ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦   作:ボルメテウスさん

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厄災が恐れる拳

 隣に立たれると、妙に腹が据わる。

 それが気に食わねえと思うより先に、もう体が前へ出ていた。

 

「行くぞ、響!」

 

「うんッ!」

 

 返事は短い。

 けど、それで十分だった。今のこいつは、余計な理屈を挟むより先に拳を届かせる顔をしている。

 

 レクスはそんな俺たちを見て、わずかに口元を歪めた。

 王様気取りの余裕面は相変わらずだが、その目だけはさっきよりも落ち着きがねえ。

 

「何度並ぼうと同じことだ。貴様らでは、余の法へ届かぬ」

 

「届くかどうかは、殴ってから決めろッ!」

 

 俺が地面を蹴る。

 同時に響も踏み込む。真正面から一直線に。あいつらしい、迷いのねえ突っ込み方だ。

 

 レクスは俺の斬撃を半身でいなし、そのまま響の拳線上から滑るように身を外した。

 避けた。いや、ただ避けたんじゃねえ。俺の刃より先に、響の拳が来る角度を潰しやがった。

 

「っ……!」

 

 響の拳が空を切る。

 その隙へレクスの蹴りが走るが、俺がテガソードオリジンを差し込んで無理やり弾く。

 

 火花が散る。

 腕が痺れる。けど、そっちはどうでもいい。

 

 今の動き。

 なんだ、あれ。

 

 俺が前へ出た時は、受けるなり流すなり、まだ余裕のある対処だった。

 なのに響が踏み込んだ瞬間だけ、レクスはわざわざ体勢を崩してまで線を外した。

 

 偶然か。

 いや、違う。こいつはさっきからずっとそうだ。

 

「どうした、遠野吠。よそ見か?」

 

「うるせえよッ!」

 

 吐き捨てながら斬り上げる。

 レクスは後ろへ飛び退く。そこへ響が追う。右の拳を囮に、左を奥へ差し込む。いい踏み込みだ。けどレクスは、その左が届く寸前に地面の傾きを捻じ曲げたみてえに、響の重心をずらしてみせた。

 

「わっ……!」

 

「響!」

 

 踏み込みがわずかに狂う。

 その一瞬で、決め手が消える。

 

 やっぱりだ。

 こいつ、響の拳だけは絶対に近づけたくねえんだ。

 

 だったら、見る。

 戦って、もっとはっきり見てやる。

 

 俺はテガソードオリジンを握り直した。

 熱が走る。輪の中で、別の赤が目を覚ます気配がした。

 

『デカレンジャー!』

 

 鳴った瞬間、景色の見え方が変わった。

 レクスの肩の入り方。重心の移り方。目線の置き方。逃げる時に選ぶ角度。その全部が、線になって浮かんで見える。

 

「――そういうことか」

 

「何か見えたの、吠君!」

 

「いいから前だけ見てろ! お前は殴ることだけ考えろ!」

 

「う、うん!」

 

 響が頷く。

 素直で助かる。こういう時は、変に勘ぐられるよりよっぽどいい。

 

 俺は左へ回る。

 レクスの逃げ道を一つ潰すために。響は正面から圧をかける。拳で、足で、あいつのまっすぐさ全部で押していく。

 

 レクスは俺を見る。

 次に響を見る。

 そのわずかな視線の揺れだけで、もう十分だった。

 

 本来なら、こいつにとって一番安全なのは俺から距離を取る方だ。

 俺は剣を持ってる。切り替えもある。読めねえ札を何枚も抱えてる。なら、まず警戒すべきは俺のはずだ。

 

 なのに――

 

「そっちかよ……!」

 

 レクスは、俺のいる側へ踏み込んだ。

 正確には、響の拳から最も遠ざかる方向へ動いた。その結果、俺の斬撃圏内に自分から入ってきやがった。

 

「甘いぞッ!」

 

 俺はそのまま横薙ぎに払う。

 レクスは腕で受ける。鈍い音。肉が裂ける手応え。確かに入った。なのに、こいつは傷を受ける方を選んだ。

 

 傷を受けても、響の拳だけは外した。

 そこまでして、か。

 

「遠野吠……!」

 

 レクスの声が低くなる。

 余裕面の奥に、わずかに混じる苛立ち。ようやく、王様の仮面の下が見え始めた。

 

「見えてきたぜ。お前、俺を止めたいんじゃねえな」

 

「何を――」

 

「響を近づけたくねえんだろ」

 

 言った瞬間、レクスの目がほんの少しだけ細くなった。

 答え合わせとしては、それで十分だった。

 

 響が驚いた顔でこっちを見る。

 けど今は説明してる暇はねえ。

 

「響! 次、真っ直ぐじゃなくていい!」

 

「え?」

 

「届かねえ道なら、こっちで作る!」

 

 テガソードオリジンが脈打つ。

 次に必要なのは、見切る力じゃねえ。届かねえはずのもんを、無理やり届かせる力だ。

 

『トッキュウジャー!』

 

 足場が変わった。

 いや、地面が伸びたんじゃねえ。進めるはずのなかった線が、そこにあると分かる感覚だ。

 

 崩れていた瓦礫の上。空いていた空間。角度の悪い傾斜。

 さっきまで全部“届かねえ理由”だったものが、一瞬で“通れる道”へ変わる。

 

「右だ、響! そのまま二歩、跳べ!」

 

「うんッ!」

 

 響が迷わず走る。

 普通なら踏み込めねえ角度だ。けど今は違う。繋がってる。俺が見て、通した道の上を、あいつは何のためらいもなく駆ける。

 

 レクスの顔が変わった。

 

「なっ――!?」

 

