ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
テガソードアイスバーンの巨腕が、真っ直ぐビダルへ振り下ろされる。
迷いはない。
ただ真正面から叩き潰すためだけの一撃だった。
ビダルは、巨大化してなお異様な筋肉の鎧を誇っていた。
体格そのものが暴力だ。膨れ上がった筋肉と、飢餓の力で強化された外殻が、普通の斬撃や打撃なら受け止めてしまうだけの厚みを持っている。だが――今の相手は普通じゃない。
アイスバーンの腕が叩きつけられた瞬間、
ビダルの両腕が防御へ回る。
受ける。
だが、受け切れない。
筋肉質な硬い装甲が、最初の接触だけでひしゃげた。
白と赤黒の巨腕に宿る質量と神格が、ビダルの防御ごとまとめて押し潰す。衝撃は一点で終わらない。接触面から全身へ走り、肩、胸、膝と順に軋ませる。ビダルの巨体がたまらず後ろへ滑る。足元の岩盤が削れ、巨大な爪痕を二本、地面へ刻みながら押し込まれていく。
「ぐ、ぉっ……!」
いい気味だ。
そのまま押し切れれば楽だったが、ビダルも厄災だ。ただ殴られて終わるような相手じゃない。押し負けながらも、こっちの腕に食らいつくように踏ん張り、隙を見て反撃に転じる気配を見せている。
そこで、真白が笑った。
操縦席越しでも分かる。あいつは今、完全に面白がっている。
「さて、折角だから、この力も使ってみるか」
嫌な予感しかしない物言いだ。
けど、今はその悪乗りが頼もしい。
『デカレンジャー』
音声が鳴る。
それと同時に、アイスバーンの両腕へ別の重さが重なった。
ブラストバギー。
その力が腕部ユニットへ転写される。両前腕の外装がスライドし、砲門めいた意匠が露出する。白と赤黒の巨腕の先端へ、警察戦隊らしい制圧の理屈が組み込まれる。
真白が即座に両腕を構えた。
そこに一拍の溜めもない。撃てると判断した瞬間、もう撃っている。
嵐。
そう呼ぶしかなかった。
両手の先端から吐き出された弾丸は、もはや点の射撃じゃない。線だ。面だ。巨大戦の空間を一気に塗り潰すほどの弾幕が、まとめてビダルへ叩きつけられる。
一発一発が岩を砕く威力を持ちながら、それが雨どころか濁流みてえな密度で降り注ぐ。ビダルの肩が弾け、胸が抉れ、腕が何度も跳ね上がる。飢餓の厄災が、初めて明確に“押し返される側”へ回った。
たまらず後ろへ下がるビダル。
その動きを見ながら、俺はすぐ横の真白へ怒鳴る。
「お前だけで動かすなよ!」
やりたい放題やるのはいい。
けど今の巨神は一人で動かしてるわけじゃない。こっちにも掴みたいタイミングがある。
「なら、お前も働け、二代目」
「言われなくても!」
『キュウレンジャー』
次に響いた音声は、空気そのものを震わせた。
その直後、背後で獣の咆哮が重なる。
ケルベリオス。
その幻影が、アイスバーンの背後へ巨大な獣星のごとく重なった。三つ首の咆哮が、炎、雷、氷という三属性の力へ変換される。アイスバーンの全身を巡っていた冷気と破滅の熱が、その咆哮に呼応するように色を変えた。
右側から炎。
左側から雷。
正面から氷。
三つの属性攻撃が、砲撃でも斬撃でもない獣の吐息みてえな勢いで放たれる。
炎がビダルの回避先を焼き、雷が動きを痺れさせ、氷が足元と関節を凍らせる。三属性が順番じゃない。同時だ。どれか一つへ対応した瞬間、別の二つが喰らいつく。
「ほぅ、破壊神の力を選ぶとはな、二代目」
真白が面白そうに言う。
知ってる奴の余裕だ。こっちは知らねえ。
「俺はその辺は知らないんだよ。とっと決めるぞ」
「ふっ、そうだな」
だったら最後の一押しだ。
ここで止める。
飢餓の厄災なんぞ、今この場で粉々に砕く。
『アバレンジャー』
音が変わる。
獰猛で、爆発的で、理屈より先に突っ込むための音だ。
次の瞬間、巨大な影が下からせり上がった。
ベアックマだ。
だが、ただのベアックマじゃない。
アバレンジャーの力を受けたその巨体へ、キラーアバレンオーの幻影が重なっている。獣の荒々しさと暴竜の凶暴さが一つへ噛み合い、地面を砕いて現れた巨大ベアックマが、そのままテガソードアイスバーンを背へ乗せる。
「熊手! 決めるクマ!」
「あぁ、合わせろよ、二代目!」
「お前達が合わせろ!」
言い返しながらも、もう動きは一つになっていた。
巨大ベアックマが前へ出る。
テガソードアイスバーンの全身へ、赤黒と白の神格がさらに凝縮される。両腕のレオンバスター50とティラノハンマー50が咆哮するように震え、その先端へ全エネルギーが収束していく。
アバレンジャー由来の暴走寸前の突破力。
デカレンジャーの制圧力。
キュウレンジャーの破壊神めいた三属性。
それら全部を纏ったまま、真っ直ぐとビダルへ突っ込む。
ビダルが迎え撃とうと腕を広げる。
だが、もう遅い。
炎で退路は焼かれ、雷で動きは鈍り、氷で足場は奪われている。そこへ、暴竜のような突進と神格の質量が重なってくる。
「「テガソード・ハートブレイカー!!」」
俺と真白の声が完全に重なった。
前へ。
さらに前へ。
突っ切る。
その瞬間、アイスバーンとベアックマの前面に、巨大なエネルギーの塊が生まれた。
ただの光じゃない。
心臓を握り潰すような圧。
破壊するだけじゃなく、敵の中核そのものを砕いて終わらせるための一撃。
まさに、ハートブレイカーの名にふさわしいエネルギーの奔流だった。
それが、ビダルへ突っ込む。
正面からぶつかった瞬間、
飢餓の厄災の巨体がくの字に折れた。
「が……っ!」
耐えようとする。
筋肉が膨れ、外殻が軋み、全身から黒い瘴気が噴き出す。
だが、耐えられない。
押し止めるどころか、その巨体の中心が先に悲鳴を上げた。胸が裂ける。肩が崩れる。腹が抉れ、背中から黒い爆炎が吹き上がる。
「終わりだ、ビダル!」
最後に、テガソードアイスバーンの両腕が押し込まれる。
レオンバスター50の圧。
ティラノハンマー50の破砕。
そしてベアックマの全身を使った突進力。
それら全部が一点へまとまって、ビダルの核を真正面から砕いた。
ビダルは、その衝撃に耐え切れなかった。
爆発。
飢餓の黒煙が夜空へ噴き上がる。
巨体が内側から裂け、何層にも重なっていた外殻が光と炎の中で弾け飛ぶ。最後に、飢餓そのものを象ったみてえな影が一瞬だけ空へ浮かび、それもすぐに砕けて散った。
これで、ビダルは終わりだ。
巨大な爆炎の向こうで、俺はようやく息を吐いた。