【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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朝倉滅亡戦 2 浅井家の最後

 朝倉軍を追った俺達津田軍は追撃開始から2日後には朝倉氏の本拠地一乗谷に到着する。

 

「なんと栄えている町か……」

 

 一乗谷の町は堺や熱田に匹敵する商業都市であり、朝倉氏が5代に渡って整備を続けてきた巨大な町であった。

 

 捕虜の数名を案内役にここまで進んできて、信長様より一乗谷は焼き払えと命令されていたが、この町を焼き払うなんてとんでもない。

 

 俺は家臣や兵達に略奪禁止の号令を行い、朝倉一族の生き残りの行方の捜索を開始した。

 

 すると朝倉の生き残りは一乗谷を放棄し、越前北部の大野郡に逃れて形勢逆転を狙っていることを知るが、越前北部地域は事前に秀吉殿が寺社勢力を織田方に寝返らせており、落ち延びてくるようであれば僧兵が捕らえる手筈になっていた。

 

 まぁ朝倉氏に恩がある寺もあると思うので匿う可能性もあるが、捜索していけば探し出せるであろうし、一乗谷に取り残された朝倉の家臣達曰く、当主朝倉義景に付き従って逃れたのは兵500未満という情報も入っており、俺は忍びやくノ一達に捜索を依頼した。

 

 で、朝倉館という朝倉氏が普段使いしている館を軍政の拠点として活用し、陣張りを行って信長様率いる織田軍の到着を待つことにした。

 

 その空いた時間に俺は一乗谷を観光し、朝倉氏が開発に成功していたガラス工房を見学した。

 

 製法としては江戸硝子に近い感じで器が生産されており、職人達は朝倉氏に保護されていたので、資金提供の停止もしくは殺されるのではないかと怯えていた。

 

 しかし俺から

 

「素晴らしい技術だ。これからはその腕を存分に織田家のために振るって欲しい」

 

 と、ベタ褒めされたことで胸を撫で下ろすことになる。

 

 他にも一乗谷には多くの職人達が生活する職人街が形勢されており、染料職人、漆職人、酒職人、越前焼きと呼ばれる陶磁器や和紙、刀鍛冶等の多種多様な凄腕の職人が腕を振るっていた。

 

 俺が挨拶に行くと、潜伏していた朝倉家臣に襲撃される場面もあったが、即座に斬り捨て、脅されて協力を強要されていた職人達を保護した。

 

 忍びを使い、潜伏する朝倉家臣達が密会をしている場所を特定し、俺は酒を持って会いに行ったりもした。

 

「津田又兵衛! 何故ここに」

 

「何故って今一乗谷は俺の支配下にある。何処にいようと勝手だろう」

 

 酒樽を置いて、中身を酌で掬って、少し飲む。

 

「越前の酒だ。毒でもねぇ」

 

 誰も飲もうとしないので、俺は座ってまぁ話を聞けと言う。

 

「朝倉は負けた。これから織田家による統治が始まる。お前達朝倉家臣がするのは朝倉家が残したここの文化を守ることじゃねぇのか? 朝倉氏が5代に渡って築き上げた一乗谷の文化を」

 

「俺は一乗谷に来てなんて栄えている都市なんだって感銘を受けたね。ただ今のままだと朝倉の武名は地に落ちている状態だ。織田に一矢報いる事も出来ずに滅んだ朝倉の弱兵と罵られることになる」

 

 刀に手をかける者もいるが、初老の家臣が待ったをかける。

 

「俺の下で働け。所領安堵とはいかないが、俺は越前半国を信長様より貰う手筈になっている。俺と共に朝倉に付いてしまった汚名をそそごうや」

 

 そう言うと、先程斬りかかろうとしていた若者を止めた初老の武士が名乗りを上げた。

 

「私は桜井元忠と言う。朝倉家では奉行の役に就いていた。正直朝倉義景様は我々を置いて逃げられたのに思うことはある」

 

「ただ義景様以前の朝倉当主の皆様への恩は忘れられない。織田が迫れば一乗谷は焼かれると思っていたが……一乗谷を残して貰えるのであれば、私は抵抗する意味は無いと思っている」

 

 強い眼差しで俺を見ている。

 

「約束しよう。ただ朝倉の家臣達はなんとかしろ。潜伏して人斬りになられても困る」

 

「知り合いには声をかけるつもりだ」

 

「じゃあ飲め」

 

