【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
信長様から半年間の時間を貰った俺は、越前に戻ると直ぐに兵力と兵器の補填に努めた。
特に、弾薬に至ってはもうあと1会戦分しか備蓄が無く、火薬の補充の為、硝石を作る場所の増産をしていたのである。
「どうだ? 硝石は採取できるか?」
「又兵衛様、この様な場所まで来ていただき感謝します!」
「いや、忍びのお前達に管理を任せているからな」
忍びの管轄は息子の毛受初鳴が統率しているが、その中でも火薬生産は秘匿し、忍び達により防諜しながら生産の拡大が行われていた。
表向きは肥料を作っていることになっているので、バレては居ない。
「ただ又兵衛様、申し訳ないですが、昨年も結構無理して硝石を採取したため、十分な備蓄を得られるかは微妙なところです」
「そうか……となると輸入するしかないか」
「はい……申し訳ございません」
「いやいや、十分成果をあげてくれているから責めるわけない。引き続き生産量を増やせるように頑張ってくれ」
「は!」
領内で火薬が足りないとなると輸入になるか。
「明との密貿易の交易量を増やさなければならないかな?」
俺は次に明との密貿易を担当している部署を訪ねる。
「張飛……フェイ?」
「ニーハオ……なんでしょうか? 又兵衛様」
担当官の張飛と書いてチョウ・フェイと読むフェイ君。
元々密貿易船で会計と通訳をしていたので、密貿易が活発になった時期にうちにスカウトした。
俺より5つ年下ながら、明るくて日本に馴染む努力もしている為、この密貿易の担当官に抜擢して取り仕切ってもらっていた。
「密貿易は現状どうなっている?」
「そうですねぇ……」
フェイ曰く、現在は冬前と夏前の2回貿易が行われているらしいが、密貿易業者の方はもっと貿易の量を増やしたいとのこと。
「できれば回数を増やせれば最高ですね。野分(台風)は避けたいので、できれば夏頃にもう1回品を載せられれば……」
「こっちは生産体制が整ってきたから売れるが……今明だと何が売れるんだ?」
「そうですねぇ」
越前との貿易で一番人気は蜂蜜らしい。
明の皇帝も蜂蜜が大好きで、各地でも薬として重宝されているため、あればある分だけ欲しいというのが現状らしい。
蜂蜜はこっちも生産量増やしているから問題は無い。
養蜂に適した場所を作っているので、まだまだ生産量は上げられる。
次に欲しているのは椎茸。
椎茸も栽培方法が確立したため、徐々に収穫量を増やすことができるだろう。
あとは織物と工芸品類も人気らしく、生産量が増えているならどんどん輸出してほしいとのことだった。
「あと明側が求めている品物の目録がありますが、こちらですね」
あとは孔雀だったり動物類が結構多いな。
孔雀は飼育できなくは無いが、売り物になるのだろうか?
「孔雀とかは飼育しても良いが、輸出するとしたら塩漬けになるぞ?」
「うーん、捌かれた物だと孔雀の肉か分からないので、生きたまま運ばないといけません。輸出というより貿易に来た船員を持て成す料理として孔雀肉を出すことはできないでしょうか」
「それなら構わないが……んん、これは」
俺が目にしたのはアワビだった。
「アワビがどうかしましたか?」
「……ちょっと養殖できないか探ってみるわ」
「え? 貝って養殖……できるんですか?」
「たぶんできる……アワビなら特に」
フェイには密貿易で鉛弾と火薬の輸入量を増やすことをお願いし、俺は海辺に行ってアワビ養殖ができないか確かめるのであった。
というわけで、一乗谷に流れている足羽川を進んでいくと九頭竜川へと合流し、そのまま海へと水が流れ出ているが、足羽川の上流で、俺が精液を流して豊作祈願をしているため、足羽川と九頭竜川下流では作物だけでなく川の生物も凄い勢いで成長し、巨大化していたので、九頭竜川と海が交わる場所近くの貝も凄い事になっているんじゃないかと期待した。
で、九頭竜川近くを縄張りとしている漁村を訪ねると、俺が領主になってから大漁が続いていて、この漁村も神仏ガブリエル教が侵食していたためか、神社に男根みたいな木像が奉納されていた。
そんな事は今はどうでもよい。
アワビの事を漁師達や海女さん達に聞いてみると、越前には海流の流れで、海藻が育ちやすい水温をしているので、海藻を食べて成長するアワビにとって育ちやすいらしく、素潜りすればよく採れると仰っていた。
「領主様的にはアワビ採取した方がええのか?」
「アワビなんか腐るほどあるでねーか」
「え? 腐るほどあるのか?」
「ああ、寒いかもしれねえが、海潜ったらわかるで」
冬の海に潜れとかこの漁村の村人達は殺しにかかっているのかと思えたが、彼らも腐るほどあるというのを信じてもらうには潜ってもらった方がわかりやすいと善意で言っている。
善意で言われたらしゃーない。
それに俺は種付けおじさん。
漫画とかでも極寒で震える少女に種付けをして体を温める事ができる様に、体温調整もお手の物。
極寒の海だってへっちゃらである。
「それでも冷たいものは冷たいがな」
冷たい海水に浸かること数秒。
体の周囲に体温で放出した膜みたいな物ができる。
水風呂とかに浸かって体育座りとかしていると、寒く無くなるあの現象と似たことを種付けおじさんの能力を活かしてやっていた。
「よし、いける」
素潜りを開始すると、岩礁に無数の貝や海藻が大量繁殖しているではないか。
手を伸ばせばサザエにアワビ、バイ貝に岩ガキが凄い事になっている。
特に岩ガキは海のミルクという異名や精力剤として活用できることから大量繁殖しているし、それらを餌にするタコも滅茶苦茶増えていた。
これで生態系が壊れてないのが奇跡だろう。
とりあえず鷲掴みしてタコと岩ガキ、アワビをいくつ取ってきて、浜辺に戻る。
「どうでしたか?」
「凄い事になっているな……特にタコの繁殖も凄い。タコ壺漁とかしないのか?」
「タコ壺漁……ですか?」
「あれ? 知らないのか?」
俺はタコが適度な大きさの壺に餌を入れて海に沈めておくと、壺の中に入り、それを引き上げればタコが釣れるというやり方を漁師達に教える。
「へぇ……そんなやり方があったんですか……」
「あれ~? 尾張の方ではやってる漁師も居たんだがな?」
どうやらタコ壺漁は越前ではまだ広まっていなかったらしい。
せっかく海産物が豊富なんだからと、漁師達に漁船や罠を用意し、なるべく弟子を取るように伝えたり、貝の採取をする海女さんを増やすべく、娼婦になれなかった女性達を海女に転職させる支援を行い、水揚げ量を増やしていく事をするのだった。