キズナまるっと!THEプリキュア   作:MOZO

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第1話 燃えろ、プリキュア魂! キュアリンク爆誕ッ‼
Chapter 1


 

 ━━プリキュア。伝説の戦士と呼ばれる少女たちは、数多ある世界と同じ数だけ存在する。

 彼女たちは巨悪から各々の世界を守るべく、力を合わせて苦難に立ち向かい、時には時空を越えて強い絆を結び、平和のために戦う希望の象徴となっていた。

 しかし、世界を輝かしい光で照らせば、闇もまたその深淵を濃くしていく。

 かつて、キュアブラックとキュアホワイトの活躍により倒された『ドツクゾーン』の支配者・ジャアクキング。その僅かに残留した因子を核に同じくプリキュアたちによって敗れ散っていった敵の怨念が融合し、邪悪の権化が誕生した。

 名を━━ヴィランキング。

 彼は、自らを頂点とした悪の王国『ヴィランキングダム』を率いて胸中に宿る復讐心を晴らすべく全世界へ総攻撃を開始。天空は黒い雷雲に閉ざされ、地上はあらゆる災禍に見舞われた。まるで、怒り狂う魔王の激情そのもののように。

 この絶望的な状況下においても、プリキュアたちは決して諦めようとはしなかった。降り掛かる災いや差し向けられた怪物から世界と人々を救うため彼女たちは戦い続けた。

 

 そして今、諸悪の根源であるヴィランキングとの最終決戦を向かえようとしていた。

 

 * * *

 

 直接対決となる舞台は、草木が生えず泉も枯れ果て、生気を失った大地が延々と広がっていた。

 そこへ『ふたりはプリキュア』から『わんだふるぷりきゅあ!』まで総勢82人のプリキュアが一同に集結し、緊迫感の中で(きた)る開戦に備えていた。

 

「ヴィランキング! アンタの悪事も今日が年貢の納め時よ。とっととお家に帰りなさい!」

 

 キュアブラックが静寂を破り、未だ姿を見せぬ仇敵に対して一声を投げ掛けた。

 直後、大地を低い地響きが鳴り始めたと思えば、稲妻状の亀裂が発生する。

 奈落まで続くような深い亀裂から巨大な右手が伸び、長く鋭い鉤爪(かぎづめ)の五指を地表に突き立てる。次いで巨大な黒い影が山の如くヌーっと盛り上がる。

 頭部には悪魔を思わせる上向きに湾曲した四本の角、赤く爛々(らんらん)と灯る両目は幾つもの目が寄せ集まったかのような複眼、鋭い牙が乱雑に並ぶ口、漆黒の岩塊(がんかい)で作り上げた体躯、それを支える極太の脚が大地を踏み締める。

 世界を恐怖と破滅の淵に陥れた魔王が顕現するのだった。

 

「待ちわびたぞ。()の怨敵、憎っくきプリキュアよ。この日この時を(もっ)て積年の恨みと無念を晴らし、すべての世界諸ともお前たちが築き上げた歴史に終止符を打ってやろう!」

 

 眼下の少女たちをヴィランキングは敵意に溢れた瞳で睨み下ろし、憎悪を込めた声を響かせる。

 

「そんなことはさせない。あなたの憎しみの力がどんなに強くても、わたしたちは絶対に負けない!」

 

「そうです。わたしたちがいる限り世界もプリキュアの歴史も消させたりなんかさせません!」

 

 仰ぎ見るほどの巨体を誇るヴィランキングを前に、キュアラブリーとキュアスカイは臆することなく反論した。他のプリキュアたちも誰一人引き下がる者はいなかった。

 伝説の戦士と最悪の魔王が対峙する中、上空に神々しい虹色に煌めく発光体が現れ、それは少女の姿へと変わっていく。

 神秘的な翡翠色の瞳と、(なび)くプラチナブロンドのウェーブヘア、頭上にはクラウン型の光輪が浮かび、金糸の刺繍とパール状の装飾が施された光沢感のある純白のワンピースドレスを(まと)い、背中からは黄金に輝く翼が生え、その身は光の膜を帯びていた。

 その少女は(さなが)ら、天使を彷彿(ほうふつ)とさせる風貌であった。

 

「やはり来たか。キュアユニヴェール」

 

 少女の登場にヴィランキングは更に恨めしそうな形相となる。

 キュアユニヴェール。すべてのプリキュアたちの絆と心が一つとなった時、次元を超越する究極のプリキュアが誕生したのだ。

 

