ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦   作:ボルメテウスさん

323 / 346
集う赤き力

 拳と拳がぶつかるたび、空気が軋んだ。

 

 重い。

 ただ重いだけじゃねえ。殴り合ってるはずなのに、こっちが振るった力ごと飲み込まれていくみてえな感覚がある。こいつはただ強いんじゃない。世界そのものに、「お前はここで終われ」って言わせるみてえな圧を持ってやがる。

 

 レクスは笑っていた。

 余裕ぶった、気に食わねえ笑みだ。

 

「どうした、遠野吠。テガソードオリジンを得た程度で、余の前に立てるとでも思ったか?」

 

「うるせえ……!」

 

 吐き捨てながら、もう一度踏み込む。

 テガソードオリジンの刃を横薙ぎに振るう。レクスはそれを半身でかわし、返しの蹴りを叩き込んできた。脇腹が焼ける。息が詰まる。けど、倒れねえ。こんなところで膝をつけるか。

 

 禽次郎が消えた。

 真白も消えた。

 あいつらが残したもんを背負って、ようやくここまで来たんだ。こんなクソみてえな王様に、また奪わせてたまるか。

 

 俺が睨み返すと、レクスはつまらなそうに肩を竦めた。

 

「ならば見せてやろう。貴様がどれだけ抗おうと、余の法の外には出られぬと」

 

 次の瞬間、奴の姿がふっと掻き消えた。

 

「――っ!?」

 

 見上げる。

 いつの間にかレクスは上空にいた。まるで最初からそこが玉座だったみてえに、夜空を背にして俺を見下ろしている。

 

 嫌な予感がした。

 

 レクスの周囲に、黒く濁った光が無数に灯る。

 一つ二つじゃねえ。十、二十、三十……数える意味もねえくらいだ。全部が矢みてえに鋭く尖って、俺だけを狙っていやがる。

 

「喰らえ」

 

 降ってきた。

 

 豪雨なんてもんじゃねえ。厄災そのものが、空から牙を剥いてきたみてえだった。地面を蹴って避ける。すれ違いざまに爆ぜた光が、掘削場の地面を抉り飛ばす。二発、三発、五発――避けても避けても、追ってくる。斬り払っても、その先からまた新しい弾が生まれる。

 

「ちっ……!」

 

 このままじゃ削り殺される。

 地上にいる限り、俺は的だ。上を取られたままじゃ終わる。

 

 だったら――!

 

 俺は足を止めた。

 テガソードオリジンを正面に構える。刃の中に埋め込まれた指輪が、熱を帯びて震えた。

 

 なんだ……?

 いや、違う。震えてるんじゃねえ。変わってる。

 

 銀色だった輪郭が、光の中で組み替わっていく。見たこともねえ戦隊の紋章が、一瞬ごとに明滅して、次の瞬間には別の形へ塗り替わる。まるで、剣そのものが今この場で必要な力を探してるみてえに。

 

 テガソードオリジンが、俺の手の中で脈打った。

 

 その感覚が、分かった。

 

 選ぶんじゃねえ。

 こいつが返してくるんだ。

 今、この戦場を食い破るために必要な“赤”を。

 

 弾幕が迫る。

 間に合え――!

 

『ゴジュウジャー!』

 

 鳴った瞬間、背中が弾けた。

 

 いや、違う。

 空気の掴み方が変わった。落ちるはずの身体が、急に軽くなる。背中から噴き上がった力が、俺をそのまま夜空へ押し上げた。

 

「――行ける!」

 

 地面を蹴る必要なんかねえ。

 空を掴む。風を裂く。落下がそのまま上昇へ変わる。

 

 レクスの目がわずかに細まった。

 初めてだ。あの余裕面に、ほんの少しだけ驚きが混じったのは。

 

「飛んだ、だと……?」

 

「追いついたぞッ!」

 

 そのまま一気に距離を詰める。

 レクスが弾幕の軌道を変えるより先に、俺はテガソードを握り直した。指輪がまた変わる。熱が走る。今度は鋭い。獲物を裂くための、研ぎ澄まされた刃の感覚だ。

 

『ライブマン!』

 

 右手に、細く鋭い剣が生まれる。

 ファルコンセイバー。空中でも軌道がぶれねえ、伸びる刃だ。

 

 続けざまにもう一度、輪が鳴る。

 

『サンバルカン!』

 

 左手に、日本刀めいた感触が走る。

 重さは軽い。だが芯がある。まっすぐ振れば、それだけで斬れるって確信できる刀だ。

 

 二刀流。

 考えるより先に身体が動いていた。

 

 右のファルコンセイバーで、空を裂く。

 レクスがかわす。

 その逃げ道へ、左の刀を滑り込ませる。

 

「らぁッ!」

 

 火花。

 続けて逆袈裟。もう一閃。空中で体を捻りながら刃を重ねる。ファルコンセイバーの伸縮が間合いをズラし、日本刀の軌道が死角を抉る。レクスのマントみてえな闇が裂け、胸元に確かな傷が走った。

 

「ぬ……!」

 

 効いた。

 その手応えはあった。

 

 だがレクスも黙ってねえ。

 奴は後方へ跳びながら、右腕を振り下ろした。

 

 次の瞬間、地面が吠えた。

 

 掘削場の岩盤が、まるで意思を持ったみてえに突き上がる。巨大な瓦礫がいくつも浮かび上がり、そのまま砲弾みてえな勢いで俺へ向かって撃ち出された。

 

「くそっ!」

 

 空中じゃ避け切れねえ。

 なら、砕く!

