【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
今年も無事に秋を迎え、収穫の季節がやってきた。
今年の米も大豊作で、例年の4倍……いや、6倍近くの収量を誇る農家も現れるくらいの大豊作。
領民達は嬉しい悲鳴をあげながら収穫作業に勤しみ、俺達武士はそのうちの4割を年貢として徴税する。
そんな最中、俺はとある実験の成果を確認していた。
「うーん、ぼちぼちという感じかな」
前々から俺の精液を丸太に塗ってキノコ栽培をしていたが、換金性の高い椎茸の人工栽培ができないか、忍び達と実験を美濃にいた頃からしていたのである。
それがようやく実を結び、椎茸栽培に適した木がクヌギやコナラであること、その原木に椎茸の胞子と水を混ぜた液体を塗りたくり、ホダ木として椎茸が生えてくるのを待つ方法と、完熟したホダ木の木片を他の原木に移すことで椎茸を生やす方法の2つを発見することに成功したのである。
ただ、現状成功率は5割ほど。
というか、俺が前世で農業関連の雑誌を読んでいた時に噂になったキノコ増殖バグ……椎茸のホダ木を椎茸が生えてくる時期にハンマーで10回程度刺激を与えると生えてくる量が倍になるというリアルハックが存在する。
元々は雷が落ちた周辺からはキノコが生えやすいという伝承を実際に実験してみた結果、振動がキノコ栽培に大きな影響を与えるということが判明し、そこからハンマーで叩いても同様の効果が得られるという経緯で発覚した栽培技術である。
椎茸栽培を担当した忍び達も俺の言葉に半信半疑であったが、実際に叩いたホダ木と叩かなかったホダ木では生えてくる椎茸の量が全然違くなり、忍び達はますます俺を崇拝することに……。
とにかく、忍び達が暮らす山々で行われた椎茸栽培により、今年は約60キロほど椎茸を収穫することに成功し、それを乾燥させると約6キロまで重さが減り、それを明との密貿易商人に売りつけたところ、商人は大喜びし、大量の質の良い明銭と交換してくれた。
一貫銭(銭千枚)が入ったびっしり入った箱5箱……1箱に25貫入るとして、5箱で125貫……現代の価値だと1500万くらいになるのか?
『津田の殿様、我らの国明では椎茸は高級食材。そして多くの需要がある食材です! 蜂蜜も私としては祖国で金になるので良いですが、椎茸ももっともっと輸出してくれると嬉しいです!』
そう言われた。
まぁ蜂蜜に至っては、忍び達の主要な収入源かつ、俺の領地の金蔓だからな。
椎茸と一緒に蜂蜜の壺を250個売ったら、明商人は1壺50貫で購入してくれたので、1万2500貫……現代価格15億円で取引してくれて、石高換算だと2万5000石分の収益となる。
1回の貿易でそれだけ利益が出るとなるとウハウハが止まらない。
今年は年4回寄港だったので4倍で5万貫……10万石分の利益が出ていた。
養蜂が完全に収入の柱となっていた。
「椎茸栽培が本格化して養蜂と椎茸が機能すればもっともっと明から銭を輸入することができる!」
更に貿易で儲けた金を産業や治水工事に投資することで産業を育てることに繋がり、金が金を呼び込む好循環を生み出していくことになるのだった。
武田家が事実上崩壊したものの、武田を慕う領民が抵抗することが予想されたのだが、ここで俺が仕掛けていた時限爆弾……ジャガイモの連作障害という爆弾が爆発してしまった。
米が取れる信濃はともかく、稲作に向いていない甲斐では収穫量が多く、腹が膨れるジャガイモを積極的に取り入れ、栽培を推奨していたらしく、連作をすると収量が下がることを知らなかった甲斐の住民達は米の代わりに育てていたらしいが、連作障害による大不作が発生してしまったのである。
武田家の生き残り達は領民の不満を抑える事が出来ず、大規模な一揆が発生。
大国が崩壊する時はあっけなく、信濃国人達は武田を見限り、織田や徳川、上杉に臣従し、約3ヶ月で分割は完了。
本拠地の甲斐も滝川一益殿が織田領内から食料を買い集め、農民に振る舞うということをしたことで一揆を沈静化させ、民に織田の統治を受け入れる事を民に認めさせたのである。
武田旧臣達も一部は滝川一益殿に従い、一部は武田家滅亡に際して自害し、結果滝川一益殿は信長様より甲斐一国を与えられ、伊勢半国と甲斐の1国半の領地を持つ大名家臣になるのだった。
なお滝川一益殿はこんな土地よりも茶器が欲しいと嘆いていたが……。
これで織田家は摂津の石山本願寺を除けば、畿内ほぼ全域、北は越前東は甲斐まで織田家の領地が広がり、実質14国半を手中に収める超大国となった。
これに対抗できる戦国大名は現状存在しない。
まぁ追放された足利義昭が懲りずに毛利と上杉、北条の同盟を締結させようと頑張っているらしいが、上杉と北条は犬猿の仲であるためほぼ無理だろう。
まぁ上杉謙信の養子に北条の息子が入り込んでいるので、そこから再びの同盟を結べる可能性もあるが、北条が一度同盟を自分の都合で破棄しているので、義将であることを信念としている謙信は激怒しているんだよな……確か……。
他国の人間である俺の耳にも入っているって相当だぞ……。
とにかく、これで武田家は滅亡し、徳川も駿河を奪還、今川全盛期を超える領土を手にして、織田との同盟を再確認。
織田家は多方面作戦をしても揺るがないだけの勢力を手に入れることになったのだった。
情勢が追いついてきた10月頃、俺は雫の子供である国丸の元服を執り行った。
「国丸改め、毛受近国(ちかくに)の名を授ける。津田家の一門、毛受家の当主とし、兄弟と協力して津田家をもり立ててくれ」
「は! 父上」
これで長男の高貞含めて津田一門の男子は5人元服を迎えたことになるな。
というか俺の子供、女子の比率が高いんだよな。
現状3対1くらいで女子多いし……。
まぁ女子達は家臣達に嫁がせたり織田家で良さそうな人物に声かけて信長様に許可取って嫁がせたりしているけど……。
「これでとりあえず毛受家の系譜は大丈夫だな」
まぁ信長様との約束で津田家を継ぐのは市との男子って決まっているけど……。
市も男子産んでいるからその子に家督継がせる気満々だけど、その子が元服する頃には信長様、天下統一達成しているんじゃないかと思ってしまうが……。
まぁ今後上杉、北条、毛利と大勢力がどれぐらい抵抗するかに全てかかっているか次第だけど。
「うーん、俺はなるべく早く加賀ぶっ潰して対上杉に備えねぇといけないな……さてと、次の戦に向けた準備を進めますかね」
俺は加賀攻めへの準備を進めるのだった。