「誰かが涙を流す時、優しく悲しみを癒し、誰かが怯えている時、そっと寄り添い、誰かが絶望している時、手を取り希望を与える。そして、世界を悪しき存在から希望の光と絆の力で戦い守る。それがわたしたちプリキュアの存在理由」

 

 ユニヴェールの麗しく通った声がプリキュアたちに一層気力を(みなぎ)らせる。

 

「ここで憎しみの連鎖を断ち切り、あなたが創り出す絶望の運命を変えてみせる!」

 

御託(ごたく)はそこまでだ! お前たちを完膚なきまでに叩き潰し、希望の光やら絆の力など、一つ残らず消し去ってくれるわ!」

 

 ヴィランキングの怒号がビリビリと大気を震わせ、自身が優勢であることを固持していた。

 

「みんな、これが最後よ。みんなが守りたいかけがえのないもののために、必ず勝ってすべての世界を救いましょう!」

 

 ユニヴェールの呼び掛けの下、「おぉー!」という力強い掛け声と共にプリキュア全員の団結が確固たるものとなった。そして━━。

 

「行くわよ!」

 

 号令に合わせてプリキュアたちは一斉に突撃していく。対して、ヴィランキングも巨大な左足を踏み出し進撃を開始。最後の戦いの火蓋が切られた。

 

 ヴィランキングは地上のプリキュアたちを一気に叩き潰そうと左手を振り下ろす。隕石のような掌が地面を(えぐ)る間際、プリキュアたちは瞬時に回避。キュアブラックを始めとする大多数はヴィランキングに向かって跳躍。または、彼の腕を駆け登り接近。胴体を狙った殴打による総攻撃の威力でヴィランキングの体は大きく仰け反った。

 しかし、透かさずヴィランキングは左腕で振り払い、空中のブラックたちを風圧によって吹き飛ばした。間髪入れず地上に残ったチームに向け右手を(かざ)すと、掌から紫色の稲妻を無数に放射。直撃する寸前、キュアワンダフルやキュアグレースらがシールドを展開してこれを防いだ。

 反撃とばかりに滞空していたチームから光線が放たれ、ヴィランキングの周囲を色とりどりの閃光が瞬いた。されど、彼も体中の突起から稲妻を放ち迎撃する。そこへユニヴェールが追い討ちに光の球を幾つも出現させて発射。ヴィランキングの全身に着弾炸裂し、彼の体が僅かによろめいた。

 ここぞと、先ほど吹き飛ばされたブラックたちが左脚の関節に打撃を与え、バランスを崩したヴィランキングは初めて膝を地に着けた。

 劣勢になるも、猛攻を止めようしないヴィランキングは右手を振り上げ叩き付けようとする。それをキュアスカイが率いるチームがパンチを繰り出し集中攻撃。双方譲らない力比べの末、ヴィランキングの右手に亀裂が生じ、瓦礫(がれき)となって砕け散った。

 確実にダメージが通っている。すべてに(けり)を付けるべく、プリキュアたちは再び結集し、大技に打って出る。

 

『エキストリーム・ルミナリオ!』

 

 シャイニールミナスの【ハーティエルバトン】から放出された光の本流を受けたブラックとホワイトが虹色のハート型のエネルギー体より金色の光を発射。

 

『プリキュア・イノセントプリフィケーション!』

 

 ラブリー、プリンセス、ハニー、フォーチュンの四人がイノセントフォームとなり、その身に光を纏ってヴィランキングへ突撃。

 

『プリキュア・マジェスティックハレーション!』

 

 【マジェスティクルニクルン】からパワーを付与されたスカイ、プリズム、ウィング、バタフライ、マジェスティが天空に描いた紋章より輝く光線を放射。

 他のプリキュアたちもそれぞれ最強の合体技を繰り出していく。ヴィランキングは残った左手を前へ突き出し、ドーム状の結界を張りこれを防ぐ。

 攻防一体の中、ユニヴェールが翼を目一杯広げると巨大な光の円陣を背後に出現させた。その弧には19組のプリキュアを象徴するエンブレムが刻まれており、それらから一筋の光が円の中央へと集まり、強烈な光源となって彼女を包み込む。

 

『プリキュア・ユニヴェール・ザ・カタルシス!』

 

 ユニヴェールが両手を前へ突き出した瞬間、自身に満ちるプリキュアのパワーを凝縮させ、極彩色の光球を形成。ヴィランキングの結界へ向かって発射する。

 プリキュアたち全員が放った技が一つの閃光となり、ヴィランキングの左手ごと結界を破って奴の胴体を貫いた。

 

