妄想科学NVL CHAOS;INNOCENCE   作:師走F

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第2話:真実の探求者は彼を見出だす

 ◆

 

 217 名前:名無しさん@渋谷 2025/6/19

 

 ハッピートリガー#3発目発生!!

 http://news23.hkt.jp//news//202506190014.html

 

 

 218 名前:名無しさん@渋谷 2025/6/19

 

 記事概略

 現場は渋谷区円山町の路地裏。

 被害者は近藤赤斗(れっど)。翠明学園の学生らしい。

 第一発見者は派遣社員。

 

 219 名前:名無しさん@渋谷 2025/6/19

 

 レッドってwwwwwwww

 

 220 名前:名無しさん@渋谷 2025/6/19

 

 写真も出てるな

 見るからに不良っぽいけど、そりゃこんな名前つけられたらグレるわ、(´・ω・`)カワイソ

 

 221 名前:名無しさん@渋谷 2025/6/19

 

 翠明学園の生徒って、顔面レモンと一緒じゃない?

 

 222 名前:名無しさん@渋谷 2025/6/19

 

 マジかよ

 ハッピートリガーと顔面レモンに関係がある……ってこと!?

 

 223 名前:名無しさん@渋谷 2025/6/19

 

 それより円山町って張り付けの現場の近くじゃない?

 

 224 名前:名無しさん@渋谷 2025/6/19

 

 模倣犯、にしては手口も違うしな

 

 225 名前:名無しさん@渋谷 2025/6/19

 

 お前らマスゴミに踊らされすぎだろww

 ネオジェネとかあいつらが勝手に騒いでるだけw

 ただの別々の猟奇殺人事件だよw

 

 226 名前:名無しさん@渋谷 2025/6/19

 

 ネオジェネ名付けたのってマスコミじゃないだろ

 オカルトライターのなんとかってやつ

 

 227 名前:名無しさん@渋谷 2025/6/19

 

 萩原(はぎはら)長月(ちょうげ)

 フォロワー8000のインフルエンサー(笑)

 

 228 名前:名無しさん@渋谷 2025/6/19

 

 あいつのブルバの投稿貼っとく

 http://bluebird.jp/hagihar9/20250526007.html

 

 229 名前:名無しさん@渋谷 2025/6/19

 

 あいつすぐ陰謀論とかこじつけるし胡散臭いんだよ

 今回も話題作りのガセでしょ

 

 230 名前:名無しさん@渋谷 2025/6/19

 

 この前創作サイトをテロ組織の隠れ蓑だとか騒いでたなw

 

 231 名前:名無しさん@渋谷 2025/6/19

 

 財団は架空の組織ですよって言われても、引っ込みつかなくなって永遠とグダグダ言って、総叩きにあってたな

 

 232 名前:名無しさん@渋谷 2025/6/19

 

 ネオジェネに話を戻して、あの辺って最近不審者の目撃情報とかもあったんだよな

 

 233 名前:名無しさん@渋谷 2025/6/19

 

 マ?犯人?

 

 234 名前:名無しさん@渋谷 2025/6/19

 

 いや、不審者っつっても子供

 小学生か中学生くらい?

 警察が声かけても逃げるらしい

 

 235 名前:名無しさん@渋谷 2025/6/19

 

 それただの家出だろ

 

 236 名前:名無しさん@渋谷 2025/6/19

 

 家出ではないらしい

 捜索届とかも特に出てないし、なんか白髪?らしいし、わけありっぽい

 

 ◆

 

 通報翌日に、俺は警察署に呼び出され、一通りの事情聴取を受けていた。

 どうでもよさそうなことや、同じようなことを何回も聞かされて、ようやく解放された頃には昼前となっていた。

 

「疲れた……」

 

 今日は休んでもいいことになったので、俺は特にやることもなくその辺をぶらぶらしていた。

 

 平日の昼間だというのに人が多いことにげんなりしていると、前を歩く露出の多い格好の女性が目に入る。

 

 太ももの強調されるホットパンツ、へそが見える丈の短いニット、見るからに高そうなバッグにはラバーストラップがぶら下がっている。

 思わず目が行ってしまうが、あまり見ているとそれだけで痴漢だと訴えられかねない。

 

 俺が目を逸らしたその時、彼女の横を通り抜ける黒服の男が、彼女から高級そうなバッグを奪い取った。

 

「きゃぁぁっ!」

 

 女性が声を上げるが、男は構わず人混みをかき分けて逃げていく。

 

 俺は咄嗟に走り出し、男の後を追う。

 

「待て!」

 

 倉庫作業で鍛えた脚力で男に追いすがり、その背中を引っ張って地面に叩きつけた。

 

「そこまでだ!」

「がぁっ!」

 

 俺は男からバッグを取り戻し、後ろから走ってきた女性に渡した。

 

「ありがとうございます」

 

 女性は感謝のあまり俺の手を握り、それを自身の豊満な胸に押し付けた。

 