 初めてだ。

 あの野郎が、明確に狼狽えた。

 

 響の拳が、本来ありえねえ軌道から迫る。

 真横でも後ろでもねえ。こいつが安全だと思っていた死角、そのさらに奥から、一直線の拳が伸びる。

 

「はあああああッ!」

 

 避ける。

 レクスは俺への反撃を捨ててでも、そっちを避けた。

 

 その瞬間、俺の中で全部が繋がった。

 

 こいつが嫌がってるのは、歴代レッドの力そのものじゃねえ。

 俺の切り替えは確かに厄介なんだろう。けど、それはあくまで“面倒な障害”だ。

 

 本当に嫌なのは別だ。

 響の拳。

 あいつの、あのまっすぐな一撃だけは、こいつにとって何かが違う。

 

「チッ、惜しい……!」

 

 響の拳がレクスの頬を掠める。

 ほんの少しだ。ほんの少しなのに、レクスはまるで刃物を押し付けられたみてえな顔で距離を取った。

 

「何だよ、それ……」

 

 俺は思わず笑いそうになった。

 余裕ぶって、法だの王だのほざいてた化け物が、ここまで露骨に一発を嫌がるか。

 

 なら、やることは決まった。

 

「響! 次はもっと通すぞ!」

 

「通すって――」

 

「お前の拳だよ!」

 

 俺は吠えた。

 響の目が開く。次の瞬間には、あいつも理解した顔になる。細けえ説明なんか要らねえ。戦ってる最中なら、こいつはちゃんと分かる。

 

「……分かった!」

 

「よし!」

 

 なら、最後の仕上げだ。

 戦場の主役を奪い返す。王様気取りの視線を、こっちへ縫い止める。

 

 テガソードオリジンの輪が、今度は派手に燃え上がった。

 

『ドンブラザーズ!』

 

 熱が変わる。

 刃の重みが変わる。

 強いだけじゃねえ。こいつは、戦場の中心をぶんどるための力だ。

 

「ほらよ、こっち見ろッ!」

 

 俺は踏み込んだ。

 一太刀。

 二太刀。

 三太刀目は袈裟に見せて、途中で軌道を変える。祭りみてえに派手で、笑っちまうほど強引な斬撃。まともに受けりゃ終わるって分かるから、レクスも無視できねえ。

 

「貴様――!」

 

「避けんなよ、王様!」

 

 斬る。押す。さらに斬る。

 レクスの視線が俺へ固定される。王を名乗るなら、目の前で主役面してくる刃は放っておけねえ。そういう顔をしていた。

 

 それでいい。

 見ろ。俺を見ろ。

 お前が一番見たくねえもんは、その横から来る。

 

「響ぃッ!」

 

「――うんッ!!」

 

 来た。

 

 横合いから、黄金の拳が一直線に突き込まれる。

 踏み込みに迷いはねえ。さっき俺が通した道を、今度は自分のものにしたみてえに、響はまっすぐにレクスへ届こうとしていた。

 

 レクスは俺の斬撃を受けた。

 受けたまま、無理やり体を捻った。俺の刃が肩口を裂く。黒い血みてえなものが飛ぶ。なのに、あいつはそれすら構わず、響の拳だけを外しにかかった。

 

 そこまでして、避けるのかよ。

 

「その拳を……寄越すなァッ!!」

 

 叫んだ。

 ついに、言いやがった。

 

 俺は目を見開いた。

 響も驚いていた。けど拳は止まらねえ。止める理由がねえ。

 

「逃がすかぁぁぁッ!」

 

 あと少し。

 もう少しで届く。

 

 だが、レクスの周囲の空間が歪んだ。

 厄災の力か、法則改変か。理屈は知らねえ。けど、さっきまでそこにいたはずの体が、ほんの紙一重だけ後ろへずれた。

 

 響の拳は、胸の手前を穿って空を裂く。

 致命打だけ、かわしやがった。

 

 轟音。

 衝撃で地面が捲れ、砂塵が吹き荒れる。俺は腕で顔を庇いながら、すぐに前を見る。

 

 レクスは後退していた。

 肩で息をしている。傷は塞がりきってねえ。余裕面も、もう綺麗には保ててねえ。

 

「……なるほど。そこまで辿り着いたか、遠野吠」

 

「お前が勝手に見せたんだろ」

 

 俺はテガソードオリジンを構え直す。

 隣で、響も拳を握り直す。

 

 倒し切れなかった。

 あと一歩だった。悔しいに決まってる。

 

 けど、さっきまでとは違う。

 こいつは無敵じゃねえ。

 何を嫌がってるのか、何を隠したいのか、行動で見えた。

 

 俺の切り替えは道を作る。

 歴代レッドの力は、そのためにある。

 そして最後に王様のツラを歪めるのは、響の拳だ。

 

 だったら次は、もっと綺麗にやる。

 もっと確実に、もっと逃がさねえ形で。

 

「響」

 

「うん」

 

「次は通すぞ」

 

 俺が言うと、響は一瞬だけ目を丸くして、それから強く頷いた。

 

「うん。次は、絶対に」

 

 レクスは俺たちを睨み、忌々しそうに舌打ちした。

 その仕草だけで、もう十分だった。王様気取りの化け物が、今確かに焦っている。

 

 なら、次で引きずり下ろす。

 

 俺は唇の端を吊り上げた。

 腹の底の怒りはまだ燃えてる。喪ったもんも、そのままだ。けど今は、それだけじゃねえ。

 

 見えた。

 掴んだ。

 次にぶち抜くべき場所が、ようやく分かった。

 

「覚悟しとけよ、レクス」

 

 テガソードオリジンの刃を、まっすぐあいつへ向ける。

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