「おーのーれーーー!」

 

 断末魔を叫びながらヴィランキングの体は白い光の柱へ呑み込まれていった。

 先刻、我が物顔で仁王立ちをしていたヴィランキングの巨体は跡形も無く消え、大地は開戦前の静けさを取り戻していた。

 

「勝ったの・・・?」

 

 と、ホワイトがブラックに問う。返答の代わりの彼女の笑みがすべてを物語っていた。

 

「やっ・・・やったああああ!」

 

 ブラックの勝利の叫びが伝播(でんぱ)し、プリキュア全員が歓喜に沸き上がった。

 

「わたしたち、ついにヴィランキングを倒したんですね!」

 

「これでみんなの世界にしあわせハピネスが戻ってくるはずだよ!」

 

 彼女たちは笑顔で称え、喜びを分かち合う。それだけに辛く厳しい道のりだった。壮絶な戦いを切り抜けた全員の想いがこの瞬間に成就したのである。

 

「ようやく全部終わったのね」

 

「けど、これでもうみんなともお別れなんだね・・・」

 

 ブラックとホワイトは寂しげに感慨に浸っていた。

 戦いが終わり、そして、苦楽を共にしてきた仲間たちとの別れの時が訪れた。ヴィランキングを打倒した今、彼女たちは各々の世界に帰らなければならない。それが良いことだと理解してはいるが、やはり名残惜しさを感じる。

 もうじき帰還する82人の少女たちをユニヴェールは優しい眼差しで眺めていた。

 ━━刹那、異変を感じ取る。

 

「ッ! これは・・・、邪悪な気配が消えていない。まさか!?」

 

 大気から伝わってくる悪意の脈動。不穏な胸騒ぎは現実のものとなってしまう。

 

「この愚か者共め。余に勝った気でいようなどと、思い上がるのも(はなは)だしいわ!」

 

 低く恐ろしげながなり声が響き渡り、喜びに彩る少女たちの表情は一瞬にして絶望の色へと変わった。声の主こそ、消滅させたはずのヴィランキングのものに相違なかった。

 

「そんな・・・。倒したはずじゃ!?」

 

「一体どこに隠れて━━」

 

 姿無き敵にプリキュアたちは狼狽え動揺する。辺りを隈無く捜せど、輩の影すら見つからない。

 誰もが周囲への厳戒に気を取られていたその時、突然足下の地面がひび割れたかと思えば、黒い手が無数に伸びてユニヴェールを除くプリキュアたちをがんじがらめに縛り上げた。

 体の自由を奪われた彼女たちの頭上を暗黒の闇が濛々(もうもう)と集積し、赤く光る複眼の両目と牙だらけの口が開き、恐ろしい顔が形成された。

 

「どれだけ忌々しく鬱陶しい光で照らそうとも、この世に悪意がある限り余は永久に不滅なのだ!」

 

 ヴィランキングは憎しみに形相を歪ませ、憤り荒ぶる声を轟かせる。肉体は消滅しても思念体となってまで復讐せんとするしぶとさは凄まじいものだった。

 プリキュアたちは拘束を逃れようと(もが)くも、身動きがまったく取れず、脱することができない。

 

「お前たちの信じる絆の力など所詮(しょせん)この程度。如何(いか)脆弱(ぜいじゃく)で無価値であるかを、その身を以て味わうがいい!」

 

 ヴィランキングに呼応して黒雲から紫色の稲光が走れば、落雷となってプリキュアたちに襲い掛かった。

 

「「「きゃああああああああ!」」」

 

 成す術も無く、激痛と苦辛の悲鳴を上げる彼女たちは黒い球体に包み込まれる。黒球が消えた後には青緑色のブロンズ像と化したプリキュアたちの成れ果てた姿があった。

 

「これがプリキュアの最期。見よ、すべての希望が潰え、未来が閉ざされた瞬間を!」

 

 然も、プリキュアの墓場となった地上を足下に、たった一人残されたユニヴェールはヴィランキングと睨み合うこととなる。

 と、彼女を包んでいた光も途端に弱々しくなっていく。

 

「くっ・・・、力が・・・・・・」

 

(つら)いであろう? お前はプリキュアの想いによって生まれた存在。故に、力の供給源である彼奴等(きゃつら)の心が絶たれた今、お前自身の力も失われてゆくのは当然のことだ」

 

 窮地に追い込まれてしまったユニヴェール。彼女は最早その場で漂っているのがやっとなほど弱体化してしまっていた。

 

「お前さえ始末すれば、刃向かう(やから)は消え失せ、すべての世界は余の物となるのだ!」

 

(このままだとプリキュアたちが永遠に悪意の闇に囚われてしまう。せめて、みんなの心だけでも救わないと・・・!)

