妄想科学NVL CHAOS;INNOCENCE   作:師走F

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第19話:狂気なる最後のピース

 ◆

 

 帰り道、俺が繁華街を通りかかると、ゲームセンターの前で見覚えのある顔があった。

 

「良々と、葵か」

 

 二人はガチャガチャの前で何やら話し込んでいる。

 

「お、御門じゃないか」

 

 葵は俺に気付いて、手を振ってくれた。

 俺も特に避ける理由はなかったので、彼女たちの元へ近寄る。

 

「何やってたんだ?」

「が、ガチャです。ちびネズミの……」

 

 そう言って、良々は手の中にある複数のラバーストラップを俺に見せてきた。

 相変わらず首が捻じれたり、杭で刺されたりなど、可愛いマスコットが台無しのグロテスクなデザインだ。

 

「でも、これってTruthで作ってるんだろ。余った在庫とかもらえないのか」

 

 それを提案して、葵は呆れたようにため息を吐き、良々も小さく首を振る。

 

「貴様はコレクションの意味をまるで分かっていないな」

「こういうのは、自分で引くから意味があるんです。後ちょっとでコンプリート。ふひひ」

 

 良々は手元のちびネズミを見て、これまた可愛い顔が台無しの不気味な笑顔を浮かべる。

 

「フリマで買った方が効率いいと思うけど」

「ま、まあそういう人もいますけど。ぼくは違います」

「……ちなみに、俺はちびネズミの在庫処分を頼まれてるんだけど」

「貴様、話聞いてなかったのか?」

 

 俺の"営業"は、葵によって即座に切り捨てられた。

 

「ま、まあ、鈴代さんが困ってるなら、1セット買います」

「いいのか?」

「鈴代さんはこの前、ネオジェネの話、してくれたから。それに、ちびネズミは何個あっても困らない。ふひひ」

 

 そう言ってスマホを取り出し、フリマアプリを開いてくれた。

 俺は彼女に、自分のアカウントと出品ページのリンクを伝え、購入してもらった。

 

「つ、ついで、ネットの友達にも宣伝します。集めてる人、いっぱいいるので」

「ありがと。悪いな色々」

「よかったな。貴様も、我ら盟友の存在に深く感謝するといい」

「いや、お前は何もしてないだろ」

 

 謎のポーズを決める葵にツッコミを入れたところで、俺は今日の出来事を思い出す。

 

「そういえば、良々はネオジェネとかニュージェネみたいな、グロイ事件に詳しいんだよな」

 

 それを聞くと、良々はパッと顔を明るくして、何度も頷く。

 

「も、ももももしかして、鈴代さんも興味あるの?海外のエグイのとか、ぼくいっぱい知ってますよ!」

「落ち着けって」

 

 興奮する良々を宥めて、俺は改めて尋ねる。

 

「えっと、俺が聞きたいのは、死体の腐敗臭を消す方法なんだけど、そんな方法ってあるのか?」

 

 その質問に対して、良々は嬉しそうに、逆に葵はドン引きしたような顔になる。

 

「す、鈴代さん、もしかして、殺したい人がいるんですか?」

「ち、違う!これはその、あれだ。小説だ。実は趣味で小説を書いてて、その参考になればなーって……」

 

 すると、今度は二人ともが目を輝かせる。

 

「文を嗜むとは。やはり貴様とは馬が合うな!」

「その小説ってグロイ?」

「え、えっと、それは……と、とにかく。良々の意見を聞かせて欲しいんだけど」

 

 何とか誤魔化して、話を本題に戻す。

 良々は少し考えるような素振りを見せた後、スマホでなにやら検索をかける。

 

「そもそも死体を隠すだけなら、普通は腐らせないようにすると思います。で、でも、あえて腐らせて死体の身元確認を遅らせたり、死亡推定時刻を隠すなら、臭いが外に漏れないようにするのがいいかと」

「う、うん。まさにそれ。その方法を考えてるんだ」

「なら、金属の倉庫に入れておくとか。密閉性の高い場所なら、バレないですよ」

「いや、でも、段ボール箱から遺体が見つかったって設定で」

「ずっと同じ場所に隠しとく必要はないです。段ボール箱も腐蝕するから、変える必要あるし。それにダンボールでも、密閉性を高める方法もあります」

 

 すると、良々は段ボール箱の梱包について解説したサイトを見せてきた。

 

「気密性の高い緩衝材、それからテープを工夫する。さ、さらに、死体の入った段ボール箱を、別のダンボールに入れる。これらなら、内側の段ボール箱だけ、腐ったら取り換えればいい。燃やせば証拠も残りません」

「なるほど」

 

 確かに、良々の言うこの方法なら、犯行を実現できる。

 

「ありがとう。参考になった」

「ふひひ、ほ、褒められた……」

 

 相変わらず表情は不気味だが、良々が嬉しそうで何よりだ。

 

「じゃあ、俺はそろそろ行くよ」

「はい。小説。今度読ませてくださいね」

 

 俺はその頼みに苦笑いで応じ、その場を去った。

 

 ◆

 

 家に戻ると、ノワールが何やら嬉しそうにこちらへ走ってきた。

 

「御門御門!ごちそう!ごちそう!」

「お、おい!」

 

 ノワールに手を引かれて奥へ行くと、テーブルの上にスーパーの弁当が置かれていた。

 

「世莉架が持ってきてくれたの!」

 

 俺は弁当の中身を確認する。

 大きなハンバーグと、ジャガイモがゴロっとしたポテトサラダ、ニンジンやゴボウなどの根菜の煮物、ソーセージ、ふっくらとしたご飯。

 何よりも目を引くのがその値段だ。

 

 800円。

 見渡しても割引のシールがどこにもない。

 

「たしかに、これはごちそうだな」

 

 俺は生唾を飲み込んで、弁当を見つめる。

 

「早く!早く食べよう!」

「わ、分かった。順番に温めるから」

 

 俺は電子レンジで、弁当を温める。

 その間に、ノワールに話を聞いてみた。

 

「尾上は、何か言ってたか?」

「頑張れって」

「そっか」

 

 俺は温めた弁当を持ってきて、ノワールの前に置く。

 ノワールは弁当の中身をジーっと見つめるが、俺の分が温まるまで、大人しく待っている。

 

「いただきます」

「いただきます」

 

 俺が自分の分を持ってきたところで、俺達は食べ始める。

 

「御門、なんかいいことあった?」

「ああ。調査の一つが片付きそうなんだ」

「ほんと?」

「ああ。そうだ。もし、明日尾上が来たら、頼んでおいて欲しいことがあるんだ」

「ん?」

 

 ノワールは口にソースをつけながら、無邪気に首を傾げた。

 

 

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