ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
「ぐっ」
苦痛に満ちた呻きと共に、百夜陸王の身体は大きく宙を舞い、そのまま砕けた岩肌へ叩きつけられた。
背中から落ちた衝撃が肺の奥まで貫き、息を吸うより先に喉の奥で空気が潰れる。
砂利と粉塵が肩口へ降りかかり、握ったままのレオンバスター50が、かろうじて手の中へ残っていた。
視界が揺れる。
それでも、銃口だけは眼前の敵から逸らさない。
陸王は膝を滑らせながら上体を起こし、焼けるように痛む腕を押し切って、青いエネルギー弾を真正面へ撃ち放った。
迸った光は一直線に空気を裂き、爆ぜる寸前の鋭さで敵の胸元へ突き刺さる――はずだった。
だが、その敵は避けない。
正面から受け止める。
青い光が掌の前で押し潰され、火花のような破片を撒き散らしながら、霧散するように消えていった。
「ふんっ、指輪の戦士など所詮この程度」
その声には余裕があった。
余裕というより、値踏みの終わった獣が、目の前の獲物をもう脅威とすら見なしていない、そんな冷えた響きがあった。
陸王の前に立つのは、クラディスの幹部の一人、ベルルム。
濁った威圧を纏ったその姿は、ただそこにいるだけで空気の温度を下げ、足元の砂まで重く変えてしまうようだった。
陸王は奥歯を噛み締めた。
胸の奥で、怒りと焦りが同時にせり上がる。
負けられない。
いや、それだけでは足りない。
こいつだけは、自分が倒さなければいけない。
誰かの代わりではなく、自分自身の手で終わらせなければいけない相手が、この目の前に立っている。
「お前は、僕が倒す! 倒さないといけない!」
叫びと共に、陸王は地面を蹴った。
踏み込みは鋭い。
砕けた足場を半歩で越え、砂利を蹴散らし、レオンバスター50を握り直した腕を前へ突き出す。
遠距離では押し切れない。
ならば距離を殺す。
呼吸が乱れても、視界が熱で滲んでも、ここで止まるわけにはいかなかった。
「ふんっ、お前に果たして何が出来るのやら!」
ベルルムの掌が持ち上がる。
次の瞬間、紫がかったエネルギー弾が連続して放たれ、まるで壁のような密度で陸王の進路を塞いだ。
陸王は咄嗟に身を捻る。
一発を避け、二発目をレオンバスター50の側面で弾き、三発目の余波を肩で受け流す。
だが、四発目が腹を掠め、五発目が足元を抉り、六発目が眼前で炸裂する。
衝撃で身体が浮き、着地の形が崩れる。
踏み込むはずの一歩が、逆に後ろへ押し戻された。
攻める隙が生まれない。
前へ出るたび、同じだけ押し返される。
怒りが熱になるより早く、その熱を叩き潰される。
「ぐっ」
短く漏れた声は、さっきよりも低い。
苦痛だけじゃない。
悔しさが、喉の奥にざらついて残っていた。
ベルルムはゆっくりと歩を進める。
急ぐ必要がないとでも言いたげな足取りだった。
勝負は決したと判断した者だけが持つ、あの嫌に静かな間の詰め方。
「さて、ここで終わりだ」
その呟きが落ちた瞬間だった。
赤いエネルギー弾が、横合いから一直線に飛び込んだ。
空気を焼くような熱が走り、ベルルムの脇を掠めた一撃が、遅れて爆ぜる。
火花が散る。
紫の圧が一瞬だけ揺らぎ、ベルルムの視線が初めて陸王から外れた。
「させない」
その声を聞いた瞬間、陸王の胸が強く打った。
聞き間違えるはずがない。
過去に何度も背中越しに聞いた声だった。
厳しくて、けれど決して見捨てない響きを持った声。
ベルルムが顔を上げる。
「なっ、お前は」
赤い炎を纏うようにして、戦場へ踏み込んできたのはウルザードファイヤー。
立ち姿だけで分かった。
剣先の角度。
肩の開き方。
前へ出る時に、ほんのわずかだけ重心を沈める癖。
姿が変わっても、間違えようのないものがある。
陸王は息を呑み、その名を確かめるみたいに口にした。
「もしかして、玲さんっ」
兄のような人だった。
守ってくれて、叱ってくれて、道を示してくれた人だった。
そして、かつてベルルムと一体化していた、その当人でもある。
失ったと思っていた背中が、今、自分の前に立っている。
それは奇跡というには生々しく、現実というには熱すぎる光景だった。
陸王の指先が震える。
だがその震えは、さっきまでの敗色の混じったものではない。
胸の奥に、消えかけていた火がもう一度灯る。
まだ終わっていない。
終わらせない。
そう思えたのは、あの赤い背中が、再び自分の前に立ってくれたからだった。