【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

125 / 202
長篠の戦い 後編

 鳶ヶ巣山砦を落とした俺と酒井忠次殿は長篠城兵を休ませると共に、今後どう動くべきか馬で移動しながら話していた。

 

「とりあえず作戦目標であった長篠城の救援と武田軍の退路を断つことには成功した。今ごろ武田は敵中突破して織田、徳川に打撃を与えようと躍起になっていることだろう」

 

「では我々は武田を背後から脅かす事をするべきかな」

 

「それもいいですが、武田は豊川の川沿いを北上して撤退をするはずなので待ち伏せをするのも良いかと」

 

「ふむ……確かにこちらの部隊は鉄砲や弓の兵が多いからな。待ち伏せの方が良いか」

 

「幸い豊川付近は起伏のある土地が多く、兵を隠すのには良いかと」

 

「うむ、津田殿の案でいこう」

 

「は!」

 

 鳶ヶ巣山砦にも兵を残しつつ、大半の兵を引き連れて武田が撤退するであろう退路に待ち伏せを行うために隠れる。

 

 その間も忍びを使って本戦の情報収集を行うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 霧丸達忍び衆により情報が逐一更新され、まず織田軍の挑発に乗った武田軍の一部部隊が前進し、それに釣られる形で武田本隊も前進。

 

 両軍設楽原で睨み合いの末に、武田軍が突撃を開始しては鉄砲で撃退されると言うのを繰り返し、武田はあくまで威力偵察程度に留めていたが、鳶ヶ巣山砦が陥落したことで、損害覚悟で織田、徳川軍にダメージを与える作戦に切り替え、全軍による突撃を開始。

 

 待ってましたとばかりに大量の銃弾が撃ち込まれ、武田軍は次々に倒れていき、更に地形が武田軍を苦しめた。

 

 武田軍の陣地から織田軍の馬防柵までおおよそ400メートルから500メートルであったが、その間に20メートルの下り坂を降り、真ん中にある川を渡り、更に膝近くまで沈みかねない湿地が広がっており、更に20メートルの上り坂が待っている。

 

 この様な地形だと騎馬による突撃も効果が無く、逆に馬を織田、徳川鉄砲隊が集中して狙うので落馬が相次ぎ、痛みで暴れまわる馬達が突撃する武田軍を邪魔するのである。

 

 しかも織田軍は火薬の製造に成功しているし、南蛮貿易と領内の鉛鉱山により大量の弾薬を持ってきていたので弾薬が尽きることは無い。

 

 対して武田は織田によって経済封鎖を食らっていることや、駿河を領有して水軍を創設することはできたものの、貿易船が来ることは稀であり、更に鉛鉱山が徳川から奪取したばかりの奥三河の鉱山しか無かった為、銭を溶かして弾薬にする始末。

 

 火薬も自前で作れないので弾薬の調達に苦労していた。

 

 更に武田軍は長篠城を早期に落とすために、限られた弾薬を集中投入してしまった為に、設楽原の決戦では早々に弾薬が切れてしまい、武田の鉄砲隊は沈黙してしまったのである。

 

 火力の劣勢を突撃で覆そうとしたが、それも効果が無く、損害が増えるばかり、将の中にも戦死者が出たことで耐えきれなくなった武田軍は撤退を開始。

 

 それを待ち望んでいた織田、徳川軍は馬防柵の内側から兵が飛び出し、武田軍を背後から猛追を開始。

 

 武田軍の将達は自らが囮になることで武田の他の将兵を逃がそうと踏ん張ってしまう者が続出してしまい、追撃してきた織田、徳川軍によって次々に討ち取られてしまう。

 

 更に退路に伏せていた俺と酒井忠次殿の部隊が逃げる武田軍に対して容赦なく弾丸や矢を浴びせて、川沿いは武田の血で真っ赤に染め上がる。

 

 武田軍がほぼ居なくなったことで合戦も終了。

 

 俺は信長様の本隊に合流して合戦の報告に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よくやった馬! 流石馬だ! 長篠城救援、鳶ヶ巣山砦攻略、そして撤退する武田を待ち伏せと余の理想通りに事を運んだな! 褒めるぞ!」

 

「ありがたき幸せ」

 

「ただ今回の武功1等は権六(柴田勝家)だな。あやつ叔母と子供ができたからと張り切りおって……武田の山県昌景を討ち取る武功を挙げたからな」

 

