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その後、尾上と共に、町中を探し回った。
途中で葵も加勢して捜索範囲を広げたものの、結局白井を見つけ出すことはできなかった。
暗くなってきたので、一度俺の家に集まって作戦会議をすることになった。
「やはり闇雲に探しても見つからないな」
葵は腕組して考え込んでいる。
「御門、千里眼とか使えないか?」
「無茶言うなよ。どんな妄想すればいいんだよ。サイコメトリーだって結構大変なんだぞ」
「むぅ」
葵は名案だとでも思っていたのか不機嫌そうに頬を膨らませる。
「現実的なところで、白井恵の行きそうな場所とか分からないのか?」
尾上の問いかけに、葵は微妙そうな顔を返す。
「正直なところ、別に私も白井さんと仲がいいわけではないからな。思い付かない。明日学校で白井さんの友達に聞いてみるとかならできるが……」
「そうしてくれ」
それまで野放しにするのは不安だが、現状できることがない以上は待つしかない。
俺が諦めて肩を落とすと、ふとノワールが天井をボーッと見上げているのが目に入った。
「ノワール、何やってるんだ?」
「んー……」
ノワールは何もない空中に手を伸ばして、左右に動かしている。
「これ!」
ノワールが手を握ると、彼女の手の中にまた別のディソードが出現した。
白い球体から、細い針のような刀身が伸びたディソード。
ノワールはそれを天井に向けて目を閉じた。
「何する気だ?」
「うぅ……」
ノワールが唸っていると、
「「「っ!」」」
不意に俺達の脳内にイメージが飛び込んでくる。
「今のって……」
「翠明の近くにある公園だ」
「この能力……まさか、千里眼か?」
全員がノワールを見る。
「よく分かんないけど、みんな困ってたから」
そう言ってノワールは無邪気に笑う。
「でかしたぞノワール!」
葵はノワールに抱きついて、頭を撫で始めた。
「うぅ、くすぐったい……」
「遠慮するな。ほれほれ」
じゃれ合う二人を見て、俺は思わず微笑んだ。
「尾上。俺はノワールが何者かなんてどうでもいい。分からないことを考えても効率が悪い」
「何がいいたい?」
「あいつは俺達のために行動してくれた。なら、今はそれだけでいい」
尾上は溜め息で返した。
◆
それから俺達は、ノワールの千里眼で見えた公園までやって来た。
面積としては20平方メートルもなく、遊具もろくに手入れされていないのか錆び付いており、雑草が生え放題だ。
「見当たらないな」
それほど広い公園ではないが、暗闇と雑草のせいで探すのに苦労した。
「もう移動してしまったのではないか?」
「うぅ、まだいる」
ノワールは首を振って否定する。
彼女の手には、まだ千里眼を発動するのに使ったディソードが握られており、彼女がそれで居場所を捉えていることを示している。
「だが、こんな公園に隠れる場所なんて、せいぜいそこの物置と、遊具の中くらいだろ」
「うおっ!」
その時、俺は何かに躓いて、雑草まみれの地面にダイブしてしまった。
「大丈夫か御門!敵襲か!?」
葵がディソードを構えて警戒する。
「いや、ちょっと転んだだけだから」
「なんだ?声がするが姿が見えんぞ?」
「見下げてみろ」
いや、こんだけ雑草まみれだと見下ろしても見えないのか。
俺は起き上がろうと手を地面についた。
「っ!」
目が合った。
俺のすぐ横に倒れている存在に、俺はようやく気付いた。
「ひっ……」
俺は起き上がってスマホのライトをつける。
恐る恐る草を掻き分けて、その正体を探る。
「これは……」
そこに転がっていたのは、顔の半分が潰された白井恵の死体だった。
「これ、白井さんも誰かに殺されたのか……?」
「御門!サイコメトリーだ!」
「わ、分かってる」
俺はディソードを取り出して、亡くなった彼女の方へ向ける。
─────はぁはぁ、ここまでくれば
白井は息を切らして膝を着く
その瞬間、
空気が揺れて、直後に"赤"が舞った。
白井は言葉を発する間もなく、地面に倒れ伏す。
────よくもうちの息子をぉぉっ!
襲撃者は、髪の長い女性だった。
血に濡れた雑草を踏みしめて、既に動かなくなった白井へ罵詈雑言を浴びせる。
────はぁはぁ……ふふふふっ
そうして、ようやく気が晴れたのか、彼女はその場から去っていった。
「はぁはぁ……今の、見えたか?」
葵と尾上は頷く。
「恐らく太田の母親か。不自然なほど到着が早い気もするが」
「まあ、殺す動機は十分にあるしな。これで顔面レモン#4品目、というわけか」
警察に通報する必要があるが、この時間にこんな場所で何をしていたという説明が出来ない。
またノワールや尾上の痕跡が万が一残っていた場合、話をややこしくしてしまう。
「仕方ない」
俺はディソードを再び掲げて世界線を移動する。
ここに来る前の自分へ、この場所で見たこと、俺の考えを送信する。
「っ!!」
その瞬間、視界は歪曲する。
意識と現実との解離に頭が痛くなる。
「……!」
俺は気付くと部屋の中にいた。
テーブルの前に座っており、その四隅には片付けられていない座布団が四つ置かれている。
振り替えると、ノワールは眠そうに布団に潜り、枕を抱き抱えている。
「警察への通報なら、さっき済ませておいたぞ」
尾上は呆ける俺を見下ろしてそう告げた。
「もうあの公園に警察が集まっている頃だろう」
彼女の言葉は、俺達があの公園に行かなかった世界線へ移動したことを示していた。
「よかったのか?お前が電話して」
「私の携帯なら記録は残らない。せっかく世界線移動で痕跡を消したのに、妙なところでお前達ことが知れても面倒だ」
「そうか。葵は?」
「もう帰った。お前と一緒に世界線移動したからか、今回はあいつにも記憶が残っていたようだな」
尾上は玄関へと向かう。
「明日こそは、この事件を終わらせるぞ」
「ああ。おやすみ」
俺は尾上に別れを告げて、自分も寝る支度をすることにした。
◆
翌日、俺が彼女と交わした約束は、最悪な形で果たされることとなる。
『今朝、渋谷区の住宅地で、二人の遺体が発見されました』
俺は昼休みに、おばちゃんの店のテレビでそのニュースを目にした。
『遺体の身元のうち、所持品から一名が明らかとなっています。昨夜未明に遺体なって発見された白井恵さんの父親、白井大介さんで、現場には争った形跡があることから─────』
「なんだか、10年前の頃より物騒になったわねぇ。あんたも気を付けなよ」
おばちゃんの言葉に、俺は答えなかった。
テレビにわずかに映った身元不明のもう一人の遺体は、俺がサイコメトリーで見た女と特徴一致していた。
ネオジェネ事件『顔面レモン』は、六名という過去最大の犠牲者を出し、犯人同士の相討ちという最悪の結末で幕を閉じた。