ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦   作:ボルメテウスさん

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テガソードオリジンの力

「さぁ、行くぜ!」

 

 叫ぶと同時に、テガソードオリジンは大地を蹴った。

 

 巨神の踏み込みだった。

 ただ前へ出た、なんて生易しいものじゃない。掘削場の大地そのものが、その一歩に耐え切れず砕けて沈む。巨体が動いた衝撃で、さっきまで積み上がっていた瓦礫の山がまとめて跳ね上がり、宙へ浮いた石塊が遅れて爆ぜた。

 

 背中の翼が開く。

 赤と金の巨躯を支える原初の翼が、左右で異なる角度を取る。片方は大きく張り出し、もう片方はわずかに絞られる。その僅かな差だけで、あれほどの巨体が一直線の突進ではなく、獣みてえな軌道修正を見せた。

 

 速い。

 巨大戦の速度じゃねえ。視界一杯を埋めるほどの巨神が、山一つ分の距離を瞬きより早く食い潰していく。

 

 黒翼の魔神――厄災が吼えた。

 空気が濁る。いや、空気そのものが腐るみてえに黒く染まり、両腕が前へ伸びた。腕、と呼ぶには歪み過ぎている。黒煙と肉塊と甲殻を無理やり一本へ捻じ込んだような巨大な腕が、途中で何度も節を増やしながら伸張し、こっちをまとめて掴み潰そうと迫ってきた。

 

 だが、遅ぇ。

 

「斬り裂け、テガソードオリジン!」

 

 俺が吠えるより先に、テガソードオリジンの右腕が動く。

 元は剣であったその腕は、振るうために作られている。肘の折れ方から、肩の回り方から、何もかもが“切る”ための構造だ。

 

 右腕が振り上がる。

 翼が片側だけ大きくはためき、回転を補助する。

 次の瞬間、赤金の斬光が空を割った。

 

 迫る黒腕の先端が、音もなくずれた。

 一拍遅れて、巨大な断面が滑るように落ちる。切られた腕から噴き上がった黒煙が空を汚すが、テガソードオリジンはもうそこにいない。切り裂いた勢いのまま巨体を半回転させ、もう片方の腕でその煙ごと叩き裂いていた。

 

 黒翼の厄災がたたらを踏む。

 その胸元へ、テガソードオリジンはそのまま突っ込んだ。

 

 巨神と魔神が、正面から激突する。

 

 轟音。

 空気が破裂した。衝撃波が掘削場の壁面を円形に削り取り、砕けた岩盤が豪雨みてえに四方へ降り注ぐ。だが、テガソードオリジンは止まらない。左腕が相手の胸を押し込み、右腕が下から斬り上げる。黒翼の厄災は咄嗟に翼を盾のように折り畳んで受けるが、その翼ごと胴へ裂傷が走った。

 

 距離を取ろうとした厄災に対し、テガソードオリジンは翼を一気に広げる。

 それは飛翔というより、落下の向きを自分で決めるための姿勢制御だった。

 

 巨神が横へ滑る。

 厄災の右側面へ、信じられない角度から回り込む。

 そのまま肘。

 巨大な肘打ちが、厄災の脇腹へめり込んだ。

 

「押し切れぇぇぇッ!」

 

 俺の叫びに応じるように、テガソードオリジンの各部が連動する。

 肩。肘。手首。

 武器から変形したその構造は、普通の巨大ロボの可動域を明らかに超えている。前腕が捻られ、手首が返り、開いた五指が黒腕を掴んだ。握る。捻る。関節ごと引き剥がす勢いで、厄災の腕の軌道を外へ逸らす。

 

 その隙へ、逆の腕が叩き込まれる。

 

 斬撃。

 掌打。

 蹴り。

 再び斬撃。

 

 一つ一つが山を割れる威力だ。なのに、それが途切れない。翼が姿勢を支え、腕の剣身が振り抜きの重さを殺さず、指由来の多関節構造が巨体とは思えねえ細かい制御を可能にしている。テガソードオリジンは、ただデカいだけの神じゃない。武器として完成された理屈を、巨神の規模で押し付けてくる。

 

