【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
全軍が集まるまでまだしばらく掛かり、俺はそれでは寡兵で防衛戦をしている島の身が危険であると判断し、4日以内に参集した兵1万人を先に率いて出陣。
まだ集まりきっていない残りの1万5000人はうちの重臣である稲葉重通と、なんでもこなせる万能超人の堀秀政の2人及び万が一を考えて、北陸方面軍の大将である織田信道様や同じく津田の名跡を持つ津田信澄殿も後発の部隊を率いてもらう。
島の救援に向かう1万人の軍勢の参加武将を紹介していこう。
大将が俺こと津田又兵衛。
副将 土橋守重
副将 的場昌長
与力 前田利家
与力 不破光治
与力 佐々成政
与力 京極高次
一門 毛受高貞
一門 毛受初鳴
一門 毛受音将
一門 毛受継成
一門 毛受近国
他に武将として菊八や熊部、栗犬に旧大和国人の家臣達や元忍びの家臣達、朝倉の残党から引き抜いた者達なんかが並んでいく。
足軽大将以上の者、総勢42名に参加してもらった。
「皆の者! 本作戦の第一目標は島の救援だ! そして第二陣が集まり次第決戦とする! それまでは防戦に比重を置く……良いな!」
「「「は!」」」
「では出陣!」
ほら貝が陣太鼓が鳴り響き、仮の拠点にしていた加賀の城から俺達は一斉に出陣する。
待っていろよ島!
必ず助けに行くからな!
一方の島はというと上杉軍の猛攻にさらされていた。
「島様、第一防衛線突破されました。現在第二防衛線にて戦闘が続いております」
「仮曲輪は放棄し、敵を吸引し、鉄砲隊の射線におびき出せ」
「は!」
島の籠る場所は城ではなく砦である。
しかも元々は館であった為に防御力はほぼ無く、数週間かけてとりあえず砦と呼べるくらいに改造した急造の砦である。
なので島は塹壕の先駆けになるような空堀や落とし穴を幾つも掘り、敵兵が突撃してくる勢いを限りなく殺すことに注力していた。
突撃の衝撃が少なく、大人数が展開できない道幅にしておけば敵兵の侵攻を守るのは比較的容易い。
過去幾度の合戦でも活用されてきた戦法である。
更に島を有利にしていたのは雪である。
北陸は豪雪地帯であるため、雪に足を取られて侵攻速度は比較的緩やかであり、吹雪けば侵攻不可能となる。
その為島は約3倍近い兵数の上杉軍に防戦することができていた。
「しかし、上杉軍は何故雪の上を行動可能なのだ!」
ただ上杉軍は雪の上でも戦闘が可能な工夫が施されていた。
それは雪国では一般的なかんじきと呼ばれる藁で作られた雪上歩行具の一種である。
異国ではスノーシューとも呼ばれている。
勿論存在自体は島も知っていたが、全軍にかんじきを採用して行軍するというのは聞いたことが無い。
しかも上杉軍は白い布を鎧の上から被さり、雪に擬態することで、鉄砲から射撃の的になるのを防いでいた。
豪雪地帯ならではの戦い方である。
「軍神の名は伊達ではないか……」
島軍は刀ではなくシャベルを部隊に支給し、雪かきして自分に有利な陣地を作りながら攻撃する戦法をしていた為、上杉軍からしても奇妙な軍に見えていたため、お互い様である。
「やはり雪上行軍は軍神の謙信公でも難しいらしい。防戦に徹していれば時間は稼げるか……」
「失礼します」
伝令兵の1人が陣に慌てて飛び込んできた。
「何事だ!」
「能登の七尾城が落城し、畠山氏は滅亡しました」
「上杉軍が侵攻して、まだ1週間も経過していないぞ! なぜそんなに早く落城するのだ!」
「は! どうやら徹底抗戦を主張していた者達が、上杉降伏派の家臣に殺されたらしく……また、若輩ながら当主だった畠山春王丸様がご病気で急死してしまったのも影響してかと」
「うむむ」
事前の作戦では七尾城と島の防御陣で2週間の時間を稼ぐという戦略で動いていたが、七尾城落城で、戦略が破綻。
時期に七尾城を攻めていた上杉別働隊もこちらに押し寄せるとなると、兵数差が6倍となってしまう。
そうなれば流石に支えきれないと思っていた中、別の伝令兵が飛び込んできた。
「津田様出陣! 部隊を2つに分け、先に1万の兵と共に救援に駆けつける次第で!」
「よし! 又兵衛様が来られるのであれば持ちこたえられる! 兵達に伝えよ! 又兵衛様が近日中に来られると」
「は!」
その後も3日間に渡り一進一退の攻防が続けられるが、島はなんとか陣地の防衛に成功するのであった。
「島! よく持ちこたえてくれた!」
「いや又兵衛様、期限の半分しか持ちこたえられてなかったですが……助かりました。七尾城が落城した時はどうなることになるかと思いましたが」
「畠山氏は滅亡か」
「恐らくは……親族はまだ居ますが、畠山の直系は断絶になります」
「戦国の世の習いか……」
初期戦略が破綻したため、作戦を練り直す必要がある。
上杉は別働隊を取り込むことで兵数は再び上杉軍有利となり、一方で津田軍の後発組が合流するまで今しばらくかかる。
となるとこのまま防衛戦を続ける必要があるが、数が勝っているうちに上杉軍が何か仕掛けてこないとも言い切れない。
「さて、軍神は何を仕掛けてくるか……逆にこちらが仕掛けるか?」
「仕掛けるとは?」
「軍神の面を拝みに行ってくるんだよ」
「は?」
両軍、兵が増えた事で睨み合いになる中、俺は雪上を歩きながら叫んだ。
「上杉謙信公と話がしたい! 我は津田又兵衛! 織田北陸軍を任されている者なり! 軍神上杉謙信公と話がしたい!」
そう叫びながら上杉の軍に近づき、布を敷いて茶道具を広げると、敵兵達がいる中で、俺は茶を点て始める。
味方からは何をしているんですかとか早く戻ってきてくださいとかの悲鳴に近い叫び声が聞こえるが無視する。
すると敵兵達もざわつき始め、奥から白頭巾を着た男が前に出てきた。
「戦場のど真ん中で茶を点て始めるとは大した男だ」
「いや、謙信公と対話するのであればこれくらいしないといけないと思いましてね……小田原城攻めの弁当の逸話聞いております」
「ふむ、織田に広がるくらい有名になっていたか」
上杉謙信が関東の北条を攻めた時に、北条の本拠地小田原城を10万の大軍で囲んだのだが、小田原城は落ちる気配が無い。
そこで上杉謙信は敵兵を釣り出すために、北条方の矢や鉄砲が当たる距離まで近づき弁当を広げて食べて煽った逸話がある。
勿論北条は矢や鉄砲を幾度と放ったが、かすりはすれど、体に傷を付けることは最後までなく、弁当を平らげ、茶を3杯も飲み干したという話である。
俺がやったのはその再現とでも言うべきことか……。
まぁ謙信公であれば、この様な催しをしたら出てきてくれるのではないかという忍び達からの情報や集めた人柄から推察したのだが……本当に出てくるとは……。
さて、戦場の茶会と致しましょうか。