ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦   作:ボルメテウスさん

305 / 346
時を超えた夫婦の力

灰色のモリスは、押し寄せるたびに形を増やした。

斜面に倒れた岩の影から、砕けた柵の向こうから、息を潜めていたものまで起き上がる。猛原禽次郎――ゴジュウイーグルは空へ跳び、引き絞ったイーグルシューター50を連続で放った。一本、二本、三本。肩、喉、膝。狙いは外さない。だが、倒れた列の隙間を、次の列がすぐに埋めていく。

 

「……まったく、しぶといのう」

 

足場へ着地する。膝が沈む。砂利が靴裏で鳴る。

その横で、時音――タイムレッドが二振りの刃を返した。刃先の向こう、崩れた木箱の時間が巻き戻る。割れた板が元へ戻り、積み直された箱が、突っ込んできたモリスの進路を遮った。ぶつかった影がよろめく。その一拍を、禽次郎の矢が抜く。

 

「右、二列目。今、流れが止まったわ」

 

「見えておる」

 

短い返事。

それ以上は言わない。言えない、ではない。言葉を足せば、戦場の外へ心が引かれる。目の前にいる時音が、過去から来た奇跡だとしても、いま口にすべきは未来ではない。禽次郎は弦を引き、視線だけで群れの奥を測った。

 

時音が前へ出る。

足場に転がる鉄柱へ指先を向ける。落ちかけた時間を遅らせたのか、鉄柱は斜面の途中でわずかに浮いたまま止まる。モリスの前列がそこへ脚を取られ、重なり、もつれた。そこへ時音の斬撃。長針と短針めいた二つの刃が、ずれた時間差で同じ一点を裂く。接触音。遅れて、灰色の破片が噴いた。

 

「まだ足りないわね」

 

「なら、まとめて落とすかのう」

 

禽次郎が半歩下がる。引き足で間合いを作る。

肩で呼吸をひとつ整え、イーグルシューター50を構え直した。視線の先、モリスの群れは密度を増し、ひと塊になって迫ってくる。時音も同時に身を沈め、ボルブラスターを持ち上げる。重い砲身が、夜気を押しのけるように前へ出た。

 

「道、作るわよ」

 

時音の声と同時に、砕けた標識の支柱が元の形へ戻る。

斜めに起き上がった鉄の柱が、モリスの流れを左右へ割った。中央だけが、細い一直線に詰まる。狭い。だが、十分だ。禽次郎の目には、その一筋がはっきり見えた。

 

「そこじゃ」

 

弦が鳴る。

矢が飛ぶ。空気を裂いた一条が、群れの中心へ突き刺さる。先頭の胸を抜き、そのまま後ろの二体、三体を貫いて、灰の列に縦の穴を開けた。

 

時音が、その穴へ砲口を合わせる。

肩が揺れる。腕が軋む。だが、照準はぶれない。

 

「合わせなさい、譲二!」

 

その呼び方に、禽次郎の口元がわずかに緩んだ。

返事はしない。ただ、もう一本を番え、同じ射線へ重ねる。

 

「――いくわよ!」

 

ボルブラスターが吼えた。

砲口の先で光が膨らみ、次の瞬間、太い一撃が一直線に走る。禽次郎の矢が開けた穴を、時音の砲撃がまっすぐ穿つ。接触。遅れて、腹に響く爆音。灰色の群れが内側から持ち上がり、前列も後列もまとめて吹き飛んだ。衝撃が斜面を走り、砂煙が一気に巻き上がる。

 

そこへ、二本目の矢。

煙を裂いて飛び込み、崩れかけた中核を正確に射抜く。残っていたモリスの塊が、そこで一気に瓦解した。立っていた影が、膝から崩れ、連鎖するように灰へ変わる。

 

静かになる。

さっきまで斜面を埋めていた灰色の波が、ようやく止まった。

 

時音はボルブラスターを下ろし、浅く息を吐く。

禽次郎も弦から指を離し、わずかに肩の力を抜いた。二人の間に落ちるのは、昔話ではない。勝ち取った今の静けさだけだった。

 

「……助かったよ、時音」

 

「礼はあと。まだ終わってないでしょ」

 

あっさりとした返事。

その声音が、妙に昔のままで、禽次郎はほんの少しだけ目を細める。けれど、未来のことは語らない。ここで口にすれば、今この一瞬がほどけてしまいそうだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。