ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦   作:ボルメテウスさん

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今回で、『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦』は無事に終了しました。連載当初は、ゴジュウジャーで最期のスーパー戦隊になるとは思いませんでした。それでも、ここまで連載して分かった事としてはやはりスーパー戦隊は素晴らしいという事でした。
そして、自分なりに表現出来る所まで書く事が出来、その舞台となったシンフォギアが好きな部分を改めて知る事が出来ました。
シンフォギアには、まだ映画が何時、公開するのか分かりませんが、それでも新作を待っています。


吠の願い

 願いが叶う瞬間ってのは、もっとこう、神々しくて、重くて、見てるだけで息を呑むようなもんなんだと思ってた。

 

 少なくとも、その場にいた連中は全員そう思ってたはずだ。

 何せ俺は、指輪争奪戦をもう一度勝ち抜いて、ナンバーワンの座を掴んだんだ。

 願いを叶える権利を手にした。

 だったら、世界を変えるとか、過去をどうするとか、誰かを救うとか、そういう大層な願いが出てくると思うのが普通だろ。

 

 だからこそだ。

 

 目の前に現れたもんを見て、最初に固まったのが俺以外の全員だったのは、まあ当然だった。

 

「……は?」

 

 最初に声を漏らしたのはクリスだった。

 そりゃそうだ。

 だって光の中から現れたのは、宝でも、剣でも、奇跡でも、世界を揺らす何かでもなかった。

 

 山ほどのおにぎりだ。

 

 本当に山ほど、である。

 小さく盛ったとかそういう話じゃねえ。

 白くて、つやつやしてて、しかも湯気までちゃんと立ってるおにぎりが、文字通りうず高く積み上がっていた。

 鮭っぽいのも見える。梅もある。昆布もありそうだし、たらこ、明太子、ツナマヨ、なんか色々混ざってる。

 量もおかしい。

 どう見ても、十人や二十人で食い切る前提じゃない。

 けど、その“どう見てもおかしい量”が、逆に俺にはたまらなくよかった。

 

 陸王が、額に手を当てて吹き出した。

 

「いや、予想の斜め上すぎるでしょ。優勝して願ったのがこれ?」

 

 禽次郎は目を丸くしたあと、すぐ笑い出した。

 

「ははは! いいねえ、こういうの! めちゃくちゃ景気いいじゃん!」

 

 角乃は、おにぎりの山と俺の顔を見比べて、深く深くため息をついた。

 

「ほんっと、あんたらしいわね……」

 

 響はしばらくぱちぱち瞬いてた。

 それから妙に感心したような顔で言いやがる。

 

「すごい……! 本当におにぎりが山盛りだ……!」

 

「そこ、感動するとこかよ」

 

 翼が即座に突っ込む。

 けど、その翼だってだいぶ混乱してる。そりゃそうだ。

 

「何でも願える立場に立っておいて……おにぎり、だと……?」

 

「えっと、その……すごく平和ではあるよね」

 

 未来が困ったように笑う。

 マリアも微妙な顔で肩をすくめた。

 

「平和すぎて、逆にコメントに困るわね……」

 

 調は何も言わずに、おにぎりの山をじっと見ていた。

 切歌はもう目を輝かせてる。

 

「ちょ、ちょっと待つデス。これ、全部食べていいんデスか?」

 

「そこ行くの早ぇな」

 

 クリスが呆れてる。

 でもこいつも、さっきから鮭っぽい色のやつに視線が何回か吸われてるのが丸分かりだった。

 

 んで、一番深刻そうな顔してたのが竜儀だ。

 

 こいつは本当に、神前で何かとんでもねえもん見せられた信者みたいな顔で、おにぎりの山を見上げていた。

 

「せっかくのテガソード様の願いを……勿体無い……」

 

「いやさか〜、そこまで言う?」

 

 陸王が笑う。

 でも竜儀は本気だった。こいつはいつだって本気だ。

 

「本気だ。もっと他にあっただろう。テガソード様の御力をもってすれば、もっと尊き――」

 

「お前、うるせえな」

 

 俺はやっと口を開いた。

 全員の視線が集まる。

 別に悪いことしたつもりはこれっぽっちもねえ。

 むしろ、なんでそこまで騒がれるのか分からなかったくらいだ。

 

