キズナまるっと!THEプリキュア   作:MOZO

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Chapter 2

 

 住宅地の赤い屋根の一軒家に到着した架橋一家。先に引っ越し業者が荷運びを始めており、家具や洗濯機にベッド等が次々に家の中へ運び入れられる。

 一家も随時荷(ほど)きを開始。段ボールを開封して食器やら日用品を取り出し収納していく。

 みおが重そうな段ボールを持ち上げようとしていたところへ、きずなが手伝おうと駆け寄ってきた。

 

「みおだけじゃ大変そうだし、あたしが持ってってあげるね」

 

「別にいい。自分で持って行ける」

 

「遠慮しないで。お姉ちゃんにまるっと任せて!」

 

 揚々(ようよう)ときずなは段ボールを抱え、一気に持ち上げた。瞬間、底が抜けて中身の本をドサドサ床にぶちまけた。

 

「ご、ごめーん・・・」

 

 気まずそうに謝罪するきずなだったが、みおは予想通りだったと言わんばかりに呆れ気味な溜め息を深く吐く。

 

「わたしの方は良いから、お姉ちゃんは自分の荷物を片付けて」

 

「はーい・・・・・・」

 

 ばつが悪くなり、きずなはその場をそろりそろり後にした。

 気を取り直し、自室で私物を開封することに。段ボールの中には━━プリキュア関連のグッズがひしめき合っており、フィギュア、玩具、DVD、資料集を陳列するように机や棚に配置し、ポスターを広げて壁に張っていく。

 何を隠そう、きずなは筋金入りのプリキュアマニア。幼少の頃からアニメに触れてきた彼女はその魅力の(とりこ)になり、自分が産まれる前の過去作も網羅し、同世代の児童たちよりも熟知していた。中学生の今でも情熱は冷めることなく、新しいシリーズが放送されれば録画して何度も見返し、映画は毎年欠かさず来場し、小遣いを費やして集めたグッズの数は年々増え続けている。

 

「うわっ、めっちゃプリキュア部屋じゃん・・・」

 

 きずなが部屋中をプリキュア一色に埋め尽くしたところで、様子を伺いにきたみおが眉を潜めた。

 

「ふふん、すごいでしょ。あたしが長年集めてきたコレクションの数々」

 

「こんなにあるのに、まだまだ増やす気なんだよね?」

 

「もちろん。プリキュアがあるところ、西でも東でもまるっと追い求めてこそプリキュア魂ってもんでしょ!」

 

「今でも西と東の区別も付かないくせに」

 

「そのくらいわかるよ! えーと・・・、ペンギンがいるところが東だっけ?」

 

「それは南極!」

 

 きずなの突拍子もない珍回答をみおが反射的にツッコミをする。これが結城姉妹の間では日常である。

 

「何にしてもお姉ちゃんの勝手だけど、置く場所が無いからってわたしの部屋に置かないでね。約束破ったら、今度こそネットオークションに売り出すから」

 

「いやー! それだけは勘弁してぇ!」

 

 みおの本気の声色に青ざめた顔で彼女の体にすがり付くきずな。実は、以前住んでいた家では一部屋を二人で使っていたのだが、きずなのコレクションがみおのスペースまで侵入してきたものだから、さぞ迷惑この上なかっただろう。

 こんな有り様では、一体どちらが姉か妹か分からないほどであった。

 

 業者が帰り、引っ越しも概ね完了したところで団欒(だんらん)の一時を過ごす一家。しかし、きずなだけはいそいそ出掛ける支度をする。

 

「ねぇ、街を探検してきても良い?」

 

 これから暮らす『ゆにば市』を直接見て回りたいきずなは抑えきれない好奇心に突き動かされる。

 

「来たばかりなのに、迷子になるんじゃないか?」

 

「大丈夫大丈夫。一回通った道はすぐ覚えられるから」

 

「それなら構わないけど、夕飯前には帰ってくるのよ?」

 

 彼女の生まれ持ってのポジティブさは両親も承知の上。今更心配する必要も無かった。

 

「みおも一緒にどんな街か見に行ってみようよ」

 

「行かない」

 

「えぇ~。新しい学校の通学路とか覚えておいた方が良いと思うけどなぁ?」

 