 俺は酌で酒を掬うと桜井に渡した。

 

 桜井は酒を飲み、俺との盟約を結ぶのだった。

 

 

 

 

 

「なんじゃ、焼き討ちしなかったのか馬よ」

 

 俺が一乗谷に入って3日後に織田本隊が一乗谷に到着し、信長様を朝倉館にて出迎えた。

 

「以後統治することを考え焼き払い朝倉の統治を終わらせるよりも、朝倉の統治を引き継いだほうが良いと判断したまでです」

 

「ふむ……まぁこの地は馬に与えるとしていた土地だ。一揆でも起きない限り好きにせよ」

 

「は!」

 

 信長様の許可も得られたので一乗谷の焼き討ちは行われなかったが朝倉義景の捜索は続けられ、翌日に朝倉義景は自害していることが判明し、その首を持って朝倉一門衆が降伏してきた。

 

 信長様はこれを一旦は許すと言い、丹羽長秀殿に彼らを若狭の寺に移動させるように命令し、丹羽長秀は信長様が彼らを生かす気は無いと判断して山道を歩かせている途中で兵を使って彼らを谷底に落とし、朝倉一門の主流はこれにて断絶。

 

 越前で栄華を誇った名門朝倉氏は織田と敵対して僅か3年でほぼ族滅状態となり滅亡となった。

 

 領土分配で若狭の土地は一度放棄していたが、再度奪還に成功したことで丹羽長秀の所領となり、越前は50万石のうち28万石と一乗谷や北部地域であるが三国湊と呼ばれる日本海側の主要な港町を領有できることになり、石高以上の経済力を有する土地を与えられた。

 

 あと越前の他の地域は旧若狭武田家臣達に与えられ、一部の朝倉家臣は俺に臣従することを誓ったが、多くは加賀に逃れていったらしい。

 

 加賀に逃れたのは織田との戦で戦死した家臣達の息子達……若輩者ばかりであり、恐らく俺の怖さを身体で感じてない者達である。

 

 臣従した朝倉家臣達は俺の怖さがトラウマとなっている事が多く、絶対に裏切りませんと血文字で文書を書いてくる覚悟ガンギマリの人物も少なくなかった。

 

 朝倉滅亡の戦後処理を終えた信長様は越前統治に必要な人材を置いてすぐに浅井攻めに戻る。

 

 朝倉という食料供給源や資金提供者を失った浅井はいよいよ出涸らしである。

 

 俺は一乗谷の統治を大蔵長安と武田恵瓊に任せて、浅井の籠る小谷城に再び向かうのであった。

 

 

 

 

 捕虜として連れてこられた朝倉の兵達は浅井攻めに参加するなら解放するという条件で織田軍に組み込まれ、彼らは城攻めの先頭に配置させられていた。

 

 信長様も降伏した敵にも容赦がない。

 

 そんな最中、小谷城では異変が起こっていた。

 

「どうやら毒芋が効いたらしいのぉ」

 

 俺が忍びからの報告を聞いていると、白頭巾を被っている松永久秀ことマリアが耳にしたようで、俺にそう言ってきた。

 

「ああ、小谷城では食あたりの者が大勢居てとても戦ができる状態では無いらしい。今日中に城攻めが始まる」

 

 どうやら朝倉が浅井に援軍で来たのは、浅井の食料備蓄が危険水準に到達していたのもあるらしく、食料を搬入するために小谷付近に軍を進めたが、結局搬入に失敗し、士気を上げるためにじゃがいもを食べさせたところ、他の芋と同じく茎や葉まで食べてしまったらしく、集団食中毒が発生。

 

 士気は上がるどころか崩壊してしまったらしい。

 

 小谷城内は栄養失調状態の兵も多かったため、食中毒でトドメを刺されて中毒死する兵が相次ぎ、地獄絵図になっているのだとか……。

 

「まぁ今日落ちるだろう」

 

 

 

 

 先鋒を務めたのは秀吉率いる木下軍で、城内の抵抗が鈍いと感じた今、猛攻撃を実行。

 

 小谷城は上空から見るとUの字に見えるのであるが、Uの右側が陥落し、左側も真ん中を突破され、残すところ本丸と京極丸に分断されいよいよ落城が迫る。

 

 そして全体指揮を行なっていた浅井久政が京極丸にて激戦の末に討ち死にし、本丸に籠っていた浅井長政が捕縛されて浅井家との戦闘も終結するのであった。

 

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