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帰り道、俺が繁華街を通りかかると、ゲームセンターの前で見覚えのある顔があった。
「良々と、葵か」
二人はガチャガチャの前で何やら話し込んでいる。
「お、御門じゃないか」
葵は俺に気付いて、手を振ってくれた。
俺も特に避ける理由はなかったので、彼女たちの元へ近寄る。
「何やってたんだ?」
「が、ガチャです。ちびネズミの……」
そう言って、良々は手の中にある複数のラバーストラップを俺に見せてきた。
相変わらず首が捻じれたり、杭で刺されたりなど、可愛いマスコットが台無しのグロテスクなデザインだ。
「でも、これってTruthで作ってるんだろ。余った在庫とかもらえないのか」
それを提案して、葵は呆れたようにため息を吐き、良々も小さく首を振る。
「貴様はコレクションの意味をまるで分かっていないな」
「こういうのは、自分で引くから意味があるんです。後ちょっとでコンプリート。ふひひ」
良々は手元のちびネズミを見て、これまた可愛い顔が台無しの不気味な笑顔を浮かべる。
「フリマで買った方が効率いいと思うけど」
「ま、まあそういう人もいますけど。ぼくは違います」
「……ちなみに、俺はちびネズミの在庫処分を頼まれてるんだけど」
「貴様、話聞いてなかったのか?」
俺の"営業"は、葵によって即座に切り捨てられた。
「ま、まあ、鈴代さんが困ってるなら、1セット買います」
「いいのか?」
「鈴代さんはこの前、ネオジェネの話、してくれたから。それに、ちびネズミは何個あっても困らない。ふひひ」
そう言ってスマホを取り出し、フリマアプリを開いてくれた。
俺は彼女に、自分のアカウントと出品ページのリンクを伝え、購入してもらった。
「つ、ついで、ネットの友達にも宣伝します。集めてる人、いっぱいいるので」
「ありがと。悪いな色々」
「よかったな。貴様も、我ら盟友の存在に深く感謝するといい」
「いや、お前は何もしてないだろ」
謎のポーズを決める葵にツッコミを入れたところで、俺は今日の出来事を思い出す。
「そういえば、良々はネオジェネとかニュージェネみたいな、グロイ事件に詳しいんだよな」
それを聞くと、良々はパッと顔を明るくして、何度も頷く。
「も、ももももしかして、鈴代さんも興味あるの?海外のエグイのとか、ぼくいっぱい知ってますよ!」
「落ち着けって」
興奮する良々を宥めて、俺は改めて尋ねる。
「えっと、俺が聞きたいのは、死体の腐敗臭を消す方法なんだけど、そんな方法ってあるのか?」
その質問に対して、良々は嬉しそうに、逆に葵はドン引きしたような顔になる。
「す、鈴代さん、もしかして、殺したい人がいるんですか?」
「ち、違う!これはその、あれだ。小説だ。実は趣味で小説を書いてて、その参考になればなーって……」
すると、今度は二人ともが目を輝かせる。
「文を嗜むとは。やはり貴様とは馬が合うな!」
「その小説ってグロイ?」
「え、えっと、それは……と、とにかく。良々の意見を聞かせて欲しいんだけど」
何とか誤魔化して、話を本題に戻す。
良々は少し考えるような素振りを見せた後、スマホでなにやら検索をかける。
「そもそも死体を隠すだけなら、普通は腐らせないようにすると思います。で、でも、あえて腐らせて死体の身元確認を遅らせたり、死亡推定時刻を隠すなら、臭いが外に漏れないようにするのがいいかと」
「う、うん。まさにそれ。その方法を考えてるんだ」
「なら、金属の倉庫に入れておくとか。密閉性の高い場所なら、バレないですよ」
「いや、でも、段ボール箱から遺体が見つかったって設定で」
「ずっと同じ場所に隠しとく必要はないです。段ボール箱も腐蝕するから、変える必要あるし。それにダンボールでも、密閉性を高める方法もあります」
すると、良々は段ボール箱の梱包について解説したサイトを見せてきた。
「気密性の高い緩衝材、それからテープを工夫する。さ、さらに、死体の入った段ボール箱を、別のダンボールに入れる。これらなら、内側の段ボール箱だけ、腐ったら取り換えればいい。燃やせば証拠も残りません」
「なるほど」
確かに、良々の言うこの方法なら、犯行を実現できる。
「ありがとう。参考になった」
「ふひひ、ほ、褒められた……」
相変わらず表情は不気味だが、良々が嬉しそうで何よりだ。
「じゃあ、俺はそろそろ行くよ」
「はい。小説。今度読ませてくださいね」
俺はその頼みに苦笑いで応じ、その場を去った。
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家に戻ると、ノワールが何やら嬉しそうにこちらへ走ってきた。
「御門御門!ごちそう!ごちそう!」
「お、おい!」
ノワールに手を引かれて奥へ行くと、テーブルの上にスーパーの弁当が置かれていた。
「世莉架が持ってきてくれたの!」
俺は弁当の中身を確認する。
大きなハンバーグと、ジャガイモがゴロっとしたポテトサラダ、ニンジンやゴボウなどの根菜の煮物、ソーセージ、ふっくらとしたご飯。
何よりも目を引くのがその値段だ。
800円。
見渡しても割引のシールがどこにもない。
「たしかに、これはごちそうだな」
俺は生唾を飲み込んで、弁当を見つめる。
「早く!早く食べよう!」
「わ、分かった。順番に温めるから」
俺は電子レンジで、弁当を温める。
その間に、ノワールに話を聞いてみた。
「尾上は、何か言ってたか?」
「頑張れって」
「そっか」
俺は温めた弁当を持ってきて、ノワールの前に置く。
ノワールは弁当の中身をジーっと見つめるが、俺の分が温まるまで、大人しく待っている。
「いただきます」
「いただきます」
俺が自分の分を持ってきたところで、俺達は食べ始める。
「御門、なんかいいことあった?」
「ああ。調査の一つが片付きそうなんだ」
「ほんと?」
「ああ。そうだ。もし、明日尾上が来たら、頼んでおいて欲しいことがあるんだ」
「ん?」
ノワールは口にソースをつけながら、無邪気に首を傾げた。