ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
灰色のモリスは、押し寄せるたびに形を増やした。
斜面に倒れた岩の影から、砕けた柵の向こうから、息を潜めていたものまで起き上がる。猛原禽次郎――ゴジュウイーグルは空へ跳び、引き絞ったイーグルシューター50を連続で放った。一本、二本、三本。肩、喉、膝。狙いは外さない。だが、倒れた列の隙間を、次の列がすぐに埋めていく。
「……まったく、しぶといのう」
足場へ着地する。膝が沈む。砂利が靴裏で鳴る。
その横で、時音――タイムレッドが二振りの刃を返した。刃先の向こう、崩れた木箱の時間が巻き戻る。割れた板が元へ戻り、積み直された箱が、突っ込んできたモリスの進路を遮った。ぶつかった影がよろめく。その一拍を、禽次郎の矢が抜く。
「右、二列目。今、流れが止まったわ」
「見えておる」
短い返事。
それ以上は言わない。言えない、ではない。言葉を足せば、戦場の外へ心が引かれる。目の前にいる時音が、過去から来た奇跡だとしても、いま口にすべきは未来ではない。禽次郎は弦を引き、視線だけで群れの奥を測った。
時音が前へ出る。
足場に転がる鉄柱へ指先を向ける。落ちかけた時間を遅らせたのか、鉄柱は斜面の途中でわずかに浮いたまま止まる。モリスの前列がそこへ脚を取られ、重なり、もつれた。そこへ時音の斬撃。長針と短針めいた二つの刃が、ずれた時間差で同じ一点を裂く。接触音。遅れて、灰色の破片が噴いた。
「まだ足りないわね」
「なら、まとめて落とすかのう」
禽次郎が半歩下がる。引き足で間合いを作る。
肩で呼吸をひとつ整え、イーグルシューター50を構え直した。視線の先、モリスの群れは密度を増し、ひと塊になって迫ってくる。時音も同時に身を沈め、ボルブラスターを持ち上げる。重い砲身が、夜気を押しのけるように前へ出た。
「道、作るわよ」
時音の声と同時に、砕けた標識の支柱が元の形へ戻る。
斜めに起き上がった鉄の柱が、モリスの流れを左右へ割った。中央だけが、細い一直線に詰まる。狭い。だが、十分だ。禽次郎の目には、その一筋がはっきり見えた。
「そこじゃ」
弦が鳴る。
矢が飛ぶ。空気を裂いた一条が、群れの中心へ突き刺さる。先頭の胸を抜き、そのまま後ろの二体、三体を貫いて、灰の列に縦の穴を開けた。
時音が、その穴へ砲口を合わせる。
肩が揺れる。腕が軋む。だが、照準はぶれない。
「合わせなさい、譲二!」
その呼び方に、禽次郎の口元がわずかに緩んだ。
返事はしない。ただ、もう一本を番え、同じ射線へ重ねる。
「――いくわよ!」
ボルブラスターが吼えた。
砲口の先で光が膨らみ、次の瞬間、太い一撃が一直線に走る。禽次郎の矢が開けた穴を、時音の砲撃がまっすぐ穿つ。接触。遅れて、腹に響く爆音。灰色の群れが内側から持ち上がり、前列も後列もまとめて吹き飛んだ。衝撃が斜面を走り、砂煙が一気に巻き上がる。
そこへ、二本目の矢。
煙を裂いて飛び込み、崩れかけた中核を正確に射抜く。残っていたモリスの塊が、そこで一気に瓦解した。立っていた影が、膝から崩れ、連鎖するように灰へ変わる。
静かになる。
さっきまで斜面を埋めていた灰色の波が、ようやく止まった。
時音はボルブラスターを下ろし、浅く息を吐く。
禽次郎も弦から指を離し、わずかに肩の力を抜いた。二人の間に落ちるのは、昔話ではない。勝ち取った今の静けさだけだった。
「……助かったよ、時音」
「礼はあと。まだ終わってないでしょ」
あっさりとした返事。
その声音が、妙に昔のままで、禽次郎はほんの少しだけ目を細める。けれど、未来のことは語らない。ここで口にすれば、今この一瞬がほどけてしまいそうだった。