ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
拳と拳がぶつかるたび、空気が軋んだ。
重い。
ただ重いだけじゃねえ。殴り合ってるはずなのに、こっちが振るった力ごと飲み込まれていくみてえな感覚がある。こいつはただ強いんじゃない。世界そのものに、「お前はここで終われ」って言わせるみてえな圧を持ってやがる。
レクスは笑っていた。
余裕ぶった、気に食わねえ笑みだ。
「どうした、遠野吠。テガソードオリジンを得た程度で、余の前に立てるとでも思ったか?」
「うるせえ……!」
吐き捨てながら、もう一度踏み込む。
テガソードオリジンの刃を横薙ぎに振るう。レクスはそれを半身でかわし、返しの蹴りを叩き込んできた。脇腹が焼ける。息が詰まる。けど、倒れねえ。こんなところで膝をつけるか。
禽次郎が消えた。
真白も消えた。
あいつらが残したもんを背負って、ようやくここまで来たんだ。こんなクソみてえな王様に、また奪わせてたまるか。
俺が睨み返すと、レクスはつまらなそうに肩を竦めた。
「ならば見せてやろう。貴様がどれだけ抗おうと、余の法の外には出られぬと」
次の瞬間、奴の姿がふっと掻き消えた。
「――っ!?」
見上げる。
いつの間にかレクスは上空にいた。まるで最初からそこが玉座だったみてえに、夜空を背にして俺を見下ろしている。
嫌な予感がした。
レクスの周囲に、黒く濁った光が無数に灯る。
一つ二つじゃねえ。十、二十、三十……数える意味もねえくらいだ。全部が矢みてえに鋭く尖って、俺だけを狙っていやがる。
「喰らえ」
降ってきた。
豪雨なんてもんじゃねえ。厄災そのものが、空から牙を剥いてきたみてえだった。地面を蹴って避ける。すれ違いざまに爆ぜた光が、掘削場の地面を抉り飛ばす。二発、三発、五発――避けても避けても、追ってくる。斬り払っても、その先からまた新しい弾が生まれる。
「ちっ……!」
このままじゃ削り殺される。
地上にいる限り、俺は的だ。上を取られたままじゃ終わる。
だったら――!
俺は足を止めた。
テガソードオリジンを正面に構える。刃の中に埋め込まれた指輪が、熱を帯びて震えた。
なんだ……?
いや、違う。震えてるんじゃねえ。変わってる。
銀色だった輪郭が、光の中で組み替わっていく。見たこともねえ戦隊の紋章が、一瞬ごとに明滅して、次の瞬間には別の形へ塗り替わる。まるで、剣そのものが今この場で必要な力を探してるみてえに。
テガソードオリジンが、俺の手の中で脈打った。
その感覚が、分かった。
選ぶんじゃねえ。
こいつが返してくるんだ。
今、この戦場を食い破るために必要な“赤”を。
弾幕が迫る。
間に合え――!
『ゴジュウジャー!』
鳴った瞬間、背中が弾けた。
いや、違う。
空気の掴み方が変わった。落ちるはずの身体が、急に軽くなる。背中から噴き上がった力が、俺をそのまま夜空へ押し上げた。
「――行ける!」
地面を蹴る必要なんかねえ。
空を掴む。風を裂く。落下がそのまま上昇へ変わる。
レクスの目がわずかに細まった。
初めてだ。あの余裕面に、ほんの少しだけ驚きが混じったのは。
「飛んだ、だと……?」
「追いついたぞッ!」
そのまま一気に距離を詰める。
レクスが弾幕の軌道を変えるより先に、俺はテガソードを握り直した。指輪がまた変わる。熱が走る。今度は鋭い。獲物を裂くための、研ぎ澄まされた刃の感覚だ。
『ライブマン!』
右手に、細く鋭い剣が生まれる。
ファルコンセイバー。空中でも軌道がぶれねえ、伸びる刃だ。
続けざまにもう一度、輪が鳴る。
『サンバルカン!』
左手に、日本刀めいた感触が走る。
重さは軽い。だが芯がある。まっすぐ振れば、それだけで斬れるって確信できる刀だ。
二刀流。
考えるより先に身体が動いていた。
右のファルコンセイバーで、空を裂く。
レクスがかわす。
その逃げ道へ、左の刀を滑り込ませる。
「らぁッ!」
火花。
続けて逆袈裟。もう一閃。空中で体を捻りながら刃を重ねる。ファルコンセイバーの伸縮が間合いをズラし、日本刀の軌道が死角を抉る。レクスのマントみてえな闇が裂け、胸元に確かな傷が走った。
「ぬ……!」
効いた。
その手応えはあった。
だがレクスも黙ってねえ。
奴は後方へ跳びながら、右腕を振り下ろした。
次の瞬間、地面が吠えた。
掘削場の岩盤が、まるで意思を持ったみてえに突き上がる。巨大な瓦礫がいくつも浮かび上がり、そのまま砲弾みてえな勢いで俺へ向かって撃ち出された。
「くそっ!」
空中じゃ避け切れねえ。
なら、砕く!
