ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
地球の真ん中。
そこは、世界の心臓というより、世界がまだ傷を隠し切れていない生身の断面みてえな場所だった。周囲を取り囲むのは、ひび割れ、焼け、脈打つように赤黒く染まった岩石ばかり。天も地もない。あるのは、圧倒的な深度と、底でなお蠢く破滅の気配だけだった。
その中心で、厄災は巨大な煙の身体を広げていた。
霧じゃない。雲でもない。もっと粘ついていて、もっと悪意に満ちている。煙のように形を失ったかと思えば、次の瞬間には巨腕となり、槍となり、牙となり、波となって襲いかかってくる。定まった姿を持たないからこそ、攻撃もまた変幻自在。今この瞬間、目の前にある形を信じた途端、その先から別の凶器が生えてくる。
だが、こっちだって一人じゃない。
リョウテガソード・シンフォギア。
俺が握るのは、テガソードだけじゃない。装者たちの力を宿した武器群、その全部だ。響の黄、翼の青、クリスの赤、マリアの銀、切歌の緑、調の桃。その光が、今やこの巨神の各部へ宿っている。
「来いよ、厄災。今度こそ、地球の真ん中で終わらせる」
煙の魔神が咆哮した。
それを合図に、戦いが始まる。
最初に動いたのは、レオンバスター50だった。
右腕へ組み込まれたその砲身へ、イチイバルの赤い光が宿る。単なる銃火器の発射じゃない。雪音クリスの重火力の理屈が、そのまま巨大戦の武装へ落とし込まれていく。砲口の周囲へ赤い魔法陣めいたラインが幾重にも走り、圧縮された光が一気に膨れ上がる。次の瞬間、放たれたのは“弾丸の嵐”としか言いようのない飽和攻撃だった。一本ごとが大岩を粉砕できる威力を持ちながら、それが雨よりも濃密に、暴風よりも速く厄災へ叩きつけられる。煙の身体が弾け、穴が開き、黒い瘴気が散る。だが散った先へさらに次弾が重なる。回避しても逃がさない。拡散しても貫く。イチイバルの本質は、敵へ“防ぐ”という発想そのものを許さない物量だ。レオンバスター50はその性質を受け継ぎ、今や巨大戦場そのものを制圧する雨と化していた。赤い弾幕が地球の中心を塗り潰し、煙の厄災の輪郭を強引に削り取っていく。
だが厄災も黙っていない。
弾丸に削られた煙の身体が、一瞬で別の形へ変わる。巨大な盾となり、触腕となり、無数の刃となって、弾幕の隙間を縫うようにこっちへ伸びてくる。そこで次に前へ出るのは、左腕のティラノハンマー50だ。
ハンマーの口部が開く。
その内側に、天羽々斬の青い輝きが満ちていく。翼の剣技は、ただ斬るのではなく、戦場そのものへ一筋の正しさを通すような鋭さを持っている。その力を受けたティラノハンマー50は、鈍器の貌をしたまま、内側で“刀”へ変わっていく。開いた口から吐き出されるのは、巨大な光の刃。刃は一枚ではない。重なり合った青の斬撃が、まるで鯉口を切った名刀の残光みてえに次々と生まれ、前方を薙ぎ払う。煙でできた盾を、触腕を、波のように押し寄せる黒い質量ごと、一太刀の理屈で断ち切っていく。切られた断面はなめらかで、あまりにも綺麗すぎるせいで、一拍遅れてから巨体が崩れ落ちる。ティラノハンマー50が今この瞬間に振るっているのは、殴るための力じゃない。天羽々斬の“切り開く剣”としての本質だ。巨大な光刃が、地球の中心を横断するように奔り、厄災の煙の層をまとめて裂いていく。
裂かれた煙は、そのまま逃げるように上空へ散った。
だが散ったなら、今度は逃がさない。追うのはイーグルシューター50だ。
その弓身へ、シュルシャガナの力が宿る。
月読調の静かで冷たい戦意は、巨大戦においてもやはり“精密な断裂”として現れた。イーグルシューター50が引き絞られるたび、矢の代わりに生成されるのは風を纏った丸鋸状の光刃だ。一本一本がただの矢じゃない。高速回転しながら空間そのものを切り裂く円環であり、その周囲へ発生する風圧がさらに軌道を加速させる。放たれた丸鋸の矢は、逃げ散る煙の厄災を追尾するように曲がり、縦に、横に、斜めに、何本もの裂け目を刻み込む。巨体へ撃ち込まれた丸鋸は、そのまま内部で暴れ回り、煙をかき混ぜ、再生のために集まろうとする流れそのものを乱していく。静かに見えるのに容赦がない。淡々としているのに、傷跡だけはえげつない。それがシュルシャガナの戦い方だ。イーグルシューター50はその性質を最大限に引き出し、風を纏った鋸の矢で厄災の巨体を細かく、確実に削っていく。