「地図アプリがあるし。どうせ、お姉ちゃんあちこち寄り道するだろうからこっちが疲れるし」

 

「ちぇ、つまんないの・・・」

 

 ソファーで本を読みながらつれない態度のみおへ不満を抱きつつ、結局一人で出掛けることにした。

 玄関へと赴き、スニーカーを履いて準備は万端。

 

「行ってきまーす!」

 

 掛け声と同時にドアを開け、きずなは小さな探検の一歩を踏み出した。

 

 * * *

 

 麗らかな春の昼下がり。こんなにも晴れ晴れとした陽気の下では、足取りも軽くなるというもの。

 

「こんにちはー!」

 

 きずなは行き交う街の住む老若男女、果ては犬や猫にさえ溌剌(はつらつ)とした声で挨拶していく。

 住宅地から大通りを道なりに進むと、白い外壁の建物を発見。『ゆにば市立中学校』。明後日からきずなとみおが通うことになる新しい学校だ。友達100億人を目標とするきずなは校舎を眺めているだけで月曜日が待ち遠しくて堪らなくなった。

 その後、商店街に入ってあらゆる店々を見て回る。すると、可愛らしい外装の店舗に目が留まった。

 

『プリキュア専門店 Pretty(プリティ) Pupa(ピューパ)

 

 プリキュアファンの心を(くすぐ)る店名にきずなの胸は撃ち抜かれた。『CLOSED』の掛札が下がっていたが、速足でまっしぐらに近づいてショーウィンドウにベッタリ張り付き中を覗き込む。

 ガラスの向こうには、歴代プリキュアの変身アイテムや作中に登場するブランド『Pretty Holic』のコスメが並べられており、まさに至福の光景である。

 きずなが恍惚とした表情で眺めていると、ドアが開いて一人の女性が出てきた。

 

「あら、いらっしゃい」

 

 急に話し掛けられ、きずなは驚きのあまり飛び上がって動揺する。状況から鑑みれば不審者に思われてもおかしくはない。

 

「ごご、ごめんなさい! プリキュアのお店を見つけて、ついつい夢中になっちゃって・・・」

 

「別に構わないわよ。まだオープン前で準備中だから」

 

 年齢は二十代半ばといったところだろうか、とても感じの良いブロンドヘアの女性だ。例えるなら、『ひろがるスカイ!プリキュア』のあげはに印象が近い。

 

「私は屋代理紗(やしろりさ)。ここの店長よ。あなたはこの街の子?」

 

「あたしは架橋きずなって言います。今日引っ越して来て、いま街を探検してるんです」

 

「そうなんだ。実は私もこの街には最近来たばかりで、大好きだったプリキュアの専門店を開くことにしたの」

 

 なんて奇跡のような巡り合わせだろう。引っ越してきて早々に共通の趣味を持った同志と親しくなり、しかも彼女は好きが高じて専門店を開いたと言う。きずなにとっては尊敬どころか崇拝するレベルだ。

 

「明後日開店するから、ぜひ来てちょうだい」

 

「はい! 何があろうとも必ず伺います!」

 

 敬礼までしながら来店の約束を取り付け、きずなは理沙の店を後にするのだった。

 

 * * *

 

 父が言っていた通り、人との繋がりを重んじる優しさに溢れた街のようだ。暮らしている人々の互いに想い合う気持ちが重なり、交わり、連なっていく。そうして『ゆにば市』は築かれてきたのだろう。

 次にきずなが訪れたのは、緑の芝生が広がる大きな公園。休日なだけあって親子連れで賑わっている。

 と、子供の声援が聞こえてくる区画があった。そこに組み立てられたステージに向かって女児たちが集まっており、壇上では新シリーズの『キミとアイドルプリキュア♪』のキャラクターショーが今より開演しようとするところだった。

 

「うひゃー、『キミプリ』だ! こんなところで見られるなんて、今日はまるっとラッキー!」

 

 童心に返ったようにはしゃぐきずなはもっと近くで見ようと歩み寄っていく。瞬間、足下でキラリと何かが輝いた。

 

「・・・うん?」

 

 気になって拾ってみると、黒曜石のように輝く半球体の結晶で中央にはキュアブラックの姿が描かれていた。

 

「キュアブラックだ。ってこんなグッズ発売されてたっけ?」

 

 プリキュアの情報なら決して逃さないきずなでさえ覚えの無いアイテムなのだが、不思議と惹かれるものがあった。刹那。

 

(助けて・・・)

 

「えっ?」

 

 助けを求める声がはっきりと耳に入ってきた。周りを探しても声の主らしき人物は見当たらない。それどころか、声はきずなにしか聞こえておらず、他の人は気付いていないようだった。

 

(助けて・・・、みんなを助けてプネ!)