指輪が燃える。
『ボウケンジャー!』
両手の武器が弾けるみてえにほどけて、次の瞬間には重火器へ変わっていた。デュアルクラッシャー。握っただけで分かる。こいつはデカいもんを真正面からぶち砕くための力だ。
引き金を引く。
轟音。
撃ち出された破壊の一撃が、先頭の瓦礫を粉微塵に吹き飛ばした。破片が雨みてえに散る。二発目。三発目。腕が痺れる。反動が骨まで響く。だが、それでいい。止まる理由にはなんねえ。
「全部――壊す!」
最後の瓦礫を撃ち砕いた瞬間、俺はその反動ごと身体を前へ投げた。
まだ終わってねえ。ここからだ。
『ゴーバスターズ!』
景色が流れた。
いや、俺が速くなったんだ。
一歩で間合いが消える。空中から地上へ、地上からレクスの懐へ。世界が遅く見える。奴の視線が俺を追うより先に、俺はもう次の位置にいる。
『ハリケンジャー!』
足元に影が走った。
一人のはずの俺の輪郭が、二つ、三つ、四つにぶれる。残像じゃねえ。もっと粘っこくて、もっと厄介な、影そのものが刃を持ったみてえな動き。
「どれが本物だ――!」
「全部だッ!」
正面から斬る。
横からも斬る。
影が障子みてえに重なって、そこから抜け出すたびに新しい斬撃が走る。レクスが受ける。払う。だが間に合わねえ。右肩、左脇腹、背中――連続で赤い線が走る。
最後に真正面へ飛び込み、テガソードオリジンを叩き込んだ。
「吹き飛べぇぇぇッ!!」
炸裂。
レクスの身体がひび割れ、そのまま砕けた。黒い破片になって四方へ弾け飛ぶ。
やった――
そう思ったのは、ほんの一瞬だった。
破片が、笑った。
「……は?」
砕け散ったはずの闇が、空中で蠢く。
一つ一つの破片が磁石みてえに引き寄せられ、また人の形を作り直していく。腕が戻る。胸が戻る。顔が戻る。最後に、あの気に食わねえ笑みまで元通りだ。
レクスは何事もなかったみてえに立っていた。
「見事だ、遠野吠。だがその程度か。法を断てぬ刃では、余を殺せぬ」
ぞわり、と背筋が冷えた。
効いてる。確かに効いてるはずなのに、終わらねえ。こいつ、本当に――。
「なら今度は、余の番だ」
レクスが腕を上げる。
空気が軋む。いや、空気だけじゃねえ。地面も、光も、音も、全部が奴の方へ傾いていく。世界そのものが、俺を潰すために形を変えようとしていた。
まずい。
分かってても、身体が追いつかねえ。
その時だった。
「――ッ!!」
黄金の拳が、横合いから飛び込んできた。
レクスの顔面へ向かって、一直線。
躱される。けど、それで十分だった。レクスの意識が俺から外れる。歪みかけた空間が、一瞬だけほどける。
そのまま着地した影を見て、俺は目を見開いた。
「……響」
装者の姿のまま、肩で息をしながら、そいつはまっすぐ前を見ていた。
息は上がってる。けど目は死んでねえ。いや、むしろ余計に燃えてやがる。
「間に合った……!」
そう言って、響は俺の隣に並ぶ。
当たり前みてえに。最初からそこが自分の場所だって顔で。
レクスは一歩引き、俺たちを見比べた。
さっきまでの薄笑いの奥に、少しだけ不快そうな色が混じる。
「また増えたか。実に鬱陶しい」
「悪かったな。こっから先は、一人じゃねえんだよ」
俺が吐き捨てると、響がこっちを見た。
少し安心したような顔をして、それからいつものまっすぐな声で言う。
「吠君……来たよ」
「……遅ぇんだよ」
口から出たのは、そんな言葉だった。
もっと別のこともあったはずなのに、出てきたのはそれだけだ。
けど響は怒らなかった。
むしろ、少し笑った。
「うん。だから、今度は一緒に行こう」
その一言で、腹の底に残ってた熱が、少しだけ別のもんに変わった気がした。
怒りは消えてねえ。喪ったもんも戻らねえ。レクスをぶっ飛ばしたい気持ちだって、そのままだ。
それでも。
一人じゃねえなら、まだ噛みつける。
まだ立てる。
まだ、この先を選べる。
俺はテガソードオリジンを握り直し、レクスを睨みつけた。
「続きだ、厄災の王。今度は二人で行く」