【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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引っ越し 1

 浅井家との戦も終わったことで、忙しさが軽減するかと言えば、大違い。

 

 引っ越し作業が始まる。

 

「領主様、行かねぇでくれ!」

 

「領主様! 又兵衛様!」

 

 10年近くも統治していた領土を手放すのも少し心許ないが、それでも領地替えを命じられたからには移動しなければならない。

 

 元々各村の村長達には話しており、村人で俺に付いていきたい人は越前に一緒に行っても良いと通達していた。

 

 俺としても美濃で発展させた農法を教えることの出来る人材を抱えておきたく、結局1000名近くの村人達や若者が俺と一緒に越前に向かうと決め、元々抱えていた兵士1500名の兵士、雑賀衆から逃れてきた土橋一族や土橋派の家族達1500人、今回の戦で中途採用を勝ち取った兵2500名の合計約6500名を引き連れて大移動。

 

 流石に1回で移動するのも他の領主達に悪いので、3回に分けて移動することとなった。

 

 で、領主である俺は一番最初に移動しなければならないので、家族達を引き連れて、移動を開始。

 

 小さい子供や嫁さん達は籠に乗せて、家臣達と共に越前に向かうのであった。

 

 道中、横山城の秀吉の所にお邪魔させてもらい、休息を取る。

 

「秀吉殿も出世しましたなぁ」

 

「何を又兵衛の方が大出世じゃないか! オイラも負けてはいられないぞ!」

 

 今回の浅井、朝倉攻めで所領を大きく広げたのは俺、秀吉殿、明智光秀殿、そして丹羽長秀殿であった。

 

 丹羽長秀殿は若狭国を有することなり、近江は明智光秀殿が京都側の坂本の町周辺を、秀吉殿が浅井家の領土の大半を吸収することになった。

 

 その結果、織田家では大名並の所領を持つ重臣が複数人現れることになり、佐久間信盛、柴田勝家、丹羽長秀、俺、滝川一益、明智光秀、秀吉という序列が形成されつつあった。

 

 丹羽長秀殿までは決まっているが、残り4人はほぼ横ばいで俺も織田家一門衆に入っているからこの序列とはちょっと違うかもしれない。

 

 所領の広さ的には秀吉殿と俺がほぼ一緒くらいの広さで、経済力的にも秀吉殿が琵琶湖の水運で稼げるし、俺は日本海側の海運収益があるのでほぼ互角といったところか……。

 

 信長様は俺と秀吉殿、それに領土が近い明智光秀殿を競い合わせて相乗効果を狙っていると見える。

 

「秀吉殿も羽柴に苗字を改名して、いよいよ重鎮の貫禄が出てきましたか?」

 

「いやいや、オイラはまだまだ……」

 

 秀吉殿はこのタイミングで苗字を木下から羽柴に改名し、羽は丹羽長秀殿の羽、柴は柴田のオヤジ殿の柴を貰って羽柴としていた。

 

 重臣達との機嫌をとった意味もあり、丹羽長秀殿も柴田のオヤジ殿も猿(秀吉殿)にしては可愛げがあるじゃないかと上機嫌。

 

 一方で浮いた存在になりつつあるのが佐久間信盛殿であった。

 

 尾張東部に広い領土を有しながら、直臣を増やす訳でも無く、家中のやりくりは信長様から与えられる与力(派遣社員)に任せて、私財の備蓄をしているという噂も目立ってきている。

 

 それにこの前の朝倉攻めの時、本来であれば他の家臣達も攻撃する事になっていたのだが、朝倉がそんなにすぐに軍を退かせるとは思っておらず、初動が遅れてしまい、結果、俺だけが突出して俺が殲滅させて、手柄を総取りすることになったが、遅れてきた言い訳を並べて、更には自分達のような優秀な家臣は早々居ないとキレ気味だった信長様の神経を逆撫でするような行為をしていたのである。

 

 元から粛清リストに入っていたが、今回の件で佐久間信盛は必ず追放もしくは切腹させる候補に入ってしまったのである。

 

 それを勘のいい家臣達は察知しており、徐々に距離を置いていたのである。

 

「佐久間殿も困ったものだ……」

 