 

「誰? 誰が呼んでるの?」

 

 再び声が響いてきてきずなも応答を試みる。直後、頭上で強い光が煌めき、見上げれば白く光るワームホールが開いていた。

 その穴の中から小さな何かが飛び出し、きずなの直上へと落下してくる。

 

「ちょ・・・、ちょちょちょちょー!?」

 

 思わぬ事態に慌てふためくきずなの下に落下物はどんどん接近していき━━。

 

 モチャ。

 

 柔らかく弾力のある物体がきずなの顔面に覆い被さった。ベッタリ張り付くそれに口と鼻が塞がれて段々と息苦しくなり、きずなは堪らず強引にひっぺがして地面に叩き付けた。

 

「ぶっはぁぁぁぁー! し、死ぬかと思った・・・」

 

 酸欠寸前だったきずなは空気を大きく取り込んだ。その傍ら、落下してきた謎物体がフワリと浮遊する。

 

「イテテテ、酷い目に遭ったプネ・・・」

 

 白くて足の生えたクリオネに似たフォルムで、頭部には五本の触覚、翡翠色のつぶらな瞳、首には「(無限)」をなぞった金色のリボンを結び、中心に虹色の宝玉が埋め込まれている。

 如何にもプリキュアに登場しそうな妖精っぽい姿であった。

 

「変わったぬいぐるみ。どの作品に登場したキャラクターだろ?」

 

「プネリンはぬいぐるみじゃないプネ! プネリンはプネリンだプネ!」

 

「めっちゃ喋るし、プネプネ言ってて超可愛いんですけど。会話ができるってことは、さては最近流行りのAIってやつ?」

 

「話をちゃんと聞いてほしいプネ!」

 

 未だぬいぐるみだと勘違いするきずなに対してプネリンと名乗る妖精(もど)きは羽をバタつかせて憤るも、その姿があまりに愛らしくて頬をプニプニと指でつついてしまう。

 

「もしかして、あたしを呼んでたのってあなた? みんなを助けてってどういう意味なの?」

 

「説明している場合じゃないプネ。早くみんなを助けないと、この世界も危ないプネ!」

 

 プネリンに言葉の真意を問おうとした時、ステージが異常事態に見舞われた。

 

「あれあれぇ~、何だかすっごく盛り上がってるみたいだねぇ」

 

 ショーが始まろうとした時、どこからともなく一人の少女がステージに上がっていた。

 歳はきずなよりも少し上といった様子か、縦ロールツインテールにした緑色の髪、ゴスロリチックの黒いワンピースを纏い、左の目尻に黒い逆五芒星のペイントを付け、あざとく振る舞って見せる。

 誰の目から見てもこれが演出ではないことは明らか。招かれざる乱入者に対処しようと進行役の女性が駆け寄っていく。

 

「ちょっとあなた、勝手にステージに上がられると困るんですけど!」

 

「だってぇ、せっかくみんなが集まってくれてるんだから世界一可愛いエンビータちゃんに注目してもらいたいんだもん」

 

 不測のトラブルでショーが始まらず、客席では「邪魔しないで!」「プリキュア見たい!」と女児たちが騒ぎ出す。

 

「もぉ~、ウチを差し置いてプリキュアの方が見たいだなんて妬いちゃうなぁ~。でもさぁ、こっち(・・・)の世界じゃあプリキュアって作り話なんだよね? いもしない存在を応援したって無駄なんじゃない?」

 

 幼心をへし折ろうとする言動に保護者たちからも怒りを買い、会場中をクレームが飛び交った。

 

「いい加減にしないと警備員を呼びますよ!」

 

「うるさいなぁ。そんなにショーが見たいなら見せてあ・げ・る」

 

