ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
レクスは、剥がれ落ちた白い力の残滓を睨みつけながら、それでもなお嗤った。
肩で息をし、顔を歪め、明らかに追い詰められているくせに、その目の奥だけはまだ死んでいない。厄災の王なんてふざけた肩書きを背負うだけあって、最後まで折れねえつもりらしい。
「エンキ、確かにお前の力が無くなったのは痛手だ。だが、それだけの話!」
吐き捨てる声には、まだ余裕を装う硬さがあった。
自分に言い聞かせてるのか、それとも俺たちに向けた虚勢か。どっちでもいい。今のあいつは、さっきまでみてえな絶対の王じゃねえ。そう思えるだけの綻びが、もう目の前に出てる。
その綻びを見下ろすみてえに、真白が一歩前へ出た。
白い極光が、その身体の輪郭に沿って揺らぐ。ただ光ってるんじゃねえ。気迫そのものが、目に見える熱みてえに溢れ出していた。冷たいはずの極地の白が、どういうわけか燃える炎よりもずっと熱く見える。立ってるだけで、戦場の空気が真白の方へ引っ張られていく。あいつの周りだけ、もう別の理屈で世界が回ってるみてえだった。
「果たして、どうだろうな。確かに今のお前を倒すのは俺様には不可能だ」
不可能。
その一言に、俺は思わず眉をひそめる。
だが真白は、そこで終わらなかった。口元を吊り上げ、まっすぐレクスを射抜く。
「だが、この場で立花響の神殺しのガングニールと、全てのスーパー戦隊の力を使う事が出来る二代目ならば、お前を殺す事が出来る」
「俺が? どういう事だ」
問い返した瞬間、手の中のテガソードオリジンが低く震えた。
次に必要な答えを、もう分かってるみてえに。
「キングオージャーの力だな」
「キングオージャー? どういう事だ?」
「キングオージャーは、かつて神殺しの力を得た」
短い。
だが、それで十分だった。
神の力を持ってる今のレクスに、神を殺した力。
理屈はそれで足りる。あとは握って、振るうだけだ。
「キングオージャー、分かったぜ。夏目、力を借りるぜ!」
『キングオージャー!』
鳴った瞬間、手の中に収まった感触が変わる。
王の剣。
オージャカリバー。
ただの剣じゃねえ。握った瞬間から、刃そのものが“上に立つ者”の圧を持ってる。振るうためじゃない。断じるための剣だ。王が敵を裁き、神すら討つための刃。そういう理屈の通った重みが、腕から肩へ食い込んでくる。
その横で、真白が鼻で笑った。
「さて、それじゃ神である俺様が道を切り開いてやろうか。レクス、お前は俺様の力を使ったんだ。その使用量はきっちりと払わせて貰うぜ!」
言うが早いか、真白はもう走っていた。
違う。走るなんて生易しいもんじゃねえ。白い気迫を噴き上げながら、戦場そのものを裂いて突っ込んでいく。足元の地面が軋み、空気が悲鳴を上げる。人間が前へ出る時の勢いじゃない。神話の中の何かが、獲物を狩るために真っ直ぐ降りてきたみてえな速度だった。
「っ!」
レクスが反応する。
だが、間に合わねえ。
真白の拳が叩き込まれる。
一発。
二発。
三発目はもう見えなかった。拳が振るわれるたびに、白い衝撃が空間へ刻み込まれていく。殴ってるというより、打ち込んだ場所の理屈ごと塗り替えてるみてえな暴力だ。これまで見てきた熊手真白の戦い方とは、明らかに違う。速いとか強いとか、そんな単純な言葉じゃ追いつかねえ。身体から溢れる気迫と神格が、そのまま出力になってる。
「どういう事だっ! なぜ、ここまでの力がっ」
「今の俺様はお前によって強制的にエンキだった頃の力に戻された。よって、今の俺様は全盛期を遥かに超えた力を持つゴッドネス熊手! そして!」
真白が大きく腕を払う。
その背後で白い気配が跳ね、別の声が応えた。
「熊手さん!」
グーデバーン。
そして、その足元にはベアックマ。
