ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
白い極光が、まだ空気の中に薄く残っていた。
響の拳が引き剥がしたものの名残なのか、それとも熊手真白という存在そのものが纏う気配なのか、俺には分からない。ただ一つだけはっきりしているのは、さっきまでレクスの身体にへばりついていたゴジュウポーラーの力が、今はあいつのものじゃなくなっているってことだ。
それなのに、胸の奥に引っかかるものがあった。
あいつは確かに響の攻撃を嫌がっていた。嫌がっていたどころじゃない。避けることを最優先にしていた。だったら、その理由がいる。
「それにしても、本当にあいつは本当に響の攻撃が効いたが、なんで」
口に出した途端、真白は呆れたように鼻を鳴らした。
相変わらず、人が真面目に考えてる横で偉そうな顔を崩さねえ。
「決まっているだろ、今のレクスは俺様の持っていた神の力を持っているからな」
「そうか、神の――」
そこまで言って、俺は固まった。
頭の中で言葉が変な引っ掛かり方をした。
神。
今、こいつ、神って言ったか。
「……待て。今、神って言ったけど、どういう意味だ!? お前は確かに神になるとか言っていたけど、どういう意味だよ!?」
俺が思わず叫ぶと、真白は本気で不思議そうな顔をした。
いや、そっちがその顔をするなよ。意味が分からねえのはこっちだ。
「何を言う? 俺様は初めから嘘は言っていないぞ。テガソードを越える神になると」
言い切りやがった。
さらっと。
当たり前みてえに。
その横で、ベアックマがぽん、と小さく胸を張るみてえな仕草をする。
おい、お前まで乗るのか。
「熊手は初めから神だったクマ」
「ベアックマ! どういう事だ!」
ツッコまずにいられるか。
今のは聞き流したら駄目なやつだろ。
だっておかしいだろ。神って何だ。何でそんな単語が当然みてえに飛び出してくる。ゴジュウジャーだのユニバース戦士だの指輪争奪戦だの、こっちだって十分めちゃくちゃな世界を走ってきたつもりだ。けど神は違うだろ。神はもう、一段上の意味分からなさだろうが。
その時だった。
「ぐっ、エンキぃぃぃ!」
レクスが吠えた。
怨嗟とも恐怖ともつかねえ声だった。
その呼び方に、今度は響が反応する。
「エンキ!? それって、確か――」
響の顔色が変わる。
こいつのこの反応は、知らない単語に対するもんじゃねえ。知ってる。少なくとも、聞き覚えはある顔だ。
真白はその様子を見て、薄く笑った。
人を試すみてえな、相変わらず癪に障る笑い方だ。
「立花響、君もよく知るフィーネと関わりのある者だ。俺様自身、こうして蘇ったのは驚きだがな」
「フィーネにエンキ? よく分からない言葉が出てきたけど、どういう意味だ」
分からない。
分からなすぎる。
知ってる奴らだけで会話を進めるな。こっちは今、理解の梯子を全部外された気分なんだよ。
俺が睨むと、響が困ったようにこっちを見た。
ああ、駄目だ。こいつも完全に整理して説明できる顔じゃねえ。
「えっと、私もどう説明したら……」
だろうな!
知ってるなら知ってるで、分かりやすく言えと言いたいところだが、響はそういうのが得意な方じゃない。むしろ、分からないなりにちゃんと分からないって顔へ出るから余計に困る。
そんな俺たちを見て、真白は肩を竦めた。
完全に、今どうでもいい話をしている相手を見る態度だった。
「ふっ、今は気にする必要はないだろ」
「いやいや、気になる事が多すぎるだろ!?」
我慢できるか、そんなもん。
神だのエンキだのフィーネだの、知らねえ単語が一気に三つ四つ飛んできて、しかもお前らだけで納得してるみてえな空気を出されたら、誰だって叫ぶわ。
だが真白は意に介した様子もなく、むしろ俺を見下ろすように顎を上げた。
「二代目はそんな事を気にしなければ戦えないのか」
言いやがった。
この野郎、本当に一言多い。
蘇って早々、いや蘇ったからこそなのか知らねえが、相変わらず人の神経を逆撫でするのが上手すぎる。
「……はぁ」
思わず額を押さえた。
言い返したいことは山ほどある。
神って何だとか、フィーネって誰だとか、エンキって何者だとか、テガソードを越えるってどういう意味だとか、問い詰めたいことは本当にいくらでもある。
けど。
今、この場でそれをやる意味はねえ。
分からねえままでも、体は動く。
分からねえままでも、目の前の敵は消えてくれない。
だったら優先順位は一つだ。
「……まぁ良いぜ。お前に何を言おうが、今はどうでも良い。今は」
息を吐く。
テガソードオリジンを握り直す。
視線の先で、レクスが剥がれた力の残滓を押さえ込もうとするみてえに身を震わせていた。さっきまでの王様気取りの余裕は消え失せている。いい気味だ。けど、まだ倒れちゃいない。まだ終わっていない。
だから俺は、まっすぐあいつを睨みつけた。
「目の前にいるあの野郎を狩るだけだ」
一瞬、静けさが落ちる。
次の瞬間、真白が笑った。
高くもなく、低くもなく、ただ“それでいい”と告げるみてえな笑いだった。
「はっ、その意気だぜ」
響が隣で拳を握り直す。
ベアックマが小さく跳ねる。
真白の白い極光が、もう一度冷たく鋭く立ち上がる。
分からないことは山ほどある。
けど今は、それでいい。
神だろうが、王だろうが、厄災だろうが。
目の前に立つなら、噛みついて、引きずり下ろすだけだ。
俺は一歩、前へ出た。
レクスの目が細まる。
その奥に、さっきまでなかった焦りがまだ残っているのを見て、口元が勝手に吊り上がった。
「行くぞ、レクス」
次こそ、本当に終わらせる。