 謎の少女・エンビータが左手を広げると、黒い火の玉が現れる。

 不気味に揺らぐ火の中には、きずなの持っている結晶とそっくりだが闇夜のようにドス黒く、中央には悪魔を模した紋章が刻まれた半球体。悪意の結晶【アクダマシー】であった。

 

「闇より生まれしアクダマシーよ、この世のすべてを邪悪な心で満たせ!」

 

 呪文を唱えたなら、アクダマシーが準備中だったキュアアイドルの着ぐるみに憑依し、瞬時に黒い繭を形成した。

 

「いらっしゃい、ワルモーン!」

 

 繭が膨張していき、破裂。おぞましく巨大な悪意の怪物・ワルモーンが覚醒する。

 

「ワルモーン!」

 

 雄叫びを上げるワルモーンは、姿こそキュアアイドルと酷似してはいるも、顔面は白塗りで目元はW字のフェイスペイントが塗られ、赤く光るつり上がった両目が見開き、実に醜悪な姿へと変貌してしまった。

 目の前に発現した怪物に観客は騒然。更には、

 

「みんなも出ておいで!」

 

 エンビータが複数のアクダマシーを地面にばら()いた。直後、アクダマシーは黒い煙と共に、W字の形をしたバイザーのヘルメットを被った黒ずくめのボディスーツの人型に変化する。

 

「「「ワルジャー!」」」

 

 悪の戦士・ワルジャー軍団も現れ、会場は混迷を極めた。

 

「さぁ、ヴィランキング様に仕える三幹部の一人、エンビータちゃんが送る地獄のショータイムの始まりだよ~。たっぷり怖がってねぇ!」

 

 エンビータの号令によりワルモーンとワルジャーたちが大暴れし始め会場をめちゃくちゃにする。

 ワルモーンはスタッフ用のテントや車、近くの遊具を掴んで投げ飛ばし、ワルジャー軍団は椅子を蹴散らしながら逃げ惑う人々を追い掛け回す。平穏だった公園中がパニックの坩堝(るつぼ)となった。

 

「どうなってるの・・・? これって夢じゃないよね?」

 

 アニメでしかあり得ない事態にきずなは頬をつねってみるも、当然夢や幻覚ではなく起こっている事象すべてが現実であると認識する。

 

「ボンヤリしてないで早く逃げるプネ!」

 

 プネリンに促され、ようやく我に返ったきずなもようやく避難するため立ち上がった。

 

「うわぁ~ん! お母さ~ん!」

 

 唐突に子供の泣き声が聞こえてきた。咄嗟(とっさ)に振り返ると、母親とはぐれたのか一人の女児がへたり込んで泣きじゃくっており、そこへ一体のワルジャーがにじり寄ってきていた。

 「こんな時、プリキュアだったら絶対に見過ごさない」。きずなの胸に正義の火が灯り、形振り構わず走り出した。

 

「キミ、危ないプネ!」

 

 プネリンの制止も耳に入らないほどきずなは無我夢中で走り続けた。

 ワルジャーが女児に襲い掛かろうとした時、きずなは途端に背を向けたかと思えば尻を突き出す格好で突進する。

 

「キュアブロッサム流、おしりパーンチ!」

 

 『ハートキャッチプリキュア!』のキュアブロッサムが作中で披露した『おしりパンチ』を真似てきずなのヒップアタックが炸裂。ワルジャーは横っ飛びに転がっていった。

 

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 怒りが収まらないまま、きずなは声の限り感情を爆発させた。

 

「アナタだ~れ? すっごく良い気分なんだから邪魔しないで」

 

「みんなこのショーを、プリキュアに会えるのを楽しみにしてたのに、こんな小さな子たちを泣かせてよく平気でいられるわね!」

 

 ショーを台無しにし、あまつさえ子供たちの夢を踏みにじるエンビータの非道にきずなは臆することなく糾弾(きゅうだん)した。

 

「人の不幸は蜜の味って言うでしょ? みんなが不幸になっちゃえばウチの可愛さが引き立つのよ~ん」

 

 悪びれるどころか現状を嬉々とするエンビータの言動にきずなは更に語気を強めた。

 

「この人でなし! アンタがどれだけ可愛い子ぶったって性根は超ブサイクなのよ!」

 

「ブサイクだなんて・・・。ふ・・・ふぅ・・・・・・」

 