「それはそれは……柴田のオヤジ殿に祝言を贈らないとですね」

 

「それに家康の部下の酒井忠次と言う男も凄いな。馬から見てどうだった」

 

「凄く優秀な将ですね。織田家に居たら方面軍を任されるだけの器はあると思いますよ」

 

「それほどか! いや、確かに軍事的な才能は徳川でも抜けておったな。良いなぁ家康」

 

「信長様、私が穴埋めしますので」

 

「なに、織田家中でも優秀な者は多く居るからな。居ない者を望んでも仕方がないか……さてと戦後処理をしなければならんな。今回の戦、あくまで徳川の援軍故に褒美が悩むな」

 

「私は加賀の切り取り自由を貰っているのでそれで十分ですよ。もし褒美に悩むようでしたら与力として活躍した将を何人かくれませんか? 北陸の土地はまだあるので与えようかと」

 

「そうだな……何人か送ろう。馬が領地を出せるなら養ってやってくれ」

 

「は!」

 

「そうだな……堀(堀秀政)、佐々(佐々成政)、不破(不破光治)、あと京極の倅を送ろうか」

 

「信長様の小姓頭の堀殿をこちらに付けて大丈夫なのですか?」

 

「うむ、堀もそろそろ将として飛躍してもらわねばならぬからな。経験を積ませる意味でも馬に預けよう。なに、小姓連中も最近堀に頼ってばかりになっていたから良い刺激になるだろう」

 

 佐々成政は前田利家のライバル的な立場の者で、2つの母衣衆のリーダーを前田利家と佐々成政が率いていた。

 

 現在は武将に昇格し、元々武芸は優れていたが、現在は鉄砲隊の部隊運用の名人として浅井攻め、長島一向一揆鎮圧、柴田のオヤジ殿と飛騨攻め、そして今回の長篠の戦いでも設楽原本隊で鉄砲1000名を率いて戦い、武将を数多く討ち取っていた。

 

 不破光治は美濃の国人で、織田家に臣従してからは多くの戦いに転戦し、経験豊富な指揮官である。

 

 京極の倅は京極高次の事で、元々浅井家を家臣としていた家柄だったが、下剋上により京極家は没落し、織田と浅井が敵対した際に京極高次の父が信長様に人質として送られたのが彼だった。

 

 信長様は京極高次の事を気に入り、部下として育て、長篠の戦いにも従軍。

 

 まだ若いが経験を積めば良い武将になるのではないかと期待を込めての人事らしい。

 

 まぁ彼らとは後々面談するとして、戦後処理をしていこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「……」」」

 

 首実検をしていたのだが、想像以上に武田の家臣達がずらりと並んでいた。

 

 まず武田四天王(馬場信春は三方ヶ原で戦死しているので、実質3名になっていたが)の全員、武将クラス40名、そして総大将だった武田勝頼の首もそこに並んでいた。

 

「信長殿これは……」

 

「うむ、想像以上の戦果だな」

 

 信長自身もまさか武田勝頼を討ち取っているとは思わず、大いに驚いていた。

 

 そして武田軍の中枢がこれで壊滅したことが判明し、更に武田軍が1万5000いたうちの1万2500以上が戦死していることが死体の供養をした結果判明した為、武田軍はもう組織的な抵抗は不可能であろうと信長様は判断を下した。

 

「権六(柴田勝家)、信忠」

 

「「は!」」

 

「お主達は飛騨方面から武田領に準備が整い次第侵攻せよ」

 

「御意」

 

「わかりました父上」

 

「一益(滝川一益)」

 

「は!」

 

「お主は徳川と協力し、奥三河方面より信濃の武田領に侵攻せよ」

 

「は!」

 

「家康は駿河奪還からか?」

 

 信長様は家康様に問いかけると、家康様は頷き、駿河から甲斐に向かって侵攻すると信長様に説明していた。

 

 信長様の今年の軍事目標を本願寺から武田に変更し、武田が桶狭間の今川以上に混乱している今を機会に滅亡させてしまおうと画策し始め、それに向けて動き出すのであった。

 

 こうして武田との決戦、長篠・設楽原の戦いは織田、徳川連合軍の圧勝と言う結果になり、織田の天下統一が現実味を帯びてくるのであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。