 黒翼の厄災が腕を振るう。

 黒い爪が空間を削り、闇の斬撃が何本も走る。

 テガソードオリジンはそれを真正面から受けない。片翼を折り畳み、もう片方を大きく開いて巨体をねじ込むように滑らせる。闇の斬撃が頬を掠める。そのまま懐へ潜り込み、肩口へ体当たりに近い一撃を叩き込んだ。

 

 厄災が仰け反る。

 そこへ、間髪入れず追撃。

 

 テガソードオリジンは両腕を交差させた。

 次の瞬間、左右の剣腕が逆方向へ開き、まるで巨大な鋏みてえに厄災の胴を挟み込んだ。金属の軋みじゃねえ。もっと嫌な、存在そのものが引き裂かれる音が鳴る。黒い胸部装甲が裂け、内側の核めいたものが一瞬だけ覗いた。

 

「見えた……!」

 

 だが、その核はすぐに黒煙で覆われた。

 厄災が咆哮し、全身から闇を噴き出す。切り裂かれた腕も翼も、霧みてえにほどけて再び形を取り戻す。再生。いや、それだけじゃない。傷口の中で何かが蠢いている。腕が戻るたび、翼が繋がるたび、その奥から別の顔、別の角、別の腕の輪郭が一瞬ずつ浮かび上がっては消えていく。

 

「こいつ……」

 

 俺は息を呑んだ。

 ただの再生じゃねえ。

 一体の中に、別の何かがいる。いや、最初から一つじゃなかったのか。

 

 厄災は距離を取った。

 黒翼を大きく広げ、巨大な影を地面へ落とす。その影の内側で、胸の核が脈動した。どくん、と。巨神の戦場全体にまで伝わるような脈動だ。黒い筋が全身へ走る。亀裂だ。いや、もっと根本から何かが割れ始めている。

 

「逃げる気か――いや、違う」

 

 テガソードオリジンを構え直す。

 嫌な予感がした。

 あれは後退じゃない。切り替えだ。

 

 厄災の胸が割れた。

 肩が割れる。

 翼が根元から引き裂かれ、そこから別の腕が、別の角が、別の貌が噴き出す。ひとつの魔神だった黒い巨体が、内側から複数の影に押し広げられていく。背中の翼が裂け、その一枚一枚が別個体の外装へ変わる。腕だったものが別の胴へ繋がり、胸の核から飛び散った黒い光が、それぞれ違う獣じみた輪郭を持った巨影へ収束していく。

 

 まるで、一体の中に押し込められていた災いの欠片が、とうとう一つの器に収まりきらなくなったみてえだった。

 

 そして、着地する。

 

 一体。

 二体。

 三体。

 さらに、もう一体。

 

 黒煙を払って立ち上がったのは、レクスを除く幹部たちの気配を宿した巨大な厄災の群れだった。

 一体は、立っているだけで腹の底を削るような飢えを撒き散らしている。

 一体は、山そのものが歩いているみてえな重量感で大地を沈ませる。

 一体は、周囲の空間を歪ませ、近くにいるだけで距離感覚が狂う。

 そしてもう一体は、獣じみた前傾姿勢のまま、今にも噛みついてきそうな殺意を剥き出しにしていた。

 

 最悪だ。

 普通なら、そう思う場面だろう。

 

 けど、俺の口元は勝手に吊り上がっていた。

 

「良いぜ、面白くなってきたじゃないか」

 

 テガソードオリジンがゆっくりと構える。

 背中の翼が大きく開き、赤金の巨躯が四方の敵を見渡すように僅かに腰を落とす。両腕の剣身が持ち上がり、さっきまでの一対一の構えとは違う、多対一を喰い破るための戦闘態勢へ変わっていく。

 

 一体を叩き潰せば終わりじゃないなら、全部狩ればいい。

 話はそれだけだ。

 

 黒い幹部厄災たちが、同時に吼えた。

 四方から殺意が立ち上る。

 だが、もう怯む理由はない。

 

 テガソードオリジンの金の眼が、鋭く光る。

 次の瞬間、巨大戦はさらに一段、苛烈さを増して爆ぜようとしていた。

 

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