姉の過保護で一日八時間睡眠が解除できない   作:かりん2022

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私の全てを最愛の弟に譲ろう……(キリッ)

夏油傑の義姉として転生した。

要は捨て子として拾われたのである。

 

私の望んだチートは、ポケモンである。特にポケモンに詳しいわけではない。

 

ピカチュウが大好きだった。それだけである。

 

ポケモンについて知っていることなんて、プリンの眠る歌が上手いこと、ニャースが技能全振りすれば喋れる事、コイキングは跳ね続けていればいつかギャラドスになれる事、ミミッキュがピカチュウに憧れる悲しきポケモンである事、ヒトカゲがリザードンになる事、ピカチュウが超アイドルで電光石火と10万ボルトが使えること、メタモンが変身できること、ゼニガメとフシギダネというポケモンがいること、6匹まで持てることしか知らない。

 

ププリン、ニャース、コイキング、ミミッキュ、ヒトカゲ、ピチューである。

お分かりだろうか。私の知識の範囲内でしか用意されてない。

いや、助かるんだが、助かるんだが……! このラインナップ、強いのか? 弱いのか?

それすらわからないのである。

 

ピカチュウとか、最強のようにも思えるが、でも主人公ポケモンだからであって、あのピカチュウがチートで実際は違うのかもしれない。それすらもわからないなんちゃってファンである。

 

ただ一つわかること。それは……。

私はピカチュウのファンである。大ファンと言ってもいい。

だが、ミミッキュの前でピカチュウ馬鹿にはなれない……!

それだけである。

 

さらにいえば、割と性格悪い所のある弟にもそう簡単に紹介できない……!

 

私は、インコとか猫とかトカゲとかハムスターとか魚を飼うことでカモフラージュして、一生懸命ポケモンをこっそり世話した。特にピチューは全力で育てた。

 

そうして、弟は10歳になった。

 

「傑。あなたも10歳。年齢が二桁になったわ。だから、お誕生日祝いとして、貴方に私の相棒を1匹譲りたいと思うの。お父さんとお母さんには内緒よ?」

「ええ、いいよ、気持ちだけ有難くいただくよ……」

「いいえ。ねぇさんは貴方に頑張る事の尊さをどうしても知って欲しいの」

 

 そうして、私はそっとバスタオルの上に乗っけたタライの上にモンスターボールを掲げる。

 

「これ、モンスターボールの玩具?」

 

 私はスイッチを押した。

 ピチピチと魚が跳ねて、バスタオルが濡れる。

 

「名前は龍滝くんよ。コイキングの龍滝くん。ギャラドスに進化して欲しいって願いを込めて、この名前をつけたの」

「!???」

「龍滝くんと一緒に成長して欲しい。そしていつか、花開いてほしい。ねぇさんのお願いよ。聞いてもらえる?」

「ねぇさん……。ねぇさん、マサラタウンの人なの?」

「そうよ。知られたら大騒ぎになっちゃうから、誰にも内緒よ? 傑はもう10歳なんだから、秘密を、龍滝を守れるわね?」

「他にもいるの?」

「ええ、傑がちゃんと龍滝と仲良くできたら紹介してあげる」

「僕、頑張るよ。ちゃんと仲良くなるし、コイキングを鍛えるよ」

「うん、頑張りなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒトカゲは敢えて育ててないの。ヒトカゲと共に、絆を育ててほしい。絆が貴方を救う事になるでしょう。そうだ、名付けも貴方がしなさい」

「ニャース、魁斗は頭がいいわ。時に頭を使う事、頼る事を覚えて欲しい」

「ピカチューその1の優と共に、時に見ないフリをする寛容を知って欲しいの。ちなみにそれができないと死ぬわよ。ピカチューその2の乱丸と共に、どんな困難も真正面から食い破る強さを求めてほしい」

「プリン、夢美と共に睡眠の大切さを知って欲しいの」

 

 

 そうして、私は一年に一回ずつ、全部のポケモンを傑に預けた。

 

「学校、頑張ってね。新しい学校では、ポケモンのことを言ってもいいわ。私は逃げるから心配しないで」

「えっ いや、言わないよ」

「それが出来ないで生き延びられるほど、呪術師って職業は甘くないわ」

「……わかったよ。でも出来るだけ頑張ってみる」

 

 やるだけやったつもりだ。しかしそれでも、どうなるかわからない。

 最悪、私は百鬼夜行でポケモン達と敵対する事になるだろう。

 最悪の場合には私がけじめをつけねば。

 私は修行の旅にでなければならなかった。

 

 なお、フリーの術師として登録はしている。

 一応術式も持ってはいるのだ。傑には教えてないが。

 

 願わくば、敵対することのないように。

 私は祈りながら、傑を見送った。

 

それは六つの縛り。

それは六つの祈り。

それは六つの力。

 

ああどうか、私の最愛の弟に幸福を。

 




マシュマロ
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