滑り込む。上はマリア、下はヒロミ。逃げ場が消える。
「合わせるわよ!」
「ええ――ここで、全部!」
マリアの蛇腹刃が収束し、一本の鋭い線へ変わる。
ヒロミの両手が、赤い装甲のまま前へ突き出される。二人の間で、光が噛み合った。白銀と赤。交差した出力が捻じれ、ひとつの奔流になる。
次の瞬間、放たれた必殺は、槍のようであり、獣のようでもあった。
赤い速度を芯に、白い斬撃の尾を引き、真正面のモリスの軍勢へ突っ込む。直撃。遅れて、衝撃が斜面を走った。灰色の群れがまとめて吹き飛び、連鎖するように崩れる。前列、後列、そのまた後ろ。押し寄せていた静かな死の波が、一気に逆流した。
灰が、雪みたいに舞う。
さっきまで詰まっていた空気が、ようやく抜ける。
マリアは着地し、刃を戻した。
ヒロミは肩で一つ息をして、それでも銃口を下ろさない。二人の前には、もう“壁”と呼べるほどの軍勢は残っていなかった。
「……やるじゃない」
「そっちこそ。まだ、次があるんでしょ」
短い言葉だけ。
それで十分だった。戦場はまだ終わらない。けれど、この一角だけは、たしかに取り返した。