ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦   作:ボルメテウスさん

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OTONAHERO

採掘場の斜面は、砕けた岩と鉄骨の残骸で波打っていて、踏み込むたびに足元の砂利がざりっと嫌な音を立て、舞い上がった粉塵が喉の奥へ貼りついていた。

 

立花響は、目の前のビダルから視線を逸らさないまま、打ち込まれた拳の重さを両腕で受け止め、その衝撃が肩から背中へ抜けるよりも早く踏み込み返そうとしていた。

 

けれど、今日のビダルは明らかに様子が違っていた。

 

ただ押し切るための猛攻ではなく、他の誰よりも先に響を潰し切ると決めた者だけが持つ、焦りに似た執拗さが、拳にも目つきにも濁った熱として滲んでいる。

 

洸が割って入ってくれてからも、その異常さは少しも薄れない。

 

むしろ、ドンブラソードで邪魔されればされるほど、鬱陶しい障害物をどけた先にある標的みたいに、ビダルの意識はますますこちらへ鋭く尖ってくる。

 

「お前ばかり狙ってる、何かある!」

 

洸の声が飛んだ瞬間、響の胸の奥で何かがひやりと冷えた。

 

自分が狙われることには慣れている。

 

けれど、これは違う。

 

勝つためでも、戦況を有利にするためでもなく、とにかく自分だけはこの場で消しておかなければならないとでもいうような、理屈を飛び越えた必死さがある。

 

その気配を察したのか、ビダルの踏み込みが一段深くなった。

 

地面を抉るように踏み込み、肩を沈め、獣が喉笛へ噛みつく直前みたいな姿勢で、一気に響へ飛びかかってくる。

 

響は反射で拳を上げた。

 

正面から受けるしかない。

 

そう判断した瞬間、その前へ洸が身を滑り込ませた。

 

「ここは俺に任せて、吠君の所に!」

 

「でもっ」

 

口から出た言葉は、ほとんど反射だった。

 

ビダルは強い。

 

それも、一人で正面から相手をしていい強さではない。

 

この場を洸一人へ押しつけて、自分だけが別の戦場へ走るなんて、そんな真似ができるわけがなかった。

 

だが、その迷いへ割って入るように、低く、それでいて揺るぎない声が夜気を貫いた。

 

「ならば、ここは俺達に任せて貰おう」

 

『ゲキレンジャー!』

 

響く音声と同時に、赤い拳がビダルの横面へ叩き込まれた。

 

接触の鈍い音が採掘場へ広がり、ビダルの巨体が数歩ぶんだけ横へ弾かれ、砕けた斜面の砂利を激しく跳ね上げる。

 

その隣へ、もう一つの赤が静かに降り立つ。

 

「少し遅れてしまいました」

 

『カクレンジャー』

 

ゲキレッド。

 

ニンジャレッド。

 

その立ち姿を見た瞬間、響の胸へ熱が戻る。

 

あの声を、間違えるはずがない。

 

「その声、もしかして師匠と緒川さん!?」

 

「あぁ、俺達の元にも指輪が来ていた。本部を抜ける為に少し準備をしていて、遅れた」

 

弦十郎は、拳を軽く開きながら前へ出る。

 

緒川は、その半歩後ろへ音もなく立ち、視線だけで周囲の足場とビダルの退路を測っていた。

 

頼もしさ、なんて言葉では軽すぎる。

 

二人がそこに立った瞬間、この採掘場の空気そのものが「まだ折れていない」と言い出したように感じられた。

 

しかし、ビダルは弾き飛ばされた勢いを殺し切る前に、もう響のいた位置へ視線を戻している。

 

やはりだ。

 

弦十郎たちが来てもなお、こいつの最優先は自分だ。

 

「どけぇっ!」

 

怒鳴り声と共に、ビダルが再び踏み込む。

 

その軌道は、弦十郎でも緒川でもなく、煙のように響の位置だけを追っている。

 

だが、緒川のほうが速かった。

 

ニンジャレッドが一歩だけ前へ出ると、袖口から散った小さな筒が地面で弾け、濃い煙が一瞬で採掘場の空気へ広がる。

 

粉塵の多い場所だからこそ、その煙はすぐ周囲へ絡みつき、視界を白く奪ってビダルの踏み込みを鈍らせた。

 

「響さん、今のうちに!」

 

その声に、響はもう迷わなかった。

 

ここで残ることが勇気ではない。

 

自分を狙う理由を、S.O.N.G.が解析してくれている。

 

だったら、その答えへ繋がるためにも、今は吠のところへ行かなければならない。

 

響は煙幕の切れ目を見つけ、斜面を蹴って走り出す。

 

背後でビダルが気配だけで追おうとした瞬間、三つの気配がその前へ壁のように立ち塞がる。

 

煙の向こうで見えたのは、拳を構えたゲキレッド、刃を低く据えたニンジャレッド、そしてドンブラソードを握り直した洸の背中だった。

 

「お前の相手は、俺達だ」

 

その一言が、背を押した。

 

響は振り返らない。

 

振り返らなくても、あの三人がそこにいるだけで、この背中はもう十分に守られていると分かっていた。

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