「本当に助かりました。あなたがいなければどうなっていたことか……」

「俺はただ、当然のことをしただけですよ」

「素敵……お礼に、この後お茶でもどうですか?」

「是非、ご一緒します」

 

 俺は女性と手をつないで歩き出す。

 

 ────という妄想(ゆめ)を見た。

 

 俺がひったくりを捕まえるなんて、そんなエネルギーを使うことをするわけがないし、何よりひったくりを捕まえたくらいで女はこんなことしない。

 

 だから妄想で自分を満たす。

 これが最もコスパのいいやり方だ。

 

「ありがとうぅ」

「え?」

 

 しかし、気付くと俺の目の前には先ほどの女性がいた。

 足元にはひったくり犯、手元には女性のものと思われるバッグが握られていた。

 

「あ、えっと、こ、これ……」

 

 女性にバッグを返すと、彼女は再度頭を下げた。

 

「本当によかったぁ。お財布とかこれに全部入れてたからぁ、なくなったらどうしようかなってぇ」

「あ、はい。その……よかったです」

 

 マスクで隠れても美人だと分かる顔を、俺は直視することができなかった

 

「……うん。中身も無事ぃ。ありがとねぇ」

 

 俺に感謝する女性を俺は放心状態のまま見送った。

 

 ◆

 

 それから渋谷の店を数軒、ウィンドウショッピングで冷やかした後、ようやく冷静になった頭で先ほどの出来事を思い返した。

 

「やっぱり、妄想、だったよな……」

 

 そもそも俺の運動神経はそれほどよくない。

 手慣れたひったくりに追いついて捕まえるなんてできるはずがない。

 

 ひょっとすると、妄想が現実になって、あの女の人に感謝されたところまで含めて俺の妄想で、現実の俺はそれに気づかず放心状態だったってことか。

 

 うん。きっとそれだ。

 

「いやー見事だったねぇ」

 

 その時、突然誰かに声をかけられた。

 声の主は自販機の横に座り込む怪しげな男だった。

 

 サングラスにアロハシャツという不審者の代名詞みたいなファッション、年齢は多分30代後半か、男はニヤニヤした顔でこちらを見ていた。

 

「あ、あの……俺になにか、用ですか?」

「ん?だから君の活躍だよ。君でしょ?さっきひったくりを捕まえたの?」

「はぁ……」

 

 ただの野次馬か。

 面倒なことになる前に、俺は会釈だけそのまま立ち去ろうとする。

 

「妄想の具現化」

「!?」

 

 俺はその言葉を聞いて振り返る。

 

「いやー、能力を正しく人のために使えるなんて、素晴らしい人間だよ」

「あ、あの、さっきから何を言って」

「え?何?もしかして無意識にやっちゃった感じ?こりゃますますすごい!」

 

 男は立ち上がり、わざとらしく手を叩いて称賛する。

 

「君のような才能のある人間を探していたんだよ」

 

 男は俺の手を握り、何度も頷く。

 

「あの、あなたは一体……」

「ああ失礼。名乗るのが遅れたね」

 

 男は胸ポケットから名刺を差し出した。

 

「株式会社The Truth、樋上信也」

「そうそう。まあ簡単に言えば通販とかで色んな商材を扱っている会社かな。表向きには」

 

 樋上はニヤッと笑う。

 

「君はこの世界に疑問を持ったことはないかい?」

「……宗教勧誘なら興味は」

「例えば渋谷地震、君は世代じゃないかもしれないけど、あの地震の不自然さは耳にしたことがあるだろう?」

 

 渋谷地震。

 2009年、ちょうどニュージェネレーションの狂気が起こった年に渋谷で局所的に発生した大地震。

 マグニチュード7.2の大地震であるにも関わらず、その周辺地域では建物の崩壊はほとんど起きなかったという。一部では人工的に起こされたものだという陰謀論も出ており、現在でも一部のオカルト界隈で考察されているらしい。

 

「渋谷地震の真相は結局明らかにならなかった。明らかに何か隠されている。そして僕はこの真実を手にしている」

「なんですか、真実って……」

「詳しくは言えないが、君の持っている力とも関係しているよ」

 

 どうする。

 これ以上この男と関わるのはよくない気がする。

 

 だが、"俺の力"という響きに、俺はどうしてもこの場から足を話すことができない。

 

「君は自分が他の人とは違うと思ったことはないかい?君の思考に凡人はついていけない。普段からそう感じてるんないかい?」

 

 樋上の言う通り、俺が効率的なやり方を教えても、周りは理解を示そうともしない。

 それは俺の才能に、周りがついていけていないだけだったのか。

 

「君のその優れた思考力による妄想は、現実を歪めることができる。ちょうどさっきのようにね。どうだい?うちならその能力を十分に生かすことができる」

 

 差し出された手を取るかどうか逡巡している間に、樋上は踵を返した。

 

「ま、その気になったら、いつでも連絡してね」

 

 そう言って樋上は立ち去ってしまった。

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