ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
テガジューンは、白い尾を引くような速度で戦場を駆けていた。
正面へ出る。
右へ滑る。
背を折り、翼を絞り、次の瞬間にはもう別の角度から斬り込んでいる。あの機体の良さは、力任せの押し込みじゃない。王の気品をそのまま刃へ変えたみたいな、無駄のない機動だ。巨大戦のはずなのに、ひどく鋭い。ひどく静かで、それでいて容赦がない。
だが、眼前の敵もまた、ただの力押しではなかった。
「こいつは、まさか……」
テガジューンの前に立っていた幹部級の厄災――パラドクス。
その容姿は、ただ不気味なだけではない。どこか、見覚えのある“悪”の意匠を無理やり寄せ集めて、なお一つの顔へしてしまったみたいな異様さがあった。特に、その頭部から漂う圧は、かつて秘密戦隊ゴレンジャーが戦った黒十字総統を思わせる。仮面、外套、闇の王を気取るような立ち姿。その全部が、歴代の悪の象徴を継ぎ接ぎして生まれた存在だと告げていた。
次の瞬間、その意味がはっきりする。
「っ」
パラドクスの右腕が伸びる。
いや、腕だったものが変質する。刃になる。鞭になる。砲口になる。歴代悪の組織が使ってきた殺意を、理屈も脈絡もなく繋ぎ合わせたみたいに、攻撃の形そのものが一瞬ごとに変わっていく。
火が走る。
毒々しい霧が弾ける。
巨大な鎌の軌道を描いたかと思えば、次の瞬間には光線の束が空間を裂く。
変幻自在。
そうとしか言いようがなかった。
スーパー戦隊がこれまで戦ってきた、歴代の悪の組織の怨念。
それが集合した存在だとしたら、攻撃の中身が定まらないのも当然だ。
どれか一つの攻略法では足りない。
悪意そのものが、数十年分まとめて襲いかかってきている。
だがテガジューンは、その攻撃の一つ一つを見切るように避けていた。
腰をひねる。
翼を返す。
細い体躯を最大限に活かし、巨大戦とは思えねえ程の軽やかさで死線の隙間を縫っていく。
鞭のような一撃を紙一重でかわし、返す刃で砲口を断つ。
背後から追ってきた黒い手を翻って外し、そのまま蹴りで距離を取る。
空から落ちてきた巨大な杭を斜めに滑って抜けると、真横からパラドクスの首元へ細い斬撃を走らせる。
「だがっ、負ける訳にはいかん!」
その叫びは、ただの意地じゃなかった。
テガジューンの中で、何かがはっきり形を持って燃えていた。
かつて自分が生み出したファイヤキャンドル。
その存在が、ゴジュウウルフである吠と真正面からぶつかり、決闘の果てに手を結んだこと。
自分が生み出し、利用し、傷つけてきたものたちが、戦いの果てに別の未来を掴み始めたこと。
そして今、自分の息子と呼べるグーデバーンが、敵ではなく同じ戦場で戦っていること。
テガジューンは、それを見た。
ずっと支配する側にいた女王が、ようやく守るべきものの形を知ってしまった。
だからこそ、ここでは退けない。
「アーイーやノーワンも我が生み出した子達……その命を諦めはしない、絶対に……!」
言い切る。
その瞬間、テガジューンの斬撃が一段鋭くなる。
ただ敵を切るためじゃない。命を奪うためでもない。救うために戦う刃へ変わっていく。
しかし、パラドクスはそこで止まらない。
その全身が、黒い怨念の集合体であることを思い出したみたいに膨れ上がる。
肩口から無数の腕が生える。
胸部が裂け、その中で悪意の核が脈打つ。
背には黒十字の紋様にも似た巨大な影が広がり、そこから放たれた一撃が一直線にテガジューンへ迫った。
それは、これまでの攻撃とは格が違った。
避けるための余地がない。
受ければ、致命傷になる。
巨大戦のただ一発で、機体の中枢ごと持っていかれると分かるほどの殺意だった。
けれど。
「はぁっ!」
「っ」
横から割り込んだ影が、その一撃を受け止める。
白、赤黒、冷気、神格。
全部を纏って現れたのは、二体の巨神が一つになった合体機。
テガソード・アイスバーン。
その巨大な腕が、パラドクスの必殺級の一撃を真正面から止めていた。
衝撃が走る。
地面が割れる。
けれど、アイスバーンは退かない。
「テガソード、グーデバーンっ」
テガジューンの声に、ほんの僅かに安堵が混じる。
だが、すぐにそれは戦場の緊張へ戻っていく。
「まだ、戦いは終わっていない。そうだろ、テガジューン」
アイスバーンの中から響く声。
二人の意志が噛み合った、低く重い声だった。
「えぇ」
短く返したその声に、もう迷いはない。
テガジューンはすでに立ち上がっている。
守るべきもののために退かないと決めた女王は、もう先程までの孤独な巨神ではなかった。
なら次にやるべきことは、一つしかない。
「では、やるぞ、究極・ゴットネス合体!」
宣言と共に、空気そのものが変わった。
まずアイスバーンが分離する。
白と赤黒の巨神から、テガソードとグーデバーンの二つの機影がほどけるように離れる。だが、それは元へ戻るための分離じゃない。もっと大きな形へ進むための前段階だ。
テガソードが中央へ。
その姿勢が変わる。
胸部が開き、腰部が固定され、全身の重心が“核”としての位置へ移る。まるで最初から中心になるために作られていたように、赤金の巨体が巨大な胴体の基礎へ変わっていく。
次にテガジューン。
左右へ開いた翼が折り畳まれ、優美な装甲が鋭い接続フレームへ組み替わる。その姿は左右の腕部へ変わるため、細く、速く、そして長く展開していく。女王の刃だったテガジューンの機動性が、そのまま新たな巨神の両腕へ宿る。
最後にグーデバーン。
赤黒く染まった破滅の王子の力を抱えたまま、その巨体が下半身へ再構成される。両脚となるために装甲が厚みを増し、重心が低く落ちる。荒々しさと推進力を兼ねた脚部へ変わり、神の巨人を立たせるための土台が完成していく。
三体の各部が、空中で交差する。
噛み合う。
固定される。
神格と神格が衝突し、火花ではなく光そのものが辺りへ弾ける。白、赤、金、赤黒。四つの色が一瞬だけ拮抗し、それから一気に一つの輪郭へ収束した。
胴体はテガソード。
腕はテガジューン。
脚はグーデバーン。
そこへ、それぞれの意匠が重なっていく。
テガソードの神威。
テガジューンの気品。
グーデバーンの獰猛さ。
全部が、バラバラのままではなく、家族みたいに噛み合って一つの姿を形作る。
「テガソード・ファミリー!」
生まれた。
三体のロボットが合わさって誕生したのは、
これまでのどの形態とも違う、
だが確かに“テガソード”と呼ぶべき巨大なる姿だった。
中心には神たる威容がある。
両腕には女王の鋭さがある。
脚には王子の猛りがある。
それらが全部揃って、初めて完成する巨神。
家族。
その名にふさわしい、三つの意志が繋がった形だった。
パラドクスが一歩退いた。
歴代悪の怨念を束ねた存在ですら、その新たな姿に警戒を見せる。
それだけで十分だ。
まだ戦いは終わらない。
だが、この戦場に今、新しい答えが立った。