【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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長篠の戦い 前編

 冬の間に徴兵して、兵士を鍛え、春頃に行われる信長様の本願寺討伐に向けて準備を整えていた。

 

 正直加賀方面を一気に潰してしまいたい気持ちがあるのと、俺が留守にしたら加賀から一揆勢がなだれ込んでこないか心配になったが、忍び達曰く、一揆勢達も越前や加賀の新領土で俺が低年貢かつ善政を敷いていることが伝わったことと、戦になると鬼のように強い津田軍の事を恐れるようになり、一揆勢の中でも農民達が僧兵達の指示を拒否することが増えているらしい。

 

 しかも去年の戦で多くの兵が討たれたことで流石の一揆勢も兵の立て直しが難しくなっていると耳にする。

 

 労働人口である青年や中年男性を多く失ったことで元服直後の12、13歳の男児や女性まで動員して頭数を揃えていると聞くと、瓦解までもう一押しといったところだろうか。

 

 かれこれ2回の一揆勢との戦闘で5万人近く葬っているので、この時代の加賀の人口20万人前後と忍び達の調べや朝倉氏から吸収した家臣達の報告で目安がついていたため、そのうちの5万人が居なくなれば国としてガタガタになっていることだろう。

 

 なので攻めてくるという心配はしなくても大丈夫そうである。

 

 とりあえず常備兵として8000人ほど兵を集め、鍛えることができた。

 

 美濃から連れてきた兵達もここ最近連戦だったので休ませる意味も込めて加賀の新領土の防衛に2000名ほど配置。

 

 攻めてこないと思うが一応ね。

 

 他越前の防衛に1000名で各城に200名から300名詰めてもらい、残りの5000人が遠征軍である。

 

 信長様より火薬の提供があったので、鉄砲の訓練を元雑賀衆の人達を教官として教えさせ、あとは石弓の量産体制が整ってきたので、石弓を装備させた。

 

 1500名が鉄砲隊、槍隊500名、騎馬隊500名、石弓隊2500名という割り振りである。

 

 あとは臨時徴兵した荷駄隊1000名といった感じかな。

 

 こうして準備が整った頃には田植えの時期になり、信長様は本願寺の抱える農民達が田植えを行う為、本願寺から出てくるのを狙う形で出陣。

 

 各地から織田軍が集まり5万もの織田兵が石山本願寺を取り囲んだ。

 

 信長様の命令で、三好残党が石山本願寺近くの城に立て籠もっていた為、潰すように言われたので、石山本願寺との決戦前の試射として小さな城の城攻めを行った。

 

 それはもう虐殺で、まず忍び衆が夜のうちに城壁に近づき城門や城壁を爆発、夜通しで修繕作業を行なっている敵に対して早朝から津田家で鍛えられた身長180センチ以上しか入れない巨人隊という大筒部隊を前面に出し、その巨体と怪力で抱える大筒から砲弾を発射していく。

 

 実際のところ水平射撃をすると言うより、迫撃砲の様に曲射をする大砲が津田が作り出した大筒であり、個人で持ち運ぶのに力自慢じゃないと運べないからラグビー選手の様な巨人隊が大筒を運用していたのである。

 

 射程距離も水平射撃で500メートル、曲射にすると1.5キロも飛び、川を巧みに使って水堀の様にしていた城であったが、対岸から砲弾を次々に撃ち込まれたのである。

 

 しかもその砲弾の一部は花火の様になっており、時間差で砲弾が破裂して周囲に鉄片をばら撒く榴弾の様になっていたため、城では2キロ離れた俺の陣からでも敵の城からの悲鳴や破裂音がよく聞こえた。

 

 砲弾の数発が城の本丸にある屋敷に直撃したらしく陣からも城内の屋敷が崩れるのを目撃し、少し遅れてドシャっと建物が崩れる音が響き渡った。

 

 砲撃は1時間ほど続けられ、合計1600発ほど撃ち込まれた。

 

 その後渡河して城に突入するも、殆どの城兵が戦死しており、城にはズタズタになった肉片だったり、血だらけの敵の亡骸が転がっているだけで、敵将達も城が崩れたことで下敷きになり壊滅。

 

 こちらは大筒の暴発で怪我をした1名を除き、被害は0。

 