 俺は手近なおにぎりをひとつ掴んで、ぐっと持ち上げる。

 

「一度こういう贅沢してみたかったんだよなぁ」

 

 一瞬、場が静かになった。

 それから、響が最初に吹き出した。

 

「吠君、それが理由!?」

 

「理由っつーか、ちゃんと考えた結果だぞ」

 

「考えた結果が山盛りおにぎり?」

 

「そうだけど?」

 

 俺が真顔で返すと、未来が口元を押さえて笑う。

 

「でも、ちょっと分かるかも。そういう願い、吠君っぽい」

 

「だろ?」

 

「だろ、じゃない!」

 

 翼がたまらず声を上げた。

 でも俺は全然堪えてねえ。

 

「何でも願えるからって、何でもかんでも重くしなきゃいけねえわけじゃねえだろ。今はこういうのがよかったんだよ」

 

 そう言うと、真白が少し離れたとこから鼻を鳴らした。

 腕を組んで、相変わらず偉そうな顔をしてやがる。

 

「願いとしては小さいが、悪くはない。神の奇跡を飯に使う度胸は嫌いではないぞ」

 

「褒めてんのか、それ」

 

「半分はな」

 

 ベアックマはその足元で頷いた。

 

「おにぎりは大事クマ」

 

「そこは全面肯定なんだな」

 

 クリスが呆れる。

 けど、その時だった。

 

 禽次郎が、近くのおにぎりをひょいと持ち上げた。

 

「……で、これ何の具?」

 

 その一言で空気が変わった。

 

 切歌が即座に反応する。

 

「確かに気になるデス!」

 

 調も静かに別のおにぎりを手に取る。

 

「見た感じ、種類はかなりある」

 

 響はもう嬉しそうに身を乗り出していた。

 

「え、じゃあ選び放題ってこと!?」

 

「そこまで来ると逆に迷うわね」

 

 マリアが言う。

 角乃は腕を組んだまま、おにぎりの山を眺めてる。

 

「こういう時、結局王道が強いのよ。鮭か梅でしょ」

 

「は? 何言ってんだよ。こういうのはツナマヨだろ」

 

 クリスが即座に噛みついた。

 翼が眉をひそめる。

 

「何故そうなる。おにぎりは梅が最も無駄がなく、米との調和も――」

 

「始まったな、防人理論」

 

 陸王が笑う。

 未来は少し迷ったあと、控えめに手を挙げた。

 

「私は梅、かな。ずっと食べても飽きないし」

 

「いやいや、鮭だよ!」

 

 響が元気よく言い切る。

 

「やっぱり鮭は強いって! おにぎりって感じがするし!」

 

「“おにぎりって感じ”って何だよ」

 

 俺は笑う。

 でも自分でもひとつ持ってるあたり、もう完全にこの流れに乗ってた。

 

 竜儀が、ここで急に厳かな顔になった。

 

「待て。具だけで語るのは早計だ」

 

「何だよ、また」

 

「おにぎりとは具だけではない。米の炊き具合、塩加減、海苔の湿り気、握りの強弱、その全てが揃ってこそ――」

 

「めんどくせえな!」

 

 俺とクリスがほぼ同時に突っ込んだ。

 禽次郎はその横で一人盛り上がってる。

 

「いやいや、変わり種も強いって! 明太マヨとか、焼き肉とか、攻めたやつもあるじゃん!」

 

「攻めた具って何デスか。おにぎりに攻めも守りもないデス」

 

 切歌が言いながら、どう見ても変わり種寄りの具を探してる。

 調はその隣で、静かに昆布を見つけていた。

 

「私は昆布」

 

「地味デス!」

 

「地味じゃない。完成度が高い」

 

「その言い方、調らしいなあ」

 

 マリアが笑う。

 陸王は、すでにいくつか確保しながら肩をすくめた。

 

「僕は何でも美味しく食べる派だけど、一番って言われたら鮭かな」

 

「お、分かってる!」

 

 響がすぐ乗る。

 すると翼が少し不服そうに言った。

 

「鮭が強いのは認める。だが梅の洗練は侮れない」

 

「何でそんなに梅へ武士みたいな評価してるのよ」

 

