ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦   作:ボルメテウスさん

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紅の刃

 俺が刀を構えるのに合わせて、テガソードアカツキオリジンもまた、深紅の刀身を静かに持ち上げた。

 

 さっきまでの乱戦とは違う。

 今この瞬間、意識を向けるべき敵は二体だけだ。

 

 黒い瘴気を纏い、病そのものみてえな不快な圧を撒き散らすペスティス。

 もう一方は、長銃を抱えたまま隙なく立つベルムム。あいつは射線を作るのが上手い。しかもただ撃つだけじゃねえ。撃って、切って、相手の動きを縫い止めるタイプだ。

 

「ペスティスにベルムム。いざ、尋常に勝負ってか」

 

 吐き捨てた、その一言が合図だった。

 

 二体が同時に動く。

 

 先に来たのはベルムムだ。

 肩へ担ぐように構えた銃口が、次の瞬間にはもうこちらを捉えていた。黒い銃身の先に集束した光が、嫌な音を立てて弾ける。

 

 撃った。

 

 巨大戦の銃弾なんてもんじゃねえ。

 空間ごと抉り取るみてえな黒い弾丸が、一直線に飛んでくる。

 

 だが、遅い。

 

 テガソードアカツキオリジンの刀が閃く。

 深紅の刃が、ごく短い軌道で前へ出る。振り回したんじゃない。最小限だ。必要な分だけ斬る、武者の太刀筋だった。

 

 甲高い音が連続して鳴る。

 一発。

 二発。

 三発。

 飛来した弾丸が、正中で切り裂かれ、左右へほどけるように散った。

 

 そこへ、もうペスティスが来ていた。

 

 でかい。

 速い。

 腐食するような圧を纏った巨腕が、真正面から叩き潰しに来る。

 

「正面かよ……なら、受けてやる!」

 

 テガソードアカツキオリジンが、両手で刀を握り込む。

 刃を立てるんじゃない。受けるために、鍔元へ力を集中させる。深紅の武者神が真正面から踏み込み、振り下ろされたペスティスの一撃を、刀身で真正面から受け止めた。

 

 轟音。

 地面が陥没する。

 両者の足元から放射状に亀裂が走り、岩盤がめくれ上がる。

 

 重い。

 病と厄災そのものが押し潰そうとしてくるみてえな圧だ。だが、押し切られねえ。テガソードアカツキオリジンの両腕が、武者の籠手ごときしみを上げながらも、しっかりその一撃を支えている。

 

「っ……その程度で、倒せるかよ!」

 

 刀を軸にして、全身で押し返す。

 肩が前へ出る。腰が沈む。脚が地を抉る。巨神の身体全体がひとつの押し込みになって、ペスティスの巨腕を逆に弾き返した。

 

 だが、その後ろ。

 もうベルムムが銃を構え直している。

 

「チッ、やっぱりそう来るか!」

 

 連続射撃。

 今度は一発二発じゃない。扇状に広がる弾幕が、押し返した直後の隙へ流れ込んでくる。

 

 なら、先に射線を踏み潰す。

 

 地面を蹴る。

 テガソードアカツキオリジンの巨体が、信じられねえ勢いで跳んだ。翼が一気に開き、上昇ではなく“跳躍を延長するため”の角度で風を噛む。深紅の武者神が弾幕の上を飛び越え、そのままベルムムの頭上へ迫る。

 

 ベルムムが即座に反応する。

 銃口を引き戻し、今度は銃身に備わった刃を叩き落とすように振り下ろしてきた。速い。判断がいい。射撃から近接への切り替えに一切の迷いがねえ。

 

 だが――

 

「見えてるぜ!」

 

 叫ぶと同時に、テガソードアカツキオリジンの右腕が開いた。

 

 籠手の内側へ折り畳まれていた剣が、瞬時に展開される。

 右腕の脇から滑るように飛び出したその刃が、振り下ろされたベルムムの銃剣を受け、外へ逸らした。真正面でぶつけるんじゃない。芯をずらして流す。武者の殺陣だ。最小限の力で、最大限に軌道を殺す。

 

 その瞬間には、もう左手が動いている。

 

 握っていた刀を、そのまま後方へ投げる。

 投げる先は、押し返された直後に体勢を立て直そうとしていたペスティスだ。

 

 深紅の刀が一直線に飛ぶ。

 空気を裂き、瘴気を割り、ペスティスの胴へ深々と突き刺さった。

 

「っ!」

 

 ペスティスが遅れて反応する。

 遅い。

 もう遅い。

 

 巨体が仰け反る。

 突き刺さった刀はそのまま背中側まで抜け、地面へ食い込み、ペスティスの身体を串刺しにして縫い止めた。膝をつく。倒れる。大地へ沈む。だが、それだけじゃ終わらないのも分かってる。

 

 倒れちゃいねえ。

 あれはまだ生きてる。

 なら、次だ。

 

 俺の意識は、すでにベルムムへ戻っていた。

 

