ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
ベルルムが銃口を持ち上げた瞬間、採掘場の空気が、見えない板でも差し込まれたみたいに硬く張った。
砕けた岩肌の上を這う粉塵がぴたりと沈み、紫の光だけが砲身の奥で脈を打つ。
次の瞬間には、それが一直線の殺意となって吐き出された。
だが、その射線の正面へ、玲が一歩、迷いなく踏み込む。
盾を立てる。
重心を落とす。
左足を半歩だけ前へ置き、衝撃を受け流す角度を作ってから、真正面で紫の一撃を受け止めた。
接触の瞬間、甲高い破裂音が響き、盾の表面に火花が散る。
衝撃は重い。
重いが、玲は退かない。
押される力を、踏み込みで殺す。
盾越しに腕が軋み、肘の関節が悲鳴を上げても、そこからさらに半歩だけ前へ滑る。
防ぐために止まるのではなく、防ぎながら距離を奪う。
その戦い方が、ベルルムの表情をわずかに曇らせた。
「玲さん、正面は任せて!」
陸王は、その背中を見ていた。
見て、ただ立っていたわけではない。
玲がどこまで詰めるか。
ベルルムがその接近を嫌って、どちらへ銃口をずらすか。
盾を構えた玲の右肩が少し沈んだ時、次に撃つべき角度まで、頭の中ではもう決まっている。
レオンバスター50を握る右手へ力を込める。
指先が汗で滑りそうになるのを、掌ごと締め直して抑え込む。
玲の一歩目に合わせて、陸王は左の脇腹を狙う。
撃つ。
青い弾丸が、ベルルムの身体そのものではなく、その視線を引く位置へ突き刺さる。
ベルルムが反射で盾をずらす。
その瞬間、玲は真正面からではなく、盾の陰に隠れるようにしてもう一歩前へ出る。
「いいよ、そのまま詰めて!」
陸王は次を撃つ。
今度は膝下。
足場の悪い採掘場では、半拍の踏み損ねが命取りになる。
弾丸が足元の岩を砕き、飛び散った破片がベルルムの重心をわずかに揺らした。
玲の盾へ飛んでいたはずの三発目が、その揺れで上へ流れる。
玲は受ける。
受けたまま、前へ進む。
陸王はそこでようやく、玲が何をしているのかを改めて理解した。
ただ守っているんじゃない。
自分の射線を信じて、相手の狙いを削りながら詰めている。
だから、撃てる。
だから、自分も止まれない。
ベルルムが苛立ちを滲ませ、連射に切り替える。
紫の弾丸が壁みたいな密度で吐き出される。
一発を玲が盾で弾く。
二発目を受け流す。
三発目が盾の縁を削り、四発目が装甲を掠める。
それでも玲は足を止めない。
受けるたびに半歩。
削られるたびに半歩。
じわじわと、確実に、ベルルムとの距離が詰まっていく。
「まだ行けるか、玲さん!」
「当然だ、止まる理由がない!」
その動きに呼吸を合わせるように、陸王の射撃も変わった。
最初は引きつけるため。
次は崩すため。
そして今は、玲の道を一歩ぶんずつ開けるため。
「玲さん、右!」
声と同時に、レオンバスター50の銃口が跳ねる。
青い一弾が、ベルルムの肩口のすぐ脇を抜ける。
ベルルムの意識が、ほんの一瞬だけそちらへ向いた。
玲が、その一瞬へ身体を滑り込ませる。
盾の縁で弾道を受け流しながら、斜め前へ。
正面突破ではない。
射線の薄くなった右前へ抜ける、最短の接近。
ベルルムが舌打ち混じりに銃口を戻す。
その動きの途中を、陸王は逃さなかった。
ここだ、と思った時には、もう撃っていた。
狙うのは本体ではない。
ベルルムの手にある銃、その根元。
握りと砲身の継ぎ目。
最も衝撃が伝わり、最も持ち直しにくい一点。
弾丸が命中する。
接触の瞬間、金属が悲鳴を上げるような高い音が鳴り、紫の火花が散った。
ベルルムの手首が跳ねる。
銃が宙を舞う。
視界の端で、それがくるくると回りながら飛んでいくのを、陸王は確かに見た。
「今だ!」
その一拍を、玲は待っていたかのように踏み込む。
もう盾で防ぐ必要はない。
今度は剣だ。
腰を落とし、肩を開き、刃を引く。
ベルルムは咄嗟に盾を前へ出す。
まだ片方は残っている。
ならば、その守りごと砕く。
玲の剣が、真っ向から叩きつけられる。
だが、力任せではない。
接触の寸前で刃の角度が変わる。
面を打つのではなく、盾の重なり、継ぎ目、力の逃げる線を正確に裂く。
硬い音が一度。
次いで、破断の鋭い音。
ベルルムの盾が、腕ごと後ろへ大きく弾かれた。
「守りは崩したよ、陸王!」
守りが空く。
胸元が、完全に晒される。
玲が叫ぶでもなく、低く息を吐く。
陸王もまた、同じ瞬間にテガソードを握り直した。
ここまでは、二人で道を作るための連携だった。
ここからは、二人で終わらせるための連携だ。
玲が右へ回る。
陸王が左へ回る。
互いの位置を確認するような視線は、もう交わさない。
必要がないからだ。
呼吸が分かる。
踏み込みの癖が分かる。
今なら重なる、その確信だけで十分だった。
「玲さん!」
「行くよ、陸王!」
ベルルムが後ろへ飛ぼうとする。
遅い。
玲の剣が右上から走る。
陸王のテガソードが左下から走る。
交差する二本の斬撃が、夜の空気へ鋭いXを刻む。
『レオンフィンガーフィニッシュ』
テガソードの音声が、決着の宣告みたいに戦場へ響いた。
接触の感触は、むしろ軽い。
斬った手応えよりも先に、交差した軌道の中心で、ベルルムの輪郭が大きく揺らぐ。
次の瞬間、X字の傷口から紫の光が噴き上がり、その巨体は内側から崩れ始めた。
爆ぜる。
裂ける。
砕ける。
衝撃が斜面を走り、粉塵が高く巻き上がり、宙へ浮いた鉄片が遅れてぱらぱらと降ってくる。
陸王は反動で一歩だけ後ろへ流れたが、すぐに踏みとどまる。
玲も剣を引き戻し、崩れる光景を静かに見届ける。
ベルルムが完全に爆散し、採掘場を満たしていた重圧がようやく抜けた時、陸王はようやく自分がずっと息を詰めていたことに気づいた。
隣には、玲がいる。
今度は背中ではなく、同じ前を向く位置に。
その事実が、さっきまでの戦いの全部を、ようやく一つの形へ結んでくれた気がした。