 

 決心を固めたユニヴェールは残りの力を振り絞り、ブロンズ像となったプリキュアたちへ右手を(かざ)すと光の雨を振り掛けた。

 輝く粒子を浴びた82体のプリキュア像の胸元から光の玉が浮かび上がり、間もなくして半球体の宝玉を形作った。それはプリキュアの心そのものであり、彼女たちの力が宿った奇跡の結晶【プリタマシー】。

 82個のプリタマシーが現れたところで、空中に白く光るワームホールが開かれた。

 

「今はみんなの心を別の場所に飛ばすことしかできないけれど、人々がわたしたちを求めれば、いつか必ずプリキュアの蘇る時が来る!」

 

 プリタマシーがワームホールへ向かって飛んでいき、次々に吸い込まれていく。

 

「させるものかぁ!」

 

 妨害しようとヴィランキングが紫の稲妻を放つ。ユニヴェールがバリアを張って防ぐも、万全でない状態でのバリアは薄氷のように容易く破れてしまう。

 

「希望は再び、輝きを・・・・・・」

 

 バリアが完全に破壊され、ユニヴェールは稲光に消えた。

 稲妻が終息すると、ブロンズ像となったユニヴェールが無情にも地表へと落下していった。

 しかし、ユニヴェールが点在していた場所に光の玉が一つが浮かび、それはプリタマシーと共に穴の中へ飛び込んでいく。直後にワームホールの入り口は収縮し、消滅した。

 

「どこへ逃れようとも、余の悪意からは決して(まぬが)れぬぞ!」

 

 憤慨する魔王の唸り声は、哀れなプリキュア像が立つ大地を震わせるのだった。

 

 とある世界。82個の流星が暗碧(あんぺき)の夜空を()けていくのであった━━。

 

 * * *

 

 オレンジのライトに照されるトンネルを走行する一台の軽ワゴン。

 眩く白む出口を抜けると、左手すぐに大きな街が一望できた。数多くの建物が並び、中心部へ向かうに連れてビルが何本も生えている。郊外は緑が生い茂り、街との調和を醸し出していた。

 ここは『ゆにば市』。人と人との繋がりを一つに結び付ける情緒豊かな都市。

 

「わぁー、すごーい!」

 

 後部席の左側の窓から一人の少女が顔を覗かせ、茶髪のポニーテールを風に流しながら壮観な街並みに感動の声を上げた。

 

「お父さん、お母さん。あれがあたしたちが住む街だよね?」

 

 彼女の名は、架橋(かけはし)きずな。父の転勤で『ゆにば市』に引っ越してきた本年度二年になる女子中学生。初めての街、見知らぬ新天地に彼女は心を踊らせていた。

 

「あぁ。『ゆにば市』は人との交流が盛んな街だからきっと気に入ると思うぞ」

 

「自然もたくさんあるし、良いところそうじゃない」

 

 父の仁史(ひとし)と母の結子(ゆいこ)も新たに始まる生活に期待を寄せていた。

 

「あたしも友達100億人目指して、たくさんの人と仲良くならなくちゃ! ね、みお?」

 

「お姉ちゃん、ちょっとはしゃぎすぎ」

 

 きずなは隣に座るミディアムヘアの双子の妹・みおに呼び掛けるも当人は小説に視線を落としたまま素っ気なく返した。

 彼女たちは一卵性双生児なだけあって顔立ちは瓜二つなものの、姉のきずなは天真爛漫で社交的であるのに対し、妹のみおは冷静沈着で内向的と性格が相違する姉妹であった。

 

「ほら、見て見て! 大きなタワーが建ってるよ!」

 

「わかったから、寒いから早く窓閉めて」

 

「ぶぅ~・・・」

 

 街の中央に一際目立つ高層ビル『ゆにばタワー』に興奮するきずなであったが、塩対応のみおにプックリ頬を膨らませるのだった。

 




現時点において『ふたりはプリキュア』から『わんだふるぷりきゅあ!』までのプリキュアが登場しております。
『キミとアイドルプリキュア♪』を登場させるかは追々検討させていただきます。
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