ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
粉塵の匂いが喉に貼りつく。
採掘場の斜面を埋めるように、モリスが波になって押し寄せていた。静かなくせに、密度だけが重い。撃っても撃っても、穴が「穴のまま」にならない。崩れた影の上に、次の影が当然みたいに立つ。
クリスは間合いを取る。
踵を半歩引き、膝を落とし、肩を沈める。視線の高さを変えずに銃口を上げる。アームドギアの武装が切り替わり、金属の噛み合う感触が掌へ戻ってくる。狙うのは胸でも頭でもない。列の継ぎ目。足元。押しの起点。
引き金を絞る。接触の乾いた音が遅れて返り、衝撃で前列が浮く。浮いた隙間へ、二列目が詰まる。その詰まりを狙ってもう一発。倒れた影を踏み台にできないよう、膝を落とす位置へ撃ち込む。砂利が跳ね、粉塵が薄く舞う。
「こいつらっ撃っても撃っても減る気配なしかよ」
口に出した瞬間、苛立ちが呼吸に混ざる。吸うたび乾く。吐くたび熱い。
武装を畳み、別の遠距離へ。
構え直す。重心を前へ送る。撃つ。反動で肩が引かれ、すぐ戻す。
面で削っても、面が寄る。線で裂いても、線が塞がる。弾薬の減りだけが現実で、敵の減りが幻みたいだ。
「ちっ!」
舌打ちが粉塵に落ちる。
視界の端で、別方向の斜面がうごめいた。ここだけじゃない。他の戦線にも同じ波が来ている。想像した瞬間、背中の汗が冷えた。
「他の奴らの所にもいるってのにっ」
遠距離の優位が、少しずつ削られる。
モリスが散らばらず、固まりながら詰めてくる。撃つ角度が狭まる。射線が埋まる。足場が後ろへ追い立てる。もう半歩下がれば岩壁。逃げ道の形が、目で見える。
その時、灰色の影が“近い距離”で跳んだ。
銃口を振るより早い。爪が伸びる。
引き金に指が残ったまま、腕が固まる。
「しまっ」
熱が斜めに割り込んだ。
炎が走り、灰色の列が横から薙がれる。接触の前に空気が押し潰れ、次いで爆ぜる音。衝撃が腹の底へ落ち、モリスがまとめて吹き飛んだ。粉塵が赤く染まり、夜の冷たさが一瞬だけ遠のく。
「炎のたてがみ!」
火の尾が揺らめく向こう、赤い装甲が斜面に立っていた。
ギンガレッド。鷹山莉央。足元の土が、妙に落ち着いて見える。守るための熱が、地面まで撫でているみたいだった。
「この炎に技っ、お前、鷹山か」
「うん、久し振りです」
息が詰まりかけるのを、クリスは舌の奥で噛み潰す。嬉しい、なんて言葉は似合わない。代わりに、銃口をモリスへ戻す。嬉しさは照準に混ぜる。そういう手癖だ。
「・・・けど、ここにどうやってって」
鷹山の視線が斜面の奥へ刺さる。そこにいる敵だけじゃない、もっと先を見ている。
「森が大変になってたから。何よりも」
言葉が落ちる。炎が掌にまとわりつく。
「こいつらを放っておいたら、自然が全部無くなっちゃうから」
自然。人間。守るものの名札は違う。
でも、守れないまま奪われるのは同じだ。銃身の冷たさが、その答えを押し付けてくる。
「そうか、だったら、力を貸してくれよ」
「勿論」
クリスは引き金に指を戻し、遠距離の構えを深くする。
炎が道を拓くなら、弾はその道を縫う。逆転の兆しはまだ細い。それでも、細い光があるだけで、足は止まらない。