【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「銀子」
「なんだ? 又兵衛?」
俺は銀子に木刀を投げ渡した。
「ちょっと付き合えよ、毎日素振りだけじゃあつまらんだろう。それにもう少ししたらお腹も大きくなってくると思うからな。月ものも来てないんだろ」
「……お前に抱かれてから確かに月ものは来てないな……やはり孕んでいたんだな……」
「まぁ孕んでしまったからには産むんだろ?」
「まぁ堕胎は仏が許さんだろうからな……女になって子供を授かるか……」
「もう少ししたら腹が重くなって動けなくなるからな……さて、少し動こうか」
俺は銀子と共に庭へと移動すると、互いに胴防具だけ身につけた。
万が一腹に当たって流産になるわけにはいかないからな。
「さて、では」
「やろうか」
互いにすり足で近づき、距離を縮める。
まずは銀子が木刀を振り下ろす。
俺は自身の木刀を使って受け流し、銀子の木刀が地面に付いた瞬間に俺が蹴りを入れる。
それに対して銀子は体を捻って蹴りの勢いを殺す。
そして、互いに距離を取り直す。
「初っ端から蹴りか!」
「生憎、使える物は使えと柳生の道場で教わったからな。剣術と柔術を合わせた新陰流の技術に俺なりにアレンジしているがな」
「柳生と言うと大和の剣豪か。なるほど、又兵衛の剣術の基礎は柳生か」
「まぁ他にも織田家の家臣達から習った剣術や忍びの技術も取り入れているけどな」
「様々が入り交じった剣術なのだな……その方が戦は生き残れるのか」
それに型にはまった奴よりも俺は種付けおじさんの能力を活かした技が色々あるから、純粋な剣術とも違うんだよな。
「俺は生き残るための剣術だな。他人に教える剣術ではないからな」
「なるほど……私の剣術も似たような物だ。戦いに活かせる武芸の1つ……その方が戦に使えるからな」
再び距離を詰めて打ち合いとなる。
すると俺の手が汗でヌメリが出始めてきた。
木刀がぶつかる度にヌメリが飛び散る。
「汗……いや? 油か?」
「俺の手汗は油に近いんだ。床ではヌメリ液(ローション)として女の股を濡らすのに使うが……戦いの中ではこうやる」
俺は銀子に近づき、木刀を擦り付けると、ボンっと発火が起こり、爆発する。
互いの木刀に焦げがつく。
「驚いた……相変わらず妖力を使うな」
「神通力だ。妖力ではない」
打ち合いが続くが、時折小さな爆発が起こり、太刀筋が不規則に弾かれたり、動きが固まってしまう。
それを俺は逃すことなく、蹴りや肘鉄を繰り出すが、銀子は曲芸の用に、軽やかに跳んだり回転したり、捻ったりして攻撃を避けていく。
「だいぶ軽やかに動くな」
「ふふふ、この体に適した戦い方は色々試すだけの時間があったからな……」
そう言いつつも爆発の影響で手が震え始めている。
恐らく銀子の握力も落ちているのだろう。
「そろそろ決めさせてもらうぞ!」
まだ戦えるうちに決着をつけたがった銀子は俺に再び近づき、強烈な突きを繰り出してきた。
「甘いわ!」
俺は銀子が繰り出してきた木刀を掴むと、力を込めて捻った。
すると握っていた銀子もぐるりと一回転し、地面に倒れ込む。
俺は銀子の首筋に木刀を突き立てて
「決まったな」
「……参ったよ。完敗だ」
こうして銀子との模擬戦は決着するのだった。
「あむあむあむ……」
「相変わらずよく食べるな」
「いや、味覚が戻ってから飯が美味くてな。沢山食べてしまうよ」
あれだけ動いた後だから、銀子は空腹を訴えてきたので、俺が適当な具材でおにぎりを作ってやった。
「うむ、にぎり飯は梅干しがやはり一番美味いな。前よりもすっぱく感じてとても美味い! それに海苔……越後では全然取れなかったが、越前では多く採れるのか?」
「いや、多く採れるわけではないが、紙を作る技術を応用したら、紙の様に薄く食べやすい物になってな」
相変わらず俺が精液を放流を数年に渡って放流していた事で、越前の九頭竜川下流ではタコや貝類だけでなく、海藻類も大繁殖していた。
で、この時代海苔は養殖できていなかった為、自然に採れる海苔が市場に流れていたので、生産量が安定していなかったし、味もばらつきが大きく産地によって味が異なるというのが当たり前に起こっていた。
で、越前に領地を持つようになって、海苔を増産できないかと漁師達と相談していたのである。
漁師達は河口付近に船が流れていかないように杭を打ち込むが、その杭やロープに海苔がよく付着しているのを見つけ、海に杭を打ち込み、網を張って、海苔が付着しないかと実験したところ、俺の精子放流とも重なり、大量の海苔が採れるようになったというわけである。
その海苔をよくほぐしてから、和紙を作る要領で板状にしてから天日干しにすることで、板海苔……現代では浅草海苔と呼ばれる物と同等のを偶然作り出すことに成功していた。
これは本当に俺がきっかけは与えたものの、漁師達の手によって作られた産物であり、越前海苔として昨年より市場に出回るようになっていたのである。
特におにぎりを包むのにちょうど良く、領民達もにぎり飯にちょっとした贅沢として海苔で包む事を真似し、越前付近では広まりを見せていたのである。
「梅干しも良いが、この煮物が入った具のおにぎりも美味いな」
「ああ、佃煮か? これ醤油とみりんとはちみつで煮込んだ物だよ」
「みりんとはなんだ?」
「みりんはな」
この時代みりんが無かったので白酒という米から作ったにごり酒……どぶろくの一種の甘い酒に焼酎を加えてみりんっぽい物を作っていた。
料理酒で代用していた時も多かったが、魚料理を作る時にみりんがあると何かと便利だったので作っていたのである。
それに明との密貿易をしている時に、貿易担当の張竜からみりんっぽい酒の作り方を習った事もあり、明の料理酒として越前経由で京に持ち込まれて、竹取のおっちゃんを通して貴族の間にも広まりを見せていたのである。
それを使った料理として海苔の佃煮を作ってにぎり飯の具としたのである。
勿論佃煮もこの時代には無かったので、時代を先取りした料理である。
銀子はこの佃煮を気に入ったらしく、俺がどんな料理でも佃煮はできるぞと教えると、その保存性の良さが戦飯として使えると軍神視点で語ってくれた。
曰く、長期間戦で活動するとなると、塩味を体が求めてくるので、それにしょっぱくも甘い佃煮は最適であると熱弁。
煮込んだ上ではちみつの糖が食材をコーティングするため、長期保存ができるのである。
「又兵衛! 佃煮を研究するぞ! これは兵糧を変える発明かもしれんぞ!」
軍神スイッチが入った銀子は俺と一緒に様々な佃煮を作り、それを炊いた米で味わいながら食べていき、銀子だけで1升の米を食べるフードファイター並みに大食いをするのだった。
それ以来、銀子のことを大食い銀子とからかう時もあるのだった。