「本当にそうですね……」

 

 俺と秀吉殿はその他にも彼の息子が癇癪持ちのダメ人間であり、彼が息子の教育に失敗していたのを知っていたのである。

 

「秀吉殿の息子さんは優秀そうじゃないですか」

 

「オイラよりも弟の秀長によく似た性格をしていてな。気の回る良い子なんだよ」

 

 秀吉殿の息子の秀頼は数え年で13歳、元服も済ませ、すくすくと成長していた。

 

 今、俺の息子や娘達と遊んでいるが、背丈の高い子が多い俺の子供達に対して、秀頼は1回りほど背が小さかった。

 

 まぁ秀吉殿も奥さんのねねさんも背丈は大きい方では無く……どちらかと言うと小さい方なので、2人の子として背丈は小さかった。

 

 それでも秀吉殿に似て口が回り、コミュニケーション能力というか人と仲良くなれる能力は父親譲り。

 

 俺の子供達は今日初めて会ったはずなのに、仲良くなっていた。

 

「又兵衛の息子も凄いじゃないか。嫁さん既に50人って……精力持つの?」

 

「毎日とっかえひっかえで励んでいるよ。戦でも十分に活躍してくれているし」

 

「そんな出来た息子が嫡男じゃないのは少々勿体ない気がするがな……」

 

 高貞の事は他の武将達にも噂になっており、熊と戦って勝った事や、朝倉追撃戦の際には太刀を振るって朝倉兵の首を50以上も討ち取ったなど怪力の又兵衛の子供もまた怪力であり、嫁さんの数が既に50人居ると知ると、性豪であると羨ましがられていた。

 

「どんな怪物かと思えばしっかりした若武者じゃないか」

 

 まぁ顔は童顔で凛々しい顔をしているが、身体はコラ画像の様に筋骨隆々の高貞だ。

 

 秀吉殿も言葉を選んでいるが、化け物って言っても俺は怒らないぞ……。

 

 秀吉殿も今は横山城に住んでいるが、引っ越し作業を進めていた。

 

 というのも今浜と呼ばれる場所を信長様の長の字を頂いて長浜に改名し、長浜城という城の築城を行なっていた。

 

 横山城は狭いし、拡張性も乏しかったので最初は小谷城が候補地であったが、城下町の拡張性を考え、長浜が選ばれた。

 

 秀吉殿は今までの築城技術を総動員して立派な城を作る気でいる。

 

 信長様も期待してこっそりと資金提供や人夫を送っていたので力の入れようが分かる。

 

「お市様、今日も美しい」

 

 秀吉殿は相変わらず市の事が好きらしく、嫁の1人として横山城に来城した市を手厚く持て成していた。

 

 なんなら俺よりももてなしている気がする。

 

 そしてお約束のようにねねさんに叱られて退場するまでがセットであり、俺達はそれを笑うのだった。

 

 横山城を出発すると、陸路で北上し、朝倉と激戦の行われた土地を通り抜ければ、越前国である。

 

 先行して一乗谷に入っていた武田恵瓊と大蔵長安の2人の出迎えが行われたが、とりあえず仮住まいとして朝倉館に入る。

 

「広い!」

 

「前の家よりも広い!」

 

 子供達は前の家よりも広い朝倉館に大興奮。

 

 ただここはあくまで仮住まい。

 

 ここより少し北に足利義昭が数ヶ月滞在した屋敷があり、そこを改築し広げ、そこを俺と家族の屋敷にして、この朝倉館は政務を執り行う場所にしようと決めていた。

 

 大蔵長安もその事を汲んでいたのか、既に改築用の資材の準備を進めてくれていた。

 

 一乗谷はまだまだ拡張性があり、朝倉館周辺の土地は旧朝倉重臣の屋敷等も多く、そこに家臣達の新居として提供していた。

 

 一乗谷は上町と下町の北と南で分けることができるが、俺の家臣達は上町に収まり、兵士達の住む場所として下町の空き地を活用することにした。

 

 そして一乗谷には使われなかった一乗谷城という城もあり、そこら一帯は忍びの里を新しく作ることを提案し、城の土地は忍び達の宿舎が次々に建てられていくのであった。

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