厄災はさらに姿を変えた。
煙を凝縮し、今度は一本の巨大な尖塔みてえな槍を形成してこっちへ突き出してくる。受ければ貫かれる。かわしても背後の岩盤ごと地球の奥まで穿たれかねない。そこで前へ出るのは、ユニコーンドリル50だ。
先端のドリルへ、イガリマの緑が走る。
切歌の力は、ただ鋭いだけじゃない。何かを“喰い破る”勢いを持っている。その勢いがドリルへ宿ると、元から巨大だった回転刃は、さらに細く、さらに危険な形へ変わっていく。外周の刃が何重にも展開し、回転速度は目で追えねえ程まで上がる。突き出された煙の槍へ向けて、ユニコーンドリル50が真正面からぶつかる。普通なら拮抗する。だが、イガリマの力を得た今のドリルは違う。接触した瞬間から“削る”ではなく“抉じ開ける”。煙と瘴気と怨念で構成された槍の中へ無理やり道を穿ち、そのまま内部構造ごと食い破って前進していく。一本の槍だったものが中から裂け、左右へ弾ける。さらにそのまま厄災の本体へ潜り込み、巨体の中心を貫通する。イガリマの持つ突破力は、巨大戦ではこう使うべきだと分かるほど、凶悪で真っ直ぐな貫通だった。
それでも、まだ終わらない。
煙の身体はしぶとい。巨大な穴を開けられてもなお、周囲の岩盤から黒い瘴気を吸い上げて再生しようとする。地球の中心という舞台が、あいつにとって回復装置みてえになってやがる。だったら、その再生の芯ごと焼くしかない。
そこで、銀の相棒が咆哮した。
ベアックマだ。
普段の愛嬌なんか欠片もない。
今のベアックマは、獣の顔をした砲門そのものだった。口腔部へ銀の光が集まり、その周囲へ白い神格の残光と赤黒い破滅の火が渦を巻く。見てるだけで分かる。あれは、撃たれたらただでは済まない。次の瞬間、ベアックマの口から放たれたのは、一本の巨大なレーザーだった。太い。速い。真っ直ぐだ。地球の中心をそのまま貫くためだけに作られたような銀の奔流が、厄災の胴体を真正面から撃ち抜く。煙の巨体がのけぞり、中心に開いた穴から黒い瘴気が一気に噴き出す。だがレーザーは止まらない。貫通した先の岩盤まで溶かしながら、厄災の胴体を前後から抉り抜く。再生しようと集まりかけた煙すら、その白銀の光に焼かれてまとまることができない。ベアックマの一撃は、今この場にある全ての“逃げ道”を許さない芯の通った砲撃だった。
ここまで削れば、もう十分だ。
切り裂き、撃ち抜き、貫き、叩き込み、再生の余地も奪った。
なら、あとは終わらせるだけだ。
「皆、力を貸せ!」
呼びかけに応じるように、各武装が震える。
黄、赤、青、桃、緑、銀。
それぞれに宿ったシンフォギアの色が、武装の内部を逆流するように輝き始める。レオンバスター50へ圧縮された赤の火線。ティラノハンマー50へ満ちる青の斬光。イーグルシューター50へ集束する桃と風の円環。ユニコーンドリル50へ収束する緑の貫通力。ベアックマの口腔へ満ちる銀の砲撃光。そして、その全てを握るリョウテガソードそのものへ、中心としての黄が宿る。
エネルギーが集まる。
武装ひとつひとつの先端から、光が流れ出す。
それらが空中で束ねられ、形を作る。
巨大なリョウテガソード。
武器状態そのものを模した、光の剣だ。
それは、ただ明るいだけのエフェクトじゃない。
存在感がある。重さがある。見る者の心を圧する“究極の斬撃”としての輪郭を持っていた。武装群へ蓄えられた全エネルギーを一つの剣へ集約し、それを両手で握るためだけに、リョウテガソード・シンフォギアの全身が姿勢を整える。
俺は、両手で構える。
巨神もまた、同じようにその光剣を握る。
振り下ろす前の静けさが、地球の中心に落ちる。
「これで終わりだ――!」
大きく、振り抜く。
刃が走る。
音より速く。
光より深く。
巨大なリョウテガソード型のエネルギーが、そのまま一筋の断層となって厄災へ叩き込まれる。横でも縦でもない。世界そのものへ線を引き直すみてえな、究極の斬撃だった。煙の巨体が、抵抗する暇もなく真っ二つになる。切断面から黒い瘴気が噴き上がるが、それすら断層の光が飲み込んでいく。再生の流れも、怨念の芯も、地球と繋がる根も、その一太刀の前では意味を持たない。
「テガソード・シンフォギア・ソードエンド――!!」
振り切った瞬間、
斬られた世界の方が遅れて悲鳴を上げた。
厄災は、そのまま一刀両断の形で崩れた。
中心核が割れ、煙の巨体が左右へ滑り、次の瞬間には眩い爆光の中へ消えていく。
地球の真ん中に、ようやく静寂が戻った。