ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
採掘場の斜面を覆う灰色の靄は、煙というより病そのものが形を持って滲み出しているみたいだった。
疫病のペスティスが腕を払うたび、空気の色が濁り、砕けた地面の上を這うようにして、腐った熱が戦場の端まで広がっていく。
その熱に触れた場所から、身体の奥を掴まれるような鈍さが生まれ、立っているだけで骨の芯へ疲労が沈んでいった。
ファイヤキャンドルは膝をつきかけた身体を無理やり起こし、焼ける肺へ空気を叩き込みながら、歯を剥くように前を睨む。
その隣ではブーケが息を乱し、さらに少し離れた場所ではMr.シャイニングナイフとMrs.スイートケークが、二人で一つのように身を寄せながらも、辛うじて立っていた。
ペスティスの斬撃は鋭くない。
鋭いのではなく、まとわりついて削る。
掠めただけで力を奪い、息を吸うだけで立ち上がる意志まで鈍らせる、そういう嫌らしい強さだった。
「どうした、もう膝をつくのか」
ペスティスの声は低く、嘲るというより、相手が折れていく様子を観察しているような冷たさを帯びていた。
「貴様らのような火遊びの残り滓では、私には届かん」
ファイヤキャンドルは肩を震わせ、地面へ落ちた自分の影を踏み潰すように足へ力を込める。
届かない。
そんなことは分かっている。
今この場での力比べだけなら、圧倒されている現実は否定できない。
それでも、ここで伏せることだけは、どうしても選べなかった。
吠の顔が浮かぶ。
あの目障りなほどまっすぐなライバルの顔が、こういう時に限って胸の奥へ残る。
ブーケもまた、苦しげに息をつきながら、それでも視線だけは落とさなかった。
陸王を想う時の自分は、滑稽なくらい一直線だと知っている。
だが、その一直線さに救われたことも、また否定できなかった。
Mr.シャイニングナイフは、口元に滲んだ血を拭いながら、それでも舞台に立つ役者みたいに背筋を伸ばす。
Mrs.スイートケークもまた、その隣で静かに立ち、終幕だけは自分で決めるという顔をしていた。
それぞれ理由は違う。
違うのに、退けない理由だけは同じ場所へ繋がっている。
ゴジュウジャー。
あの連中のために、ここで潰れるわけにはいかない。
ペスティスが剣を持ち上げる。
黒く濁った刃の軌道に、空気そのものが巻き込まれ、今度こそ終わらせるための一撃が形を取り始める。
斬られれば終わる。
そう分かるほどの圧が、四人の前へ重く垂れ込めた。
その時だった。
「お兄ちゃん復活〜!」
場違いなほど軽い声が、戦場のど真ん中へ跳ねた。
一瞬だけ、全員の動きが止まる。
ペスティスの刃さえ、ほんのわずかに軌道を迷った。
灰色の靄の向こうで、ガリューデカリバー50の姿が揺らぎ、その輪郭が崩れるようにして人の形へ戻っていく。
クオンだった。
ついさっきまで武器の姿で転がっていたはずの男が、何でもないような顔で両手を広げ、いつもの調子で笑っている。
呆気に取られる、という表現がこれほど似合う時間もない。
ファイヤキャンドルでさえ一瞬だけ言葉を失い、ブーケは瞬きを忘れ、Mr.シャイニングナイフとMrs.スイートケークに至っては、今見たものをどう解釈すればいいのか本気で迷っていた。
クオンはそんな反応をまとめて置き去りにするように、肩をすくめて笑う。
「まだまだ戦えるだろ」
軽い。
あまりにも軽い言い方だった。
だが、その軽さに救われる時もある。
重苦しく沈みかけた戦場を、無理やり持ち上げるには、これくらい無茶な明るさが必要なのだ。
ファイヤキャンドルが最初に笑った。
喉を焼くような苦しさを残したまま、それでも獰猛に口角を上げる。
「当然だ、俺様を誰だと思ってやがる」
ブーケもまた胸を押さえながら、小さく、しかし強く頷く。
「ここで終わるつもりなんて、最初からありませんわ」
Mr.シャイニングナイフが片目を細め、舞台の幕が上がる瞬間みたいに肩を開く。
「ようやく主役が揃った、そういうことだろう」
Mrs.スイートケークはその言葉を受けるように前へ出て、静かに息を整える。
「なら、立ちましょう。今度は倒れるためではなく、戦うために」
その瞬間、四方から光が飛んだ。
センタイリングが、それぞれの手元へ吸い込まれるように収まり、まるで今この時まで待っていたかのように、戦場の空気を一気に張り詰めさせる。
クオンはテガジューンを握り、迷いなく掲げる。
ファイヤキャンドル、ブーケ、そしてMr.シャイニングナイフとMrs.スイートケークも、それぞれの手にあるテガジューンを構えた。
四人の視線が、同時にペスティスを射抜く。
今度はもう、圧倒されるだけの目ではない。
「エンゲージ!」
『ガリュード』
『キズナファイブ』
『アキバレンジャー』
『ハイスクールヒーローズ』
重なった音声が、採掘場の空へ鋭く響き渡る。
病んだ空気を切り裂くように光が立ち上がり、それぞれ違う色、それぞれ違う意志を纏った四人が、同じ一線へ並び立つ