白い神格、相棒の獣、巨神の気配。真白一人じゃない。今のあいつは、自分を構成する全部を連れて前へ出ている。
「今の俺様にはベアックマとグーデバーンという相棒がいる! そんな俺様達の前に、厄災如きが敵うと思っているのか!」
レクスが歯噛みする。
押されている。
間違いなく。
それでもあいつは、まだ最後の最後まで厄災であろうとしていた。
「ぐっ……無駄だ! 万が一、私を倒した所で厄災はなくなりはしない! また、蘇るだけの話!」
「かもしれないな! だが!」
真白が嗤う。
その嗤いと同時に、レクスが反撃へ転じた。黒い衝撃が真白の胴を穿とうと走る。
だが真白は、それを紙一重で躱した。
躱した先に、道ができる。
その後ろにいる俺のための、一本の真っ直ぐな道が。
今だ。
『リュウソウジャー!』
オージャカリバーへ、熱が流れ込む。
赤熱じゃねえ。もっと深くて、もっと重い、竜の鼓動みてえな力だ。刃の根元から先端まで、テガソードオリジンを通じて流れ込む圧倒的なエネルギーが、王の剣の中で唸りを上げる。リュウソウジャーの爆発的な強化が、テガソードの力を受けたオージャカリバーを限界まで押し上げる。手の中の剣が、もうただの武器じゃなくなっていく。神を討つために研ぎ澄まされた“王の一撃”そのものへ変わっていく。
真白が、その背中越しに叫んだ。
「人間は、既に厄災を越える強さを持った!」
その宣言が、戦場の空気を決めた。
だったら証明するしかねえ。俺たちの手で。
「エバーラスティングディーノスラッシュ! はぁぁぁぁぁッ!!」
踏み込む。
オージャカリバーを振り下ろす。
だがこれは、俺一人の斬撃じゃない。
横から、響が飛び込んでくる。
拳を握り締め、何ひとつ迷わず、何ひとつ疑わず、ただ真っ直ぐレクスへ向かってくる。神殺しのガングニールを宿した拳。俺が作った道を、あいつは当たり前みたいに走り抜ける。
「響ぃッ!」
「うんッ!!」
斬撃と拳。
王の刃と神殺しの一撃。
二つの軌道が、ぴたりと重なる。
レクスの目が見開かれる。
逃げようとした。だが、もう遅い。
さっきまで真白が暴れ回った戦場は、白い極地の理に染まっている。逃走路となる地面はすでに凍てつき、足を取る氷へ変わっていた。踏み出す。滑る。僅かに遅れる。その一瞬で十分だ。
「厄災を越えた瞬間だ」
真白が静かに言い切る。
次の瞬間、俺のオージャカリバーがレクスを断ち、
響の拳が、その奥を貫いた。
「なっ――」
レクスの声が途切れる。
斬撃が白く燃え上がる。拳圧が黄金に弾ける。二つの力が真正面からぶつかり合うんじゃない。完全に一つになって、レクスの中心を貫通していく。神の力を持つからこそ通る神殺し。神を討った王の刃だからこそ断てる神性。そこへリュウソウジャーの爆発的な出力強化とテガソードの全開が重なって、今この瞬間だけの必殺が出来上がる。
「ガァァァァァァァッ!!」
絶叫。
白と金と赤が一斉に爆ぜる。
レクスの身体が、中心から砕けた。罅が走る。裂ける。膨張する。最後に、厄災の王を名乗っていた影は、その全てを飲み込む閃光の中で爆散した。
轟音。
衝撃波。
遅れて、風が吹き抜ける。
俺は着地して、荒く息を吐いた。
隣で響も膝を折りかけるが、すぐに踏ん張る。前では真白が、まだ白い気迫を揺らしながら爆煙の向こうを睨みつけていた。
終わったのか。
いや、まだ分からねえ。レクス自身が言っていた。厄災は消えない、また蘇るかもしれないと。なら、この一撃で全部終わったなんて楽観はしねえ。
それでも。
今、確かに俺たちは超えた。
神の力を纏った厄災に対して、届く一撃を叩き込んだ。
熊手が道を切り開き、俺が王の刃を振るい、響が神殺しの拳を重ねた。三つ揃って、ようやく届いた。
爆煙の中へ、俺はテガソードオリジンの切っ先を向ける。
まだ立つなら、もう一度でも何度でもやる。
だが胸の奥では、もう答えが出ていた。
人間は、厄災を越える。
今の一撃は、その証明だ。