ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦   作:ボルメテウスさん

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交差する先

 テガソード・ファミリーとパラドクスの戦いは、最初の激突からして重さが違った。

 

 拳と刃がぶつかるたびに、空気が鳴る。

 ただの衝撃音じゃない。何十年分もの悪意と、何十年分もの戦いの記憶が、正面から軋み合っているような音だ。テガソードの胴が前へ出る。テガジューンの両腕が左右から斬り込み、グーデバーンの脚が大地を抉る。三体が一つになったことで生まれたその巨神は、ひとつの完成された神話みてえに、無駄なく前へ進んでいた。

 

 だがパラドクスも、ただ押されるだけの相手じゃない。

 あいつの全身は、歴代悪の組織が残した怨念の集合体だ。肩が裂ければ別の腕が現れ、外殻が砕ければその裏からまた別の貌が覗く。受けるたび、削られるたび、違う悪意が浮かび上がってくる。ひとつの身体なのに、一体じゃない。何体もの“悪の記憶”が、あの巨体の中でまだ蠢いている。

 

 テガソード・ファミリーが右腕を振り上げる。

 そこへパラドクスが横から絡みつくように黒い腕を伸ばしてくる。受ける。押し返す。返す刃が相手の肩を割る。だがその裂け目から、今度は別の組織を思わせる毒々しい砲門がせり上がってきた。

 

「っ、切り替えが早ぇな……!」

 

 厄介だが、押せないわけじゃない。

 問題は、こいつを完全に潰すには、ただの力押しじゃ足りねえことだ。構成している怨念のひとつひとつを、逃がさずまとめて叩き潰さないと終わらない。だったら、やることは決まってる。

 

「まずは吹き飛ばす!」

 

 俺が叫ぶのと同時に、テガソード・ファミリーの前身に火花が走った。胸部装甲の継ぎ目が開き、そこへ内蔵されていた砲門がせり出す。さらに左右の腕にも重なるように射撃ユニットが展開し、巨神の正面が一瞬で要塞じみた火力の塊へ変わる。

 

 発射。

 

 轟音が、世界を揺らした。

 

 巨大な弾丸の雨。

 いや、あれはもう“雨”なんて可愛いもんじゃない。重砲の嵐だ。前身から吐き出された膨大な火線が、まとめてパラドクスを叩きつける。黒い外殻が弾け、怨念の煙が四散する。両肩が後ろへ持っていかれ、巨体ごと何歩も吹き飛ぶ。地面を削りながら退いていくパラドクスの足元から、黒い火花と石の破片が噴き上がった。

 

「まだだ!」

 

 ここからだ。

 押し込むだけじゃ足りねえ。吹き飛ばした先へ、息をつかせる間もなく叩き込む。

 

『ゴーバスターズ!』

 

 音声が鳴った瞬間、テガソード・ファミリーの両腕と両脚に新たな力が走る。背後で、ロケットドリルゴーバスターオーの幻影が巨神の輪郭へ重なった。腕部には噴射口が開き、脚部には巨大なドリルが展開される。重厚な巨神のシルエットへ、特命戦隊の攻撃的な機動がそのまま食い込む。

 

「行くぞッ!」

 

 両腕のロケットが噴いた。

 テガソード・ファミリーの巨体が、一気に加速する。吹き飛ばされたパラドクスが体勢を立て直す、そのわずかな時間をすら許さない。巨神が巨神の間合いを、信じられねえ速さで食い潰していく。

 

 正面衝突の寸前、テガソード・ファミリーは跳んだ。

 ロケットの推進力で一度浮き上がり、その勢いのまま両脚の巨大ドリルを叩き込む。一本じゃない。左右同時だ。ドリルがパラドクスの胴と肩へ食い込み、硬い外殻をごっそり抉り飛ばしていく。怨念で寄せ集められた身体のパーツが、耐え切れずに吹き飛ぶ。腕の一部、肩の装甲、翼めいた背部の突起。悪意の断片が、削り取られた肉片みてえに四方へ散った。

 

 パラドクスが吼える。

 黒煙を吐き出しながら両腕を振るう。だが、ドリルの破壊力は止まらない。追撃に入ろうとしたその時、次に欲しいのは突進力じゃないと分かった。

 

 こいつは散らばったままでは終わらねえ。

 戦場そのものを制圧して、逃げ場ごと叩き潰す必要がある。

 

『トッキュウジャー!』

 

 音声が鳴る。

 その瞬間、巨大な列車の気配が戦場へ走った。

 

 トッキュウオーキョウリュウジンfeat.デンライナーの幻影が、テガソード・ファミリーへ重なっていく。背後の空間へ光の軌道が引かれ、そのラインの上を巨大な列車たちが現れた。四両のデンライナー。二両のゼロライナー。どれもただの列車じゃない。質量と速度そのものが武器になった神話の車列だ。

 

「轢き潰せ!」

 

 六両が、一斉に走る。

 轟音。

 地面が割れる。

 巨神の戦場へ、鉄の咆哮が真っ直ぐ突き刺さる。

 

 先頭のデンライナーがパラドクスの脇腹を貫くように通過し、その車体が触れた軌道から巨大な斬撃が走る。続く車両が逆側から肩口を裂き、さらにゼロライナーが背中を縦に切り開く。ただ突撃してるだけじゃない。通り過ぎるたび、列車の軌跡そのものが斬撃へ変わり、パラドクスの身体へ何本もの巨大な裂傷を刻んでいく。

 

 六両が戦場を横断し終えた時、パラドクスの巨体はもう“ひとつの形”を保てなくなっていた。

 胸が割れる。

 肩が崩れる。

 頭部を構成していた怨念の塊が、一度外へ吹き出してまた戻ろうとする。まだ再編成する気か。なら、その前に止める。

 

