ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
「なぜ……?」
角乃は息も絶え絶えに問いかけた。シンフォギアを纏ったマリアが、ガリュードの放った紫電を受け止めたのだ。その背中が大きく見えた。
「私も……かつては妹を守れなかった」
マリアの声は静かだが、その奥には深い傷痕が見えるようだった。
「大切な存在を失う恐怖は……よくわかる」
その言葉に、角乃は息を呑んだ。マリアの瞳に映るものは、紛れもない本物の痛みだった。偽りのない感情が、彼女の決意を物語っている。
「だからこそ……」
マリアはゆっくりと振り返り、双子の陰夢と瑚陽を見据えた。その視線は厳しくも温かい。
「あなたたちも、本当にこれでいいの?」
「……何を言っているんですか」
陰夢が警戒心を露わにする。しかし、その声には微かな揺らぎがあった。
「戦いを……やめないのですか」
マリアの問いかけは優しく、しかし鋭く胸に刺さる。瑚陽が一瞬動きを止め、姉の顔を見た。
その目に迷いの色が浮かんでいる。
「あなた達が、何を願い、戦っているのかは知らない。けれど戦う事しか、その願いは叶えられないの」
陰夢が静かに口を開いた。その声には抑えきれない激情が滲んでいた。
「私は……姉を守りたいだけなんです。姉の才能を……夢を……奪った奴らが許せない」
「私は……」
瑚陽が俯いたまま拳を握りしめる。
「私は……ただ純粋に戦いたかっただけだ。だが、ある派閥が私の成績に嫉妬してデマを流した。私はそのせいで選手としての資格を剥奪された。あの屈辱は……忘れられない」
彼女の声は震えていた。過去の傷が生々しく蘇っているのがわかる。
「だからこそ、私達は力が必要だった。このテガソードで願いを叶えれば……すべてを取り戻せると思ったんだ」
角乃は息を呑んだ。双子の口から語られたのは、あまりにも残酷な現実だった。才能が嫉妬と悪意に踏みにじられ、希望が絶望に変わった瞬間。それは、かつての自分が妹を守るために必死に藻掻いていた頃の姿と重なった。
(同じだ……この子たちも……)
マリアの顔が厳しさを増す。しかし、その瞳には憐れみではなく、ある種の覚悟が宿っていた。
「そうか……だから戦っていたのね」
彼女はゆっくりと頷いた。
「けれど……それは本当に正しい道なの?」
マリアの声は鋭く響いた。
「あなたたちは戦っている。でも、戦うべき相手から逃げているんじゃない?」
「逃げてなどいない!」
瑚陽が反射的に叫ぶ。しかしマリアは揺るがない。
「いいえ、逃げている。あなたたちが倒すべき相手は……テガソードを持っている指輪の戦士たちじゃない。あなたたちを傷つけた世界そのもの……その歪んだ社会や人間の悪意だ」
「!」
双子の顔から血の気が引いた。
「確かにこの指輪があれば願いは叶うかもしれない。でも……それで本当に救われるの?その歪んだ世界は何も変わらない。あなたたちが倒すべき本当の敵は……そこにいるんでしょう?」
マリアの指が陰夢と瑚陽の胸を指した。
「このまま戦い続ければ……いつかまた同じことが起きる。そして今度こそ、大切なものを本当に失うことになるかもしれない」
その言葉は重く鋭く二人の心を抉った。瑚陽の拳がさらに強く握りしめられる。陰夢はただ俯き、唇を噛みしめている。その横顔に、深い葛藤が浮かんでいた。
「……なら……どうすればいいんだ」
瑚陽が絞り出すような声で呟いた。
「どうすれば……この怒りを……屈辱を晴らせるんだ」
「戦うなら……」
マリアの声が力強くなる。
「その歪んだ世界と……戦いなさい。テガソードの力で願いを叶えるだけでなく……その力を、本当に守りたいもののために使いなさい」
彼女の目は真剣そのものだった。
「そして……もし戦う道を選ぶのなら」
マリアは毅然と胸を張った。
「その時は……私が力を貸す。かつて同じように大切な妹を守れなかった……この私が」
その宣言に、角乃は息を呑んだ。マリアの言葉には嘘偽りのない覚悟が満ちていた。言葉だけで戦場を凍りつかせたその力に、角乃は驚愕する。
「マリア……」
角乃が呼びかけようとしたその時。
陰夢がゆっくりと顔を上げた。その目には涙が光っていた。
「本当に……私たちを助けてくれるのですか?」
「ええ」
マリアが頷く。
「私も……あなたたちと同じように、大切な存在を守れなかった過去がある。だからこそ……もう二度と同じ過ちは繰り返したくない」
瑚陽もまた、苦悩に満ちた表情でマリアを見つめた。その目には迷いと、わずかな希望が宿っているように見えた。
「私達の……本当の敵……」
その時だった。
「ククッ……面白いねぇ」
ガリュードの歪んだ嗤い声が沈黙を破った。
陰夢と瑚陽がハッと我に返り、警戒して身構える。
「感動的な演説だねえ。でもさ……」
ガリュードの目が狂気に染まり始める。
「そんな綺麗事……通用すると思ってるの?」
彼のテガジューンが鈍く光った。
「お前たちが本当に戦うべき相手は……そんな生ぬるいものじゃない」
ガリュードの口元が醜く吊り上がる。
「真の絶望を……教えてあげるよ」
彼の指がテガジューンのトリガーにかかる。その瞬間。
「瑚陽っ!」
陰夢が叫んだ。
「え……?」
瑚陽が振り返った。
陰夢は咄嗟に瑚陽を突き飛ばした。
次の瞬間――。
ドンッ!
ガリュードのテガジューンから放たれた紫電が一直線に飛翔し、陰夢の胸を貫いた。
「ッ……!!」
陰夢の体が衝撃で宙を舞い、地面に叩きつけられる。
「姉さんっ!!!」
瑚陽の悲鳴が戦場に響き渡った。彼女の顔からは血の気が引き、目は信じられないものを見るように見開かれている。
陰夢は血を吐きながらもがく。装甲が紫電によって溶解し、その下の生身の肌が露出している。傷口からは黒い煙が立ち昇り、苦痛に顔を歪めていた。
「姉さんっ!姉さんっ!」
瑚陽が必死に駆け寄ろうとするが、ガリュードが立ち塞がった。
「ククク……」
彼の嗤い声が不気味に響く。
「ああ……やっぱり」
ガリュードがテガジューンをくるりと回しながら、恍惚とした表情を浮かべる。
「人間って……こういう時が一番いい顔するんだよねえ」
その瞳には純粋な悪意だけが燃えていた。
「ガリュードおおおおっ!!」
角乃が咆哮し、ディーマグナムを構えて突進した。しかし――。
「おっと」
ガリュードは軽々とそれを避けると、陰夢に銃口を向ける。
「動くなよ?大切な姉さんがどうなってもいいのかい?」
角乃の動きが止まる。歯軋りする音が聞こえた。
マリアもまた、怒りに拳を震わせる。だがガリュードの狂気に満ちた笑みの前では、下手に動けない。
「さあて……続きを始めようか?」
ガリュードがテガジューンを構え直す。
「まずは……姉さんを目の前で失う恐怖を味わってもらおうかな?」
彼の指がトリガーにかかった。
「瑚陽っ!!」
陰夢が必死に叫ぶ。その目は恐怖と絶望に染まっていた。
「ガリュードおおおおおっ!!」
それと同時に、彼女のセンタイリングから紫色の光が灯る。