 

 指輪が燃える。

 

『ボウケンジャー!』

 

 両手の武器が弾けるみてえにほどけて、次の瞬間には重火器へ変わっていた。デュアルクラッシャー。握っただけで分かる。こいつはデカいもんを真正面からぶち砕くための力だ。

 

 引き金を引く。

 轟音。

 撃ち出された破壊の一撃が、先頭の瓦礫を粉微塵に吹き飛ばした。破片が雨みてえに散る。二発目。三発目。腕が痺れる。反動が骨まで響く。だが、それでいい。止まる理由にはなんねえ。

 

「全部――壊す!」

 

 最後の瓦礫を撃ち砕いた瞬間、俺はその反動ごと身体を前へ投げた。

 まだ終わってねえ。ここからだ。

 

『ゴーバスターズ!』

 

 景色が流れた。

 

 いや、俺が速くなったんだ。

 一歩で間合いが消える。空中から地上へ、地上からレクスの懐へ。世界が遅く見える。奴の視線が俺を追うより先に、俺はもう次の位置にいる。

 

『ハリケンジャー!』

 

 足元に影が走った。

 一人のはずの俺の輪郭が、二つ、三つ、四つにぶれる。残像じゃねえ。もっと粘っこくて、もっと厄介な、影そのものが刃を持ったみてえな動き。

 

「どれが本物だ――!」

 

「全部だッ!」

 

 正面から斬る。

 横からも斬る。

 影が障子みてえに重なって、そこから抜け出すたびに新しい斬撃が走る。レクスが受ける。払う。だが間に合わねえ。右肩、左脇腹、背中――連続で赤い線が走る。

 

 最後に真正面へ飛び込み、テガソードオリジンを叩き込んだ。

 

「吹き飛べぇぇぇッ!!」

 

 炸裂。

 レクスの身体がひび割れ、そのまま砕けた。黒い破片になって四方へ弾け飛ぶ。

 

 やった――

 そう思ったのは、ほんの一瞬だった。

 

 破片が、笑った。

 

「……は?」

 

 砕け散ったはずの闇が、空中で蠢く。

 一つ一つの破片が磁石みてえに引き寄せられ、また人の形を作り直していく。腕が戻る。胸が戻る。顔が戻る。最後に、あの気に食わねえ笑みまで元通りだ。

 

 レクスは何事もなかったみてえに立っていた。

 

「見事だ、遠野吠。だがその程度か。法を断てぬ刃では、余を殺せぬ」

 

 ぞわり、と背筋が冷えた。

 効いてる。確かに効いてるはずなのに、終わらねえ。こいつ、本当に――。

 

「なら今度は、余の番だ」

 

 レクスが腕を上げる。

 空気が軋む。いや、空気だけじゃねえ。地面も、光も、音も、全部が奴の方へ傾いていく。世界そのものが、俺を潰すために形を変えようとしていた。

 

 まずい。

 分かってても、身体が追いつかねえ。

 

 その時だった。

 

「――ッ!!」

 

 黄金の拳が、横合いから飛び込んできた。

 

 レクスの顔面へ向かって、一直線。

 躱される。けど、それで十分だった。レクスの意識が俺から外れる。歪みかけた空間が、一瞬だけほどける。

 

 そのまま着地した影を見て、俺は目を見開いた。

 

「……響」

 

 装者の姿のまま、肩で息をしながら、そいつはまっすぐ前を見ていた。

 息は上がってる。けど目は死んでねえ。いや、むしろ余計に燃えてやがる。

 

「間に合った……!」

 

 そう言って、響は俺の隣に並ぶ。

 当たり前みてえに。最初からそこが自分の場所だって顔で。

 

 レクスは一歩引き、俺たちを見比べた。

 さっきまでの薄笑いの奥に、少しだけ不快そうな色が混じる。

 

「また増えたか。実に鬱陶しい」

 

「悪かったな。こっから先は、一人じゃねえんだよ」

 

 俺が吐き捨てると、響がこっちを見た。

 少し安心したような顔をして、それからいつものまっすぐな声で言う。

 

「吠君……来たよ」

 

「……遅ぇんだよ」

 

 口から出たのは、そんな言葉だった。

 もっと別のこともあったはずなのに、出てきたのはそれだけだ。

 

 けど響は怒らなかった。

 むしろ、少し笑った。

 

「うん。だから、今度は一緒に行こう」

 

 その一言で、腹の底に残ってた熱が、少しだけ別のもんに変わった気がした。

 怒りは消えてねえ。喪ったもんも戻らねえ。レクスをぶっ飛ばしたい気持ちだって、そのままだ。

 

 それでも。

 

 一人じゃねえなら、まだ噛みつける。

 まだ立てる。

 まだ、この先を選べる。

 

 俺はテガソードオリジンを握り直し、レクスを睨みつけた。

 

「続きだ、厄災の王。今度は二人で行く」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。