『ニンニンジャー!』

 

 テガソード・ファミリーの背後へ、シュリケンジントライドロンの幻影が重なる。

 空気が切り替わる。さっきまでの重戦車みてえな圧じゃない。もっと変則的で、もっと忍び寄るような殺意だ。

 

 次の瞬間、五色のタイヤ型エネルギーが射出された。

 

 赤。青。黄。緑。白。

 五つの輪が回転しながらパラドクスへ飛び、四肢と胴体、さらに再生しかけた頭部周辺へ食らいつく。輪はただ張り付くんじゃない。高速回転しながらその場で怨念の流れを縫い止める。動けば動くほど食い込み、逃げようとすれば逆に締め上がる。

 

 パラドクスが初めて、本格的に動きを止められた。

 

 そこへ、手裏剣が降る。

 

 連射。

 連射。

 さらに連射。

 

 テガソード・ファミリーの前身各部から撃ち出された巨大手裏剣の嵐が、固定されたパラドクスの全身へ突き刺さる。外殻を削り、内部の怨念塊を抉り、再生のために蠢く悪意の流れを寸断していく。忍びの技でありながら、その規模は完全に巨大戦だ。止めて、削って、逃げ場をなくす。その役目としてはこれ以上なく正しい。

 

 もう十分だ。

 これ以上は要らねえ。

 あとは、まとめて焼き尽くす。

 

「いくぞ!」

 

 俺が叫ぶ。

 同時に、内部で響く三つの意志が揃う。テガソード。テガジューン。グーデバーン。別々の過去と立場を持った三体が、今はひとつの名前で前を向いている。

 

「「「テガソード! ファミリーバースト!!!」」」

 

 その叫びと共に、テガソード・ファミリーの前身が開いた。

 

 胸部中枢が輝く。

 両腕のテガジューン要素が左右へ展開し、発射姿勢を作る。

 脚部のグーデバーン由来パーツが地面へ食い込み、巨神の姿勢を完全に固定する。

 そこへ、三体分の神格と意志が圧縮される。

 

 次の瞬間、無数のビームが放たれた。

 

 一本じゃない。

 十本でも足りない。

 巨神の前身から、腕から、肩から、各部の発光ラインから、数え切れねえほどの光条が一斉に奔る。歴代悪の怨念を束ねたパラドクスへ向けて、今度は歴代戦隊ロボの系譜を受け継いだ巨神の光が、正面から叩き込まれる。

 

 パラドクスが叫ぶ。

 その全身から、黒十字総統めいた顔、別の悪の組織の紋章、怨嗟の手、獣じみた影、あらゆる“悪の残骸”が吹き上がる。

 だが、逃げられない。

 五色の輪が縛っている。

 手裏剣が突き刺さっている。

 そして何より、ファミリーバーストの奔流が全部まとめて飲み込んでいく。

 

 悪意が焼ける。

 怨念が砕ける。

 歴代悪の残滓が、光の中で一つずつ消えていく。

 

 やがて、最後に残った黒い核が耐え切れずに割れた。

 

 爆発。

 

 戦場全体が白く塗り潰される。

 轟音が遅れて追いつく。

 大気が震え、掘削場の壁面が次々と崩れ落ちる。巨大な爆煙が立ち上がり、さっきまでそこにいたパラドクスの気配を、跡形もなく吹き飛ばした。

 

 静かになる。

 

 いや、本当は静かじゃない。

 まだ崩れる音も、焼ける音も、遠くの地割れの音も続いている。けど、さっきまで戦場を満たしていた“敵の気配”だけが消えたせいで、妙に静かに感じる。

 

「……終わった、のか」

 

 思わず呟く。

 全部倒した。

 レクスも、幹部も、パラドクスも。

 今度こそ、全部。

 

 そう思った、その時だった。

 

 違和感。

 足元の感触が妙だ。勝利の余韻に浸るには、地面の沈み方が変すぎる。掘削場の中央、ファミリーバーストが直撃したはずの場所から、まだ微かに風が吹き上がっている。

 

「待て……なんだ、あれ」

 

 煙が流れる。

 その下に見えたものへ、俺は息を呑んだ。

 

 穴だ。

 

 ただのクレーターじゃない。

 もっと深い。もっと暗い。

 爆発で抉れたというより、最初からそこに“口”があって、上を塞いでいたものが剥がれ落ちたみてえな穴だった。縁は滑らかじゃない。焼け、砕け、そしてその奥へ向かって何層にも削り取られている。底は見えない。覗き込めば見込むほど、光が吸われていく。

 

「こんな深さ……まさか」

 

 喉がひりつく。

 これは地表で終わる話じゃない。

 今の戦いで、俺たちは何かを“止めた”んじゃなく、“開けた”のかもしれない。

 

 穴の奥から、鈍い脈動が伝わってくる。

 どくん。

 どくん。

 まるで地球そのものが、底の方でまだ何かを抱えて鼓動してるみてえだった。

 

「地球の奥に、まだ何かあるのかよ……」

 

 答えはない。

 だが、その沈黙が一番嫌だった。

 

 全部倒したはずなのに、終わった感じがしない。

 むしろ今の一戦でようやく、本当の危機の入口が見えた気さえした。

 

 テガソード・ファミリーの巨体が、穴の縁へ立つ。

 光がそこへ吸い込まれていく。

 そして俺は、ようやく理解する。

 

 地上の厄災は潰した。

 けど、本当に危ないものは――

 まだ、その下にいる。

 

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