ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
四体の厄災が、一斉に動いた。
正面から来る。
左右からも来る。
さらに頭上、死角。黒い影が重なり合って、空も地も全部まとめて噛み潰しに来るみてえだった。飢えを撒き散らす奴が口を開き、歪んだ法則を纏う奴が腕を振るい、重量そのものみてえな厄災が地面ごと押し潰し、獣じみた個体が一直線に喉元へ喰らいつこうと跳ぶ。
「来るか――!」
テガソードオリジンを捻る。
巨体が、信じられねえ軽さで半歩ずれる。背面の翼が左右で別々の角度を取り、片翼で浮きを、もう片翼で回り込みを作る。飢餓の爪が頬を掠める。続けて飛んできた黒い衝撃を、前腕の剣身で受け流し、そのまま腰を落として重量の突進を横へ逃がす。
遅れて、頭上から獣の一撃。
テガソードオリジンはそれすら見えていたみてえに、指由来の多関節機構で剣腕を返し、上へ撥ね上げる。火花。轟音。空中で態勢を崩した厄災が一度跳ねる。だが、そこへ踏み込もうとした瞬間、今度は法則を歪める個体が間合いそのものを狂わせてきた。
近いはずの敵が遠い。
遠いはずの爪が、もう目の前にある。
「っ、面倒くせぇな!」
テガソードオリジンは片翼を大きく広げ、もう片翼を絞る。
巨神が独楽みてえにその場で捻れた。回転に乗せた斬撃が二体をまとめて薙ぎ払う。黒い外殻が裂け、煙が噴く。けれど止まらねえ。残る二体がその煙の向こうから滑り込み、今度は四方を囲うように殺到する。
斬る。
躱す。
肘で打つ。
翼で体勢を変える。
掴んで投げる。
なのに、まだ足りねえ。
一体一体なら押し潰せる。
だが四体同時となると話が違う。こっちが一体へ踏み込むたび、残りの三体がその隙を喰いに来る。巨大戦らしい派手な殴り合いじゃない。もっと嫌らしい。群れた獣が、巨神の四肢へ順番に噛みついて削ってくるような戦い方だ。
重量型の厄災が肩口へ組みつき、飢餓の厄災が足元を抉り、獣の厄災が喉元を狙い、法則の厄災がその全部の角度を狂わせる。テガソードオリジンはそのたびに巨体を捻り、翼で浮き、剣腕を差し込み、どうにか致命を外し続ける。
だが、押され始めていた。
「ちっ、さすがに四体を一気には面倒だな」
舌打ちした、その瞬間だった。
「おいおい、俺様達を忘れるなよっと!」
横合いから、凄まじい砲撃音が戦場を割った。
背後から襲いかかってきた厄災の一体が、弾け飛ぶ。
黒い外殻が砕け、巨大な身体が横へ流される。その先にいたのは、白い気迫を纏ったグーデバーンだった。
両腕には、それぞれ別の巨武装。
右には陸王のレオンバスター50。
左には暴神のティラノハンマー50。
砲と槌。華やかさと暴力をそのまま両腕へ乗せたみてえな、無茶苦茶な構えだ。なのに、それがグーデバーンには妙に似合っていた。
さらに逆側から、甲高い駆動音が響く。
地面を抉りながら割り込んできたのはテガジューン。
胴体は鮮やかな緑へ変じ、両腕に装備された武装が左右でまるで違う貌を見せている。右腕には禽次郎のイーグルシューター50。左腕には角乃のユニコーンドリル50。片側は射突の鋭さを持つ長槍、片側は守りを崩しながら穿つ盾じみた回転武装。鳥の速さと一角獣の貫通力、その両方を備えた布陣だった。
グーデバーンが一体を押さえ、テガジューンがもう一体の進路を断つ。
四体の包囲が、そこで初めて崩れた。
「お前ら……!」
「礼ならあとで聞いてやるぜ!」
「今は前を見て。ここを押し返すわよ」
いいタイミングだ。
そう思った時点で、もう次にやることは決まっていた。
「お前ら、礼は言わねぇぞ」
吐き捨てながら、テガソードオリジンの腕を真っ直ぐ前へ構える。
右でも左でもない。中心。原初の刃としての軸線を、そのまま戦場の真ん中へ通す。
すると、空気が裂けた。
眼前の空間に、深海の咆哮みてえな重低音が満ちる。
青白い光の輪が幾重にも開き、その中心から新たなブースターユニットが姿を現した。オルカブースター。巨大な海獣の顎を思わせる流線形の増設装甲が、まっすぐテガソードオリジンへ飛来する。
来る。
胸部前面が開く。
肩装甲が左右へずれ、受け入れるためのラインが露出する。オルカブースターが中央へ噛み合う。金属音。いや、それよりもっと重い、神話の武具同士が一つへ組み上がる時の音だ。噛み合った瞬間、全身の赤がさらに濃く、深く染まっていく。
『切り込め! 一閃! アーカーツーキ! 切り込め! 一閃! アーカーツーキ! テガソードオリジンアカツキ!!』
音声が轟くたび、変形が始まる。
まず背面の翼が大きく展開し、そこから折り重なるように前方へ流れ込む。
羽根ではない。鎧だ。翼の意匠がそのまま武者の肩当てと背装へ変わり、巨神の輪郭が一気に鋭くなる。
次に胸部。
オルカブースターを核に、中央装甲が噛み合い、武者の胴丸めいた重厚な前立てが形成される。赤の上へ、さらに深紅。金の縁取りが走り、前面へ“戦うための顔”が生まれる。
腕部の剣身外装がスライドし、左右の前腕を覆う。
ただの剣腕じゃない。斬るための刃に、武者の籠手が重なる。防御と攻撃が同時に完成していく。指節の可動部すら鎧の継ぎ目へ収まり、無駄のねえ甲冑武者の腕になる。
腰部装甲が左右へ広がり、草摺のように垂れる。
下半身の輪郭が安定し、ただの巨神ではなく“地を踏みしめて斬る者”の重心へ変わる。重い。だが鈍くはない。武者として完成された重さだ。
最後に頭部。
兜のような増設装甲が、左右からせり上がる。
額の前立てが鋭く伸び、金の眼光がその奥で一段深く燃える。顔の印象そのものが変わる。原初の巨神から、戦場へ降臨した深紅の武者神へ。
「テガソードオリジンアカツキ!」
『降臨!!』
鳴り響く音声と共に、全身が深紅の武者となったテガソードが、戦場の真ん中で静かに立つ。
さっきまでの原初の巨神が“神話の始まり”なら、今の姿は“戦うために研ぎ澄まされた神話”だった。
深紅の装甲が血みてえに熱く見える。金の縁取りが刃のように鋭い。背の翼はもはやただの翼じゃない。大将旗めいた威圧を背負った、武者の後光だ。
四体の厄災が、わずかに身を引いた。
それだけで十分だった。今の俺の目には、あいつらの動揺がはっきり見えた。
俺は操縦席の中で、いや、テガソードオリジンアカツキの中心で、静かに息を吐く。
騒がしく暴れるのはここまででいい。次は斬る。
ゆっくりと、刀を構える。
深紅の武者神が、巨刀を正眼に据えた。
切っ先の先には、黒き厄災の群れ。