「――1000年に渡り数多伝説を築いた暴虐の竜、黒き
そんな声が壇上から耳に届いて、浮ついた意識が現実に戻ってきた。
入学式だ。
今まで見たどんな建物よりも天井が高いホールの中、壇上に立った金髪の
「死体が発見されたのは、『悪魔』を崇拝する異端なる教会の残骸の中とのこと。
ヴァルニールは生き残っていた竜の中で最も強く、そして最も随意の竜。それが翼も収まりきらぬだろう異端の協会跡地にて没したとなれば、考えられるのは悪魔によって殺されたか、もしくは悪魔に従わされていたか……。
どちらにせよ、ヴァルニールは殺されました。最強の不死たる竜種が、卑劣なる悪魔に弑されたのです。それは何故か。
それは、ヴァルニールがその力をただ暴虐のみに用いる、全てを敵とする孤高なる暴竜だったからに他ならないと私は確信しております。
いかに不死とて、孤立することは悪魔に付け入られる隙となる。数多の伝説を築いてきたかの竜は、その死を以て我々に大きな教訓を残してくれました……『不死』であることに驕ることなく、隣人を尊重し協調せよ、と」
よく響く声だった。
一度も詰まらずすらすらと続く言葉は、代表挨拶と言うより演説に近い。聞き心地の良い美声と格式ばった口調も相まって、よりその印象を加速させる。
おれの隣で同じように
そんな、多種多様な何百という目に注目されながら、金髪金角の美しき竜人は実に堂々と言葉を続ける。
「――『悪魔』。神の敵であり、生きとし生ける命全ての敵。
この場に知らぬ者は居ないでしょうが、改めて語らせて頂きます。
彼等は神話の時代より生きる不滅の存在であり、何度肉体を殺したとしても蘇り、再び生者に牙を剥く。正に神の理を冒涜する災害です。
襲い来る悪魔から英雄が街を護っても、その英雄が没した後に再臨した悪魔が再び攻め入り街を滅ぼした、という事例を私は数多く聞き及んでいます。その例が証明しているでしょう……たとえどれだけ強くとも、定命の種である限り、悪魔から人々を、世界を護り続けることはできない。
故に。我等『不死種』の先人たちは、信仰と平和のため、立ち上がることを決意したのです」
言って、竜人は衆目のなか手を広げた。
両の壁際に立つ不死種の先人――200年前に不死学園を興した不死種にして今も現役の教師陣たちを示したのだろうその動きは、より竜人自身に衆目を惹きつけただけのように思う。
それを自覚しているのかいないのか。金の角を揺らし、金の翼と尾を身振り手振りの中に加えながらの演説に、徐々に力が入っていく。
「悪魔が不滅であるならば、不老の存在がその復活を見張ればいい。
悪魔が蘇ってくるのなら、不死の者達がその相手をするのは道理。
その志を同じくするからこそ……そして、ヴァルニールの二の舞とならぬよう手を取り合い助け合うためにこそ、皆様はここに集われたのでしょう」
そうして……ばっ、と音が鳴るほどの勢いで、竜人は左右の腕を上げた。今度は壁際ではなく、眼前に並んだ聴衆たる不死たちを示すために。
「――世界中からここに集まった『不老種』、永遠の寿命を持つ者たちよ! そして『不死種』、死なぬ体を持つ者たちよ!
我等、天上の神に選ばれし『不死』なれば! この学び舎、偉大なる先人たちが興した『モルターリブス不死学園』に入学を許された栄誉を胸に!
共に学び、共に励み――共に、世界を護る不滅の盾と成りましょう!!」
わっと歓声が上がった。
竜人は、名をリュリーシア・クリサフェイノス・ドラウレウスと言った。
新入生代表にして既に『終の竜刻』という二つ名を与えられた、黄金竜・無欠なるテュルヴォルンと『竜の巫女』の間に生まれた
第16期新入生、99人の不死の頂点であると学園に判定された(不死の中では)若き俊英。
そんな彼女による新入生代表挨拶に沸く不死種だらけの空間にて、おれはひとり内心で呟く。
「(……おれ、『人間種』なんだけど)」
おれの名前はラスレイ。
世に溢れる最も平凡な種、100年も生きられない定命の存在として生まれた――本来なら不死学園に入学することなどできないはずの、新入生のうちでたったひとりの