ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
風鳴翼と刃白和輝は、砕けた採掘場の斜面を背中合わせで踏み締め、互いの体温と呼吸の間隔だけを頼りに、押し寄せるモリスの軍勢へ刃を向けていた。
前から来るものは翼が断ち、横へ滑るものは和輝が刈り、死角へ潜ろうとした影だけを、二人の引き足と返す刀が寸分のずれもなく噛み砕いていく。
翼の剣は細く鋭く、乱れた流れの芯を一息で見抜いて切断し、和輝の刀は若々しい勢いを帯びながらも決して粗くはなく、守るために迷いなく伸びるまっすぐな軌道で群れの厚みを削っていった。
前列を崩しても、後列がその上を踏み越え、左右を裂いても、別の列が埋め直す。
それでも二人の剣は慌てなかった。
数に押されるからこそ、間合いを曖昧にせず、踏み込みの角度を崩さず、切るべき線だけを選び抜く、その静かな矜持が一太刀ごとに戦場へ刻まれていく。
翼は背後から伝わる和輝の足運びに、禽次郎の道場で磨かれた型の気配を確かに感じていた。
無駄に深くは入らず、しかし半歩も怯まず、相手の勢いを受ける前に斬って流すあの剣筋は、若さの熱を隠せていないのに、不思議なほど誠実だった。
若いが、剣がまっすぐだ。
その印象は、先ほどよりもさらに強く、戦うたびに確信へ近づいていく。
和輝のほうもまた、背中越しに伝わる翼の気配から、完成された剣士だけが持つ静けさを感じ取っていた。
押し寄せる殺意のただ中にあっても、天羽々斬の軌道には一点の濁りもなく、焦りも怒りもすべて刀の外へ置いてきたような潔さがある。
自分も、こうありたい。
その思いが胸の奥で熱を持つたび、和輝の踏み込みはさらに迷いを失っていった。
モリスの群れが一段深く沈み込み、今度は上下に高さを変えながら、二人の背中合わせを引き剥がすように波打って襲いかかってくる。
翼は右から迫る爪を斜めに流し、その反動を殺す前に返す刃で二体目の喉元を裂き、さらにその身を沈めることで、頭上から飛び込む三体目の影を天羽々斬で真っ二つに断った。
和輝はその隙に左側へ回り込んだモリスへ切っ先を滑らせ、真正面から力比べをするのではなく、関節と重心の継ぎ目だけを正確に断って、押し寄せる群れそのものを崩していく。
二人の剣は違う。
違うのに、今は同じ方向を向いている。
だからこそ、包囲は狭まりながらも最後の一線を越えられず、灰色の軍勢はあと一歩を届かせるたびに、斬線の中へ首を差し出していた。
その時だった。
崩れた採掘場の上空から、白く澄んだ光が、夜の暗がりを裂いてまっすぐに降りてくる。
その輝きはどちらか一方を選ぶことなく、翼と和輝の肩口へ、まるで二本の剣筋をなぞるように、完全に同時に触れた。
光は熱ではないのに、血が一気に巡るような感覚を残し、二人の装いを瞬く間に変えていく。
和輝のシンケンレッドは、白と金を帯びた重厚な強化へ変わり、纏う気配そのものが一段高い密度へ圧縮されていく。
ハイパーシンケンレッド。
その手の中へ現れたキョウリュウマルは、ただ大きいだけではなく、振るう者の覚悟を映すように鋭い輪郭を持ち、抜き身のまま戦場の光を吸い込んでいた。
同時に、翼の全身にも眩い光が走り、エクスドライブへ至った装いが、剣士としての気迫を神々しいまでに研ぎ澄ませていく。
天羽々斬はその手の中で脈打つように光を強め、やがて巨大化した刀身が夜空へ白く伸び、採掘場を見下ろす月光さえ細く押しのけた。
モリスの軍勢が一瞬だけ動きを止める。
その静止は、恐怖と理解不能が同時に押し寄せた時だけ生まれる、極めて短い空白だった。
翼は何も言わない。
和輝もまた、言葉を探さない。
互いの背中から伝わる呼吸の深さと、足元へ落ちる重心のわずかな変化だけで、もう十分に通じていた。
どの高さで振るうか。
どの角度で断つか。
どの瞬間に、一緒に踏み込むか。
全部が、無言のまま揃っていく。
次の瞬間、二人は同時に前へ出た。
翼は巨大化した天羽々斬を大上段から振りかぶり、背筋から腰、腰から脚へと力を一本の流れに束ねながら、目の前の軍勢を一息で割るための軌道を作る。
和輝はキョウリュウマルを斜めに引き、体を沈め、地を噛むような踏み込みから、上へ駆け上がるような斬撃のために全身を解き放つ。
二人の刃が動く。
巨大な白の直線と、烈しい赤の斜線が、まるで別々の星が同じ夜空へ落ちるように、寸分のずれもなく眼前の軍勢へ突き刺さった。
接触した瞬間、採掘場の空気は重く鳴り、粉塵が一斉に跳ね上がり、斬られたモリスの群れは抵抗する暇すらなく、一刀両断の線に沿って真っ二つへ裂けていく。
断ち切られたのは前列だけではない。
後ろへ詰まっていた列も、そのさらに奥で新たに迫ろうとしていた群れも、二人の斬撃が生んだ巨大な断層へ巻き込まれ、採掘場の斜面を左右へ押し分けるように崩れ落ちた。
白と赤の光が交差した中心だけがしばらく遅れて残り、そこから吹き上がった衝撃波が、積もった灰と鉄片を高く舞い上げ、戦場の輪郭そのものを塗り替えていく。
斬り終えた後も、二人はすぐには振り返らなかった。
翼は振り抜いた巨大な刀を静かに収めながら、背中越しに伝わる和輝の息の長さに、確かな信頼の手触りを見いだしていた。
和輝もまた、押し寄せる数を前にしてなお揺らがなかった翼の剣を、今は遠い高みではなく、並び立つ剣として受け止めている。
同じ剣を持つ者として、ようやく隣に立てたのだと、口にしなくとも分かった。
崩れた軍勢の向こう側には、まだ終わりきらない不穏な気配が残っている。
それでも、この一刀で世界の形は変わった。
翼は巨大化を終えて元の姿へ戻りつつある天羽々斬を握り直し、和輝もまたキョウリュウマルを下ろしながら、無言のまま次の敵意へ目を向ける。