姉の過保護で一日八時間睡眠が解除できない   作:かりん2022

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百鬼夜行まで潜伏予定ですBY姉

最初は一応、気をつけたのだ。

ちゃんと宣言もした。

 

「夏油傑。趣味は格闘。欠点は一日八時間眠らないとダメなところ」

「はぁ? なにそれ。術師やってけんのかよ」

「燃費わる」

「悪いね。でも本当に寝ないとダメなんだ」

 

 そう言って、夜蛾先生にもそういう体質だからとお願いした。

 でも、私だって男子学生。悟と夜遅くまでゲームしたい日もあるし、何より任務でそうも言ってられない日もある。

 

 それは、夜間の任務が長引いてしまった日。

 ついに、今すぐ寝ないと一日の睡眠時間が八時間を割ってしまうというタイミングが来た。それも任務中だ。

 

「本当にすまない、悟。私、そろそろ寝ないと」

「はぁぁぁ!? さっきから眠い眠いってなに言ってんだよ、任務中だぞ」

「本当にすまない、悟」

 

 モンスターボールから、勝手にニャースの魁斗とプリンである夢美が出てくる。

 魁斗は丸めた布団を背負っており、サッと広げた。私は急いでそこに入る。

 

「は!? なにやってんだよ、傑! マジで!? つーかそれ何!」

 

 そこで夢美が歌い始めた。

 

「♪♪♪〜♪〜♪♪♪」

 

 人の倒れた音と共に、私の意識は落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝8時。優しく揺さぶられて起きると、目の前にぱっちり目を開けた悟がいた。

 

「悟……?」

 

 ガバッと悟が起き上がって距離を開ける。

 

「は? は!? は!???」

 

 悟は慌てて周囲を見る。

 廃墟に布団。そうだ、任務中にタイムリミット来ちゃって寝たんだ。あっ 布団汚れてる。制服汚れてたし当然か。洗濯しなきゃな。

 悟を布団に運んでくれたのはニャースだろう。流石に廃墟の床に放置は良くないからな。相変わらず気がきく。

 

「おはようにゃ、傑様」

「プリン♪」

「ピッカー」

 

「おはよう、皆。おはよう、悟」

「あ、お、おはよう……? じゃなくて!」

 

 私が起き上がって身支度を整えると、魁斗が布団をくるくると巻いて、背負う。

 

「初めましてにゃ! 傑様の保護者の魁斗ですにゃ! それと夢美と乱丸ですにゃ! いつも傑様が大変お世話になっておりますにゃ!」

「プリン♪」

「ピッカー♡」

 

「ピカ……チュウ、なのか? 呪霊は!」

 

 悟がハッとしてワタワタする。

 

「乱丸が祓っておいたにゃ。報告書はお任せにゃ!」

「はぁぁ!? って、眠らせたのもしかしてお前らか? なんで!?」

 

 確かに、フレンドリファイヤは良くないよね。ごめんよ……。プリンの歌声は無差別なんだ。

 

「健全なる魂は健全なる肉体に宿る。よってご主人様が傑が夜更かししたら必ず眠らせなさいってご命令にゃ。余波で悟様まで眠らせたのはごめんなさいにゃ」

「傑のねーちゃんも呪霊操術の使い手? いや、こいつらちゃんと生き物だ。まるで術師を見ているような……!」

「ねぇさんは捨て子だったんだ。マサラ人だったらしくて。持ってたポケモンを譲り受けたんだよ。出来るだけ隠しておきたかったけど……」

「は!? マジで!??」

「十分雲隠れする時間は稼いだにゃ。傑様のご友人とは仲良くなっておきたかったから、傑様からも紹介して欲しいにゃ」

「自分でも言ってたけど、ニャースの魁斗に、プリンの夢美に、ピカチュウの乱丸だよ」

「後3匹も紹介しろ」

「やっぱり? ちょっと難しい子がいてね。絶対に理解して欲しい事なんだけど、私の手持ちの中に、ピカチュウが2匹なんだ。いいね? ポケモンはあくまでフィクションだから、現実とは違ってね」

「頭おかしくなりそう。ピカチュウと、後2匹は?」

「ヒトカゲの紅丸とコイキングの龍滝だよ」

 

 私はコイキングの龍滝とヒトカゲの紅丸、そしてピカチュウもどき(ミミッキュ)の優を出した。悟は私の言いようを、優を見て納得した。

 

「あー。なるほど。ピカチュウなのな」

「そうだよ。可愛いピカチュウ。愛玩担当の方」

「乱丸は戦闘担当?」

「そう」

 

 私はミミッキュを優しく抱き上げて撫でる。抱きしめる。

 優には愛を注げと口を酸っぱく言われているので。

 コイキングがピチピチと跳ねる。

 