「こいつも使ってみるか!」

 

『ルパンレンジャー』

 

 音声が鳴る。

 空間の奥で、紫がかった残光が弾ける。そこから現れたのは、巨大な怪盗のロボ――ルパンレックスの幻影だった。

 

 幻影は、一瞬だけ戦場へ重なる。

 その姿が手にした剣だけを現実へ置いていくみてえに、光の中から一本の刃が飛び出した。

 

 深紅の武者神がそれを掴む。

 ベルムムが盾を構える。

 だが、間に合わねえ。

 

 ルパンの剣が奔る。

 一閃。

 ベルムムの盾が根元から切り払われる。

 防御を奪われた、その一瞬の硬直へ、テガソードアカツキオリジンは踏み込んでいた。

 

 斬る。

 返す。

 もう一度斬る。

 

 超高速だった。

 ただ速いだけじゃない。軌道が細い。無駄がない。武者の太刀筋へ怪盗の鋭さが重なって、深紅の巨体が線になって見える。ベルムムの胴、肩、腕、脚へ次々と赤い線が走る。遅れて、黒い外殻が弾ける。

 

 ベルムムがたまらず後退する。

 だが、その退きへ、今度は別の熱が重なった。

 

『ゴーオンジャー』

 

 燃え上がる。

 炎神大将軍の幻影が、テガソードアカツキオリジンの背後へ重なる。轟音。爆炎。熱量そのものが剣へ圧縮されていく。手にした刃が、見る間に巨大化した。炎を纏った大剣となって、深紅の武者神の両腕へ乗る。

 

「炎神剣・轟音紅蓮斬り!」

 

 振り下ろす。

 

 上段から、真っ直ぐ。

 潔いほど真っ直ぐな斬撃だった。

 だからこそ、重い。

 だからこそ、逃げられねえ。

 

 ベルムムが残った銃で受けようとする。

 だが、炎を纏った巨刃はその防御ごと叩き割った。銃が砕ける。腕が裂ける。胴が割れる。

 

 真っ二つ。

 

 斬撃が地面まで届き、大地を縦に断つ。

 割れたベルムムの両断面から炎が吹き上がり、そのまま内部から爆ぜた。

 

 完全撃破。

 そこまで確認してる暇も惜しい。次だ。

 

 俺は即座に向きを変える。

 まだ終わってねえ。ペスティスがいる。串刺しにして動きを止めても、あいつは死んでない。だったら、完全に斬るまでだ。

 

 テガソードアカツキオリジンが地を蹴る。

 倒れ込んだままのペスティスが、ようやくこちらへ気付いたらしい。胴を貫いた刀をそのままに、無理やり片腕を持ち上げる。

 

 次の瞬間、無数のエネルギー弾が放たれた。

 

 数が多い。

 空を埋める。

 しかも一発一発が瘴気を纏っていて、まともに喰らえばそれだけで巨神の装甲すら削り取られそうな色をしていた。

 

「なら、まとめて叩き割る!」

 

『キョウリュウジャー』

 

 音声と同時に、テガソードアカツキオリジンの手にブーメランが現れる。

 竜の牙みてえに鋭く湾曲したそれを、俺は迷わず投げた。

 

 回る。

 唸る。

 飛んでくるエネルギー弾の群れへ、真っ向から食い込む。

 

 一発、二発、三発。

 いや、それどころじゃない。放たれたブーメランは回転しながら弾幕そのものを切り裂き、黒い光弾を次々と割り続けた。爆ぜる。裂ける。散る。空中に火花と黒煙が連続して咲く。

 

 その中央を、テガソードアカツキオリジンは突っ切った。

 

 気付けば、もう目の前だ。

 ペスティスの胴へ突き刺さったままの刀が見える。

 

 テガソードアカツキオリジンがその柄を掴む。

 一息に、引き抜く。

 

 黒い体液と瘴気が噴く。

 ペスティスが絶叫する。

 だが、その声すらもう遅い。

 

 深紅の武者神が、刀を構えた。

 剣先が空へ円を描く。

 満月。

 巨大な満月の軌跡が、夜空へくっきりと刻まれる。

 

「テガソード・危羅吠スラッシュ」

 

 振り抜く。

 

 一刀。

 ただの一刀だった。

 だが、その一刀の中に、ここまで積み重ねた加速も、変形も、巨神の力も、武者の殺陣も、全部が詰まっていた。

 

 月の円弧が、そのままペスティスの巨体を横へ走る。

 斬れた、と認識するより早く、胴がずれた。

 

 上半身と下半身が、綺麗に泣き別れになる。

 

 遅れて、爆発。

 ペスティスの巨体が地面へ崩れ落ち、そのまま内側から弾け飛んだ。黒煙が夜空へ噴き上がり、巨大な残骸が火球となって散る。

 

 ベルムムに続いて、ペスティスも沈んだ。

 

 深紅の武者神が、静かに刀を返す。

 まだ終わりじゃない。だが、確実に数は減った。

 

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