【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
正月のお休みが終わり、1月も下旬になった頃、信長様が再度石山本願寺を倒すために兵を挙げた。
信長様を総大将に、副将は明智光秀殿が担い、脇を固める。
総勢10万人の大軍勢で石山本願寺を取り囲み、本願寺側の兵糧切れを狙う作戦であった。
信濃方面の柴田のオヤジ殿や滝川一益殿、そして嫡男の織田信忠様を旧武田領に展開させ、播磨方面でも秀吉殿を展開させているのに、これだけの大軍勢を集められる信長様は流石である。
信長様から俺達北陸方面軍にも加賀の一向一揆に引導を渡すように言われ、兵の招集を開始。
約3万の軍勢を集めると加賀への侵攻を開始するのであった。
「異様な光景だな」
「そうですね」
俺と副将の島は新しく創設された銀輪部隊……自転車部隊が騎兵達と一緒に行軍する姿を見て、戦国時代なのに旧日本陸軍みたいな格好をしているため、違和感が半端ない。
いや、最新かつ精鋭部隊なんだけどね……。
シャーっとママチャリの様な自転車を漕いでいる屈強な男達……うん、シュールだな。
それは良いとして、霧丸率いる忍び衆の情報によると加賀一向一揆は前の敗戦で寺への求心力が大幅に低下しており、寺側が俺達の事を仏敵と叫んでいるそうだが、どんどん豊かになる越前と、どんどん貧しくなる加賀を比べ、更に働き手の男の多くが戦死もしくは性転換してしまったので、田畑の維持も難しくなってしまっているとのこと。
そこに寺や軍事の再建、石山本願寺への救援物資の抽出などでお布施を強要したことで一向宗への民意はどんどん低下していっていた。
そこを突くかのように、新興宗教神仏ガブリエル教が傷口に浸透するバイ菌の様に加賀の津田領内から伝染し、疲れ果てた民に伝播しているとのこと。
それも合わさり、一向宗はこの度の津田軍の侵攻に際して2万程度しか兵が集まらず、その集まった兵も元服したての少年達や普通なら戦力にならない老人、女性まで加えた出涸らしの様な陣容であるらしく、士気も低くなっていた。
一向一揆の強さであった兵数有利も無くなり、しかも軍事指導員であった僧兵も前回の戦いで多くが討死していたので、軍事行動ができる現状でも奇跡であった。
ここまで追い込んでもまだ戦えるのが一向一揆の恐ろしさと言えるが……。
もう1つ、気になる情報が上杉謙信の動きである。
信長様は上杉謙信に贈り物を贈って融和外交を心がけていたが、足利義昭を追放したことで険悪な関係となり、明らかに西に向かった軍事行動を行おうと画策していることが忍びの情報でわかった。
ただ北条との関係は拗れまくって上野方面で戦闘が発生していること、武田の急速な瓦解により信濃方面にも戦線を抱えてしまったことで、動きづらくなっていたのだが、前年に石山本願寺との和睦が成立したらしく、一向宗を気にすることなく越中へと侵攻することが可能になっていたのである。
現在越中に上杉謙信が動いたという情報もあり、早期に加賀一向一揆を下す必要が出てきたのも俺がこのタイミングで加賀に侵攻を開始した理由であった。
「加賀再建を考えると頭痛がする」
「又兵衛様でも難しいですか」
「あのな島……俺が内政が得意だからといって、減りまくった人口を回復させるには20年はかかるからな」
「20年で回復できるんですか……」
俺の発言に島はこの状態の加賀を時間は掛かるが立て直せると聞いて驚いていた。
産めよ増やせよを実現すればなんとかなるだろう。
(毛受)高貞の爆発的に増え続けている子供達に与えていけば多分すぐ埋まるだろうし……。
「さて、見えてきたな」
加賀の中でも一番大きな川である手取川を挟んだ対岸に一向一揆軍が陣を構えていた。
「正攻法で倒すと犠牲が多くなるな……(毛受)音将を呼べ」
「は!」
近くに居た家臣に俺の三男である音将を呼ぶように伝えた。
数分後、音将がやって来た。
「親父、何のようだ?」
「対岸の一向一揆勢にお前の巨人部隊が運用している大筒で砲撃して欲しい。とりあえず蹴散らせれば十分だ」
「それは可能だが、一揆勢が逃げ出さねぇか?」
「手取川を越えてしまえば一向衆が防衛線を引ける場所はもうない。一気に本拠地の金沢御坊を焼いてしまえば組織として瓦解している一揆勢は地下に潜ることもできんだろう」
「なるほど……了解だ。親父」
音将に指示をすると、俺は他の部隊に渡河準備を言い渡し、侵攻準備を整えていくのだった。
大筒部隊が対岸に向かって砲撃を開始すると、鉄球や花火のような榴弾が次々に対岸に居た一揆勢に着弾。
元々低かった一揆勢の士気は崩壊し、散り散りに逃げ始めた。
「さて、俺もいっちょやるか!」
俺は種付けおじさんの特殊能力を活用して手取川を渡る方法を思いついていた。
おもむろに鎧や服を脱ぎ始めた俺を見て、本陣に詰めていた将達は気が触れたかと思っただろうが、家臣達はまた神通力で何かすると思ったのだろう。
俺は川に向かって歩き、思いっきり放尿する。
すると放尿した矢先、川が凍り始め、人が渡っても大丈夫なくらい氷が張ったのである。
性技に浮き橋という体位があることを思い出し、種付けおじさんなら橋を渡すことができるんじゃないかと思ったが、氷の橋が出現したのである。
これには将達はドン引き。
利家と堀の2人は又兵衛らしいと笑っていた。
家臣達もいつものことだと思いながら渡河を始める。
俺は服と甲冑に着替え直して、氷の橋を渡り始めるが、鮭の幼体が氷の橋に群がって氷の欠片を食べ始めていた。
その姿が橋を支える支柱や橋板を浮かせる船に囲まれているように見える。
これは確かに浮き橋だな。
迅速な渡河に成功した津田軍は行軍を開始し、騎馬部隊が先行して逃げる一揆勢を追撃し、次に自転車部隊、最後に歩兵の部隊が追いかける。
半日で金沢御坊……金沢の門前町に到達。
「拡張性が高い良い町だな」
石川県の県庁所在地になるだけのことはある。
近くに川が2カ所も流れていて水回りも良く、門前町の外には田畑が広がっている。
ただ、そんな一揆勢の本拠地近くの田畑なのに、ところどころ放棄された畑も見れる。
耕せる人手が減って放棄されてしまったのだろう。
「……早く戦乱の世を終わらせないと」
金沢御坊に津田兵達が突入し、火の手が上がる。
焼け落ちていく寺を見ながら、俺はそう思うのであった。
こうして第三次加賀一向一揆殲滅戦により、一向一揆は壊滅し、加賀は織田北陸方面軍の支配地域に組み込まれるのであった。