「なあ、傑。とりあえず、俺を巻き込んだ事と事前に話さなかった事について、結構真面目に俺怒ってるんだけど、殴っていい? ポケモン怒んない? 急に眠らされて、起きたら布団の中で、目の前に傑がいて、寿命が縮まったんだけど」

 

 それはもっともだ。申し訳ない。

 

「皆、私は悟に怒られるようなことをしたから殴られるんだ。だから大人しく見ててくれないかな? 悪かったよ、悟。殴ってくれ」

 

「プリン」

「魁斗も一緒に謝るにゃあ。ごめんなさいにゃ」

「チャア……」

「キカァ……」

「カゲー」

 

 ピチピチ。

 

 私は悟におとなしく殴られた。

 コイキングはぴちぴちと跳ねている。

 そうこうしているうちに、当然のように救援が来て、報告もきちんとあげた結果、ポケモンは学校の知る所となった。

 

 フレンドリファイヤな件について五条家からも苦言が来て、私は夜蛾先生にも怒られ、ひたすら小さくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教室に戻り、私は夜蛾先生と硝子と悟に説明をしていた。

 

「ということで、ポケモン達は私の一日八時間分の眠りをかなり厳密に管理していてね。今眠らないと0時までにノルマをこなせない、という時はかなり強引に眠らせてくるんだ。そして命令の修正は姉さんにしかできなくて、姉さんは今、行方不明なんだ。私の護衛にポケモンを出す以上、自分は逃げるってね」

「なるほど。疑問なんだけど、コイキングってギャラドスに進化するんだろ? 傑、抑えきれんの?」

「そうなれるよう、私自身も頑張って成長するよ。でも私もポケモンのアニメを見てさ。実際にポケモンがいる以上、100%嘘ってばかりでもないだろうし、リザードにそっぽを剥かれたら、コイキングを戦闘に出すのはやめようかと思う」

「そうしろ」

「悟。本当にその、呪霊じゃないのか?」

「カメラに映るだろ。で、ちゃんと生き物だろ」

「ねぇ、五条ばっかりずるい。私、魁斗にしか会ってない」

 

 私は、悟にしたのと同じ説明をした後に、手持ちの6匹を紹介した。

 

「よろしくな、乱丸、優。夢美も今度、歌聞かせてよ。紅丸もよろしく」

「よろしく。しかし、睡眠はどうにかできんのか?」

「駄目にゃ。ご主人様のご命令は絶対にゃ。傑の健全な育成の為に、一日八時間は眠らせるにゃ。寝る子は育つにゃ」

「はぁぁ……モンスターボールを置いていくというのは」

「ヒトカゲとコイキング以外はどちらかというと姉さんのポケモンなんです。命令権は姉さんにあって、その姉さんから私の護衛をせよと命じられているので、絶対離れませんよ。でもまあ、悔しい事に乱丸は今の私より強いですし、眠る私を守るくらいは余裕かなって」

「すごいじゃん、乱丸」

 

 硝子がちょんっとピカチュウの乱丸の鼻を突くと、ピカチュウもどき(ミミッキュ)も硝子によっていく。

 

「よしよし。優も強いの?」

 

 硝子が優をそっと撫でて問う。強く撫でると変装がやばい事になるのでそっとである。

 

「すごく強いよ。それで、あー。結構繊細で、嫌な事を指摘されると、絶対に相手を殺す執念深いところがあるから、気をつけて。私もそれで、下手に出さないようにしてるんだ。優は可愛くて人気者のピカチュウだからね。ポケモンはボールの外の様子も窺えるし」

「あー」

「なる」

「ふむ。一応擁護はしておくが、危険物扱いは避けられないかもな」

 

 夜蛾先生の言葉に、私は慌てて擁護する。

 

「扱いを間違えなければどの子もいい子ですし忠実ですよ。ずっと私を守っててくれたんです」

「扱いを間違えなければの話だろう。傑のお姉さんの捜索はしておこう。秘匿死刑にはしないからと説得して、睡眠制限を解除してもらわないと。術師になるのに、一日八時間睡眠などやっとれん」

「それは……すみません」

 

 こうして、姉さんの捜索は始まった。

 姉が見つからない事を願っていた私だが、日数が経つにつれ、私も姉さんを探すようになった。いや、一日八時間縛りが本当に辛いのだ。

 任務だけではない。私だって悟と仲良く夜遅くまでゲームしたい日だってある。

 一緒に出かける日の朝だって、早起きしたいのだ。

 

 だが、頑ななまでにポケモン達は姉さんの命令を守り続けていた。

 おかげで背はグッと伸びたし、スクスク育ってる感じはあるし、悟達はもはや完全に慣れて耳栓常備したり、私が眠る横で乱丸と共闘したりとしているが、申し訳ないがすぎる……!!

 せめて卒業あたりには会いに来てくれるよね!?




マシュマロ
https://marshmallow-qa.com/lucaluca
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