 マリアが呆れる。

 真白はそこで妙に偉そうに頷いた。

 

「塩気の利いた鮭は確かに王道だ。だが、梅の格も捨て難い」

 

「熊手さん、意外と普通デスね」

 

「何だと思っていた」

 

「蜂蜜入りとか言い出すかと」

 

「馬鹿にしているな?」

 

 ベアックマがすかさず入る。

 

「蜂蜜は別で食べるクマ」

 

「そこは譲らねえのか」

 

 未来が笑う。

 その笑いにつられて、場が一気に軽くなる。

 

 けど、議論そのものはどんどん熱くなっていった。

 

「ちょっと待て、ツナマヨは認めるけど“ナンバーワン”かって言われると違うだろ」

 

「はあ!? 何でだよ! あれが一番バランスいいんだって!」

 

「わたしはたらこも捨てがたいデス!」

 

「切歌ちゃん、それちょっと分かる」

 

「マリアさんは分かってくれるデスね!」

 

「いや、明太子系は確かに強いわよ」

 

「だから変わり種に寄りすぎだって言ってるだろ!」

 

「変わり種じゃないデス!」

 

「いや、鮭と梅の前では十分変わり種だろ」

 

「何でお前が鮭派に回ってんだよ、吠!」

 

「うるせえ、俺は腹に溜まって美味けりゃ何でも強ぇ派だ!」

 

「雑すぎる!」

 

 クリスが叫ぶ。

 響が笑う。

 未来が困ったように、でも楽しそうに皆を見てる。

 角乃は頭を抱えながらも、自分の分はしっかり確保してる。

 竜儀はなぜか“握りの精神性”まで語り始めようとしていて、止める奴がいねえ。

 真白は上から総評する気満々だし、ベアックマはもういくつか食ってる。

 

 俺は、その真ん中で妙に満足していた。

 

 世界の命運を懸けた戦いは終わった。

 厄災も、争いも、死ぬか生きるかの緊張も、今はここにはない。

 なのに、いや、だからこそか。

 こんなどうでもいいことで本気になれる。

 

 願いを使って出したのがおにぎりの山でよかった。

 少なくとも、今この瞬間は本気でそう思えた。

 

「よし」

 

 俺はおにぎりをひとつ掲げた。

 

「だったら決めるか。おにぎりの具、ナンバーワンを」

 

 その一言で、全員の目の色が変わった。

 

「受けて立つデス!」

 

「いいわ。私も負ける気はない」

 

「面白いじゃん」

 

「望むところだ」

 

「何故こんなことで皆そこまで本気になれるのだ……」

 

「翼さんもさっきから梅で本気じゃないですか」

 

「うるせえ、ルール決めるぞ!」

 

 俺が言い放つと、場がさらに騒がしくなる。

 その顔は、多分俺自身でも分かるくらい笑っていた。

 

 大きな戦いは終わった。

 でも、こういう小さな戦いは終わらねえ。

 そして多分、そういうのがあるから日常ってやつは面白い。




 指輪争奪戦、その終幕。
 ナンバーワンの座を掴んだ遠野吠は、気がつけば見知らぬ世界へと立っていた。

 目の前に広がるのは、自分の知る街並みによく似ていて、けれど決定的に何かが違う世界。
 その違和感に戸惑う吠が、最初に叩きつけられた現実。
 それは――歌が禁じられた世界。

 さらに、その世界で戦っていたのは、スーパー戦隊ではない。
 異なる力。
 異なる歴史。
 異なる英雄。
 仮面ライダー。

 そして今、その仮面ライダー達の力を宿した者達――
 **『ユニバースライダー』**による、新たな争奪戦が幕を開けようとしていた。

 幽霊。
 歌。
 ライダー。
 交錯する異形の戦い。
 そのただ中へ、はぐれ者の遠野吠は再び投げ込まれる。

 見知らぬルール。
 見知らぬ敵。
 見知らぬ世界。
 それでも、吠は止まらない。

「この世界では、俺ははぐれ1匹。だったら、なってやるよ――この世界でもナンバーワンを!」

 戦隊の次は、ライダー。
 新たな世界で始まる、もう一つの頂上決戦。

『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦 4月13日 19時 連載開始予定。同時刻にて、新たな募集も開始予定』
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