 前哨戦を完勝することに成功したのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ただここで武田軍が徳川領の要所である長篠城を包囲し、徳川家康様から長文の救援要請が届き、もし信長様本人が救援に駆けつけないなら武田と講和して三河一国の安堵と引き換えに和睦し、武田軍が尾張に侵攻しても一切抵抗しないという凄い内容が書かれていた。

 

 信長様は徳川家康様が我慢の限界に達していることを理解し、陣払いをして本願寺を牽制するため佐久間信盛に2万の兵を預け、残りの約3万の将兵を率いて三河に直行。

 

 事前に信忠様に兵5000を授け、柴田のオヤジ殿と共に三河入りするように指示していた事もあり、三河に到着する頃には兵数は4万を超える数が集まり、一旦三河の岡崎城に入城。

 

 その後家康様と連絡を取り合って長篠城近郊に軍を進めるのであった。

 

 

 

 

 

 長篠から約4キロと少し離れた設楽原に布陣した信長様は織田、徳川の将達が集まった場で軍議を開く。

 

「家康、武田軍の兵数は分かるか」

 

「おおよそ1万5000ほど」

 

「ふむ……家康はどうしたい」

 

 今回の戦はあくまで家康様に対しての援軍。

 

 兵数は織田軍の方が多いが、主導権は徳川にあるべきと信長様は配慮していた。

 

「やはりここで武田と決戦を挑み、武田からの圧力を払拭し、徳川の武威を回復しなくてはなりません。現に奥三河と遠江半国を武田に占領され、苦しい状態が続いております。何とか打撃を与えたいと」

 

「ふむ……ならば武田の逃げ道を塞がなければならぬな……長篠城救援及び武田の退路となる鳶ヶ巣山砦を落とす。家康、こちらから誰が欲しい」

 

「したらば津田又兵衛殿を欲します。こちらは酒井忠次に兵1000名を付けます」

 

 名指しで俺のことを指名。

 

 一番きつい場所を任されたなこりゃ……まぁ武田には三方ヶ原の借りがある。

 

 きっちり返させてもらわないとな。

 

「作戦を話す。武田本軍を釣り出す為にここ設楽原の陣が武田方(長篠城付近)から見えにくい事を利用し、野戦陣地構築を行う。ここの地形は湿地が続いており、移動するのに足が取られ、更に小川が流れているから渡河しなくてはならない」

 

「更に敵兵がこちらの陣に近づくには湿地を通り抜け、台地に馬防柵を建てる。そこから絶え間なく銃弾を浴びせることで武田の士気を削ぐ。撤退に追い込んだら容赦なく追撃を行う」

 

 ここで家康様が今の作戦に疑問を呈する。

 

「信長殿、武田がそれでは攻めてこない可能性がなかろうか?」

 

「そのために囮を使う。猿(羽柴秀吉)、金柑(明智光秀)、権六(柴田勝家)、一益(滝川一益)、お主らの部隊を武田の陣から見える位置まで前進させて武田を釣り出せ。方法は問わん。釣り出せたら兵を退き、陣まで戻ってこい。武田が釣れたら馬と酒井忠次の部隊を進ませ鳶ヶ巣山砦の襲撃と長篠城の救援を行う」

 

「「「「は!」」」」

 

「家康、武田勝頼は焦っている。家督の継承に随分と家臣達と揉めていると聞く。武田を纏めるためには武功を家臣達に示さなければならない。そこに余と家康という敵の大将が出てきていることを知れば、焦りから必ず釣られる」

 

 数多くの戦に俺は従軍してきたが、金ヶ崎の撤退戦を除いて信長様は相手の心理状態を読むことに長けている様に感じる。

 

 桶狭間の戦いでも俺は又聞きであったが、今川義元の行動を全て読んでおり、1つ1つ勝ち筋を手繰り寄せて勝利に導いた。

 

 今回の戦は信長様にとって武田勝頼の心理を読むのは簡単なのであろう。

 

 敵大将の心理状態を事前に収集した情報から把握し、ここで決戦になれば武田に致命傷を与えられると判断。

 

 大局を見る戦略眼とそれを達成するための戦術……その両方が高次元で纏められているのが織田信長という男である。

 

 俺は信長様が史実で天下統一に王手をかけた理由がよくわかった。

 

 

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