 エンビータは両手で顔を覆い隠して肩を震わせた。悪人相手と言え、少々失言だったかもしれない。きずなは感情的だった自分を反省する。

 

「ご、ごめん。ちょっと言い過ぎた━━」

 

「ふざけんなぁー! 誰がブサイクだとこのガキ!」

 

「ひぃ・・・⁉」

 

 突然豹変したエンビータの罵詈雑言に流石のきずなもたじろいでしまった。

 

「舐めた口を叩きやがって、タダで済むと思うんじゃねぇぞ! オマエらやっちまえ!」

 

 憤慨するエンビータがワルジャーたちに命令すると、標的をきずなに変えて襲い掛かる。

 実はきずなは運動神経はズバ抜けて高く、ワルジャーの攻撃を次々に(かわ)していく。身軽な足取りで避け、馬跳びで飛び越え、股の間をスルリと潜る。ワルジャーの動きも単調だったことが幸いして余裕で回避することができた。

 ふと、きずなの真上を巨大な影が覆うとキュアアイドルワルモーンの拳が振り下ろされようとするところだった。きずなは間一髪で避けられたものの、衝撃の余波により転倒。拍子に彼女の手からキュアブラックのプリタマシーが落ちた。

 

「な~んだ。オマエ、プリタマシー持ってたんじゃん」

 

 それを見逃さなかったエンビータは企んだようにほくそ笑む。

 

「大人しくそれを渡してくれたら、ウチの奴隷として生かしてやってもいいけど?」

 

 邪悪な交換条件に、これだけ渡してはダメだという予感がしたきずなは、プリタマシーを拾い上げて隠すように握り締める。

 

「これが何かは知らないけど、アンタなんかには絶対渡すもんか!」

 

「あっそう。じゃあ、痛い目でも見れば?」

 

 エンビータの提案を断固拒否したきずなはワルモーンに掴まれ囚われてしまう。

 

「このッ、離しなさいよ!」

 

 きずなは脱出を試みようと足掻くが、全身をガッチリ握られているため完全に体の自由を奪われてしまった。

 

「ざまぁ見ろ。そのまま絞ってジュースにしてやる!」

 

 エンビータの命令のまま、ワルモーンはきずなを掴む手を強く締め上げる。

 

「あぐっ、うぅ・・・!」

 

 キツく締め付けられ、全身の骨が軋んで激痛が走り、呼吸も(まま)ならなくなり、きずなの意識が朦朧(もうろう)とし出した。

 刹那、ピンクの光が尾を引いてどこからか飛来し、ワルモーンの額を直撃。予期せぬ奇襲にワルモーンは捕まえていたきずなを離してしまい、仰向けに倒れ込んだ。

 

「なにッ⁉」

 

「あれは・・・!」

 

 事態が急転し、プネリンとエンビータは一驚を喫する。

 地面に落とされ、動転するきずなのもとにピンクの光が降りてくる。ルベライトのように輝く半球体の中央にはキュアラブリーが描かれていた。

 

「もしかしたら、あの()なら・・・」

 

 二つのプリタマシーと出逢ったきずなに運命的なものを感じ取ったプネリンは決心する。

 プネリンの体が淡い虹色の光に包まれ、リボンの宝玉が瞬いた。

 

「プネプネ・・・プゥゥゥゥ!」

 

 叫びと共にプネリンの体内から光の玉が現れ、きずな目掛けて打ち出される。

 きずなが光の玉を受け止めると、光はスマホ大のアイテムに変化。白い本体に∞マークを描いた電飾、二つの輪にはソケットが備え付けられていた。

 

「何よこれ?」

 

「その【キズナリンカー】を使ってプリキュアに変身するプネ!」

 

「プリキュア・・・。今、プリキュアって言いました⁉」

 

 驚きのあまり『魔法つかいプリキュア!』のみらいの口癖になってしまった。

 よもや憧れだったプリキュアになれる日が来ようとは。踊りたいほど歓喜したいところだが、これはごっこ遊びではない。街の命運を懸けた重大な選択なのだ。

 

「あたしにしかできないことだって言うなら、やるっきゃないでしょ!」

 

 覚悟を決めたきずなはキズナリンカーとプリタマシー二つを構える。

 

「燃えろ、プリキュア魂!」

 

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