【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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紀州征伐 1

 秋の収穫シーズンより少し前から動員が始まり、いよいよ本格的な紀伊攻め……紀州征伐が始まった。

 

 津田軍は越中の防衛の為に5000の兵を残し、2万の兵を連れて行く事と相成った。

 

 火薬は備蓄を進めたので、十分な量が集まり、補給に関しても、織田家が負担してくれるので、安心して進む事ができる。

 

 一度安土城へと寄って、信長様に今回の侵攻の最終確認を行った。

 

「我々、津田軍は山手より侵入し、敵防衛線を突破したうえで、敵本拠地雑賀荘への攻撃を行いたいと思います。事前の手筈通り、海は滝川水軍と九鬼水軍に進出してもらい、浜手を丹羽殿に担ってもらい、先鋒の後詰に羽柴殿(秀吉)の軍に背中を預ける形になるかと」

 

「総勢7万か……足りるか?」

 

「信長様に本願寺を威圧してもらえれば事足りるかと」

 

「ふむ……キンカン(明智光秀)の事もあるからな。一度様子を見ておくか」

 

「それがよろしいかと」

 

「うむ、紀州が終われば本願寺にトドメを刺す。覚悟せい馬よ」

 

「は!」

 

 信長様から出陣の下知をいただき、南西へと進んでいくが、今回のうちの軍には腹が膨らんでいる白頭巾を被った人物が一緒に来ていた。

 

「なんで奥方を連れてきているんですか! 又兵衛様!」

 

「悪い島、断り切れんかった」

 

「又兵衛! 楽しみだな! 久しぶりの戦だ! 心が躍る戦いにしようぞ!」

 

 津田家が育てた大きな軍馬に跨り、妊婦というのを感じさせない軽やかな手綱捌きで騎乗しているのは銀子こと上杉謙信その人であった。

 

「鉄砲衆で有名な雑賀か……相手にとって不足は無いな」

 

「銀子、お前妊婦なんだから気をつけてくれよ」

 

「なに、戦場でくたばったらそれまでよ」

 

 ケラケラ笑っているが、いつもの腹ペコキャラはどこへやら……完全に戦闘狂モードに入っている。

 

 島も呆れてしまっているが、今回は銀子を連れてきて正解となる。

 

 

 

 

 

 

 

 先んじて織田家に下っていた雑賀衆の一部に道案内をさせながら、山道を進んでいく。

 

 今回の陣には指揮経験を積ませたいと若い衆も多く滞陣していた。

 

 まぁ加賀の男性が殲滅されたことにより、若手も動員しなければならなくなったという側面もあるが、次世代を担う若者が多く参加していたのである。

 

 さて、森の中へと進んでいくと、道案内を任せていた者より、これ以後は徒歩で進んだほうが良いと言われてしまう。

 

 雑賀衆は狙撃が得意なので、馬に乗っていると、良い的にされてしまうと……。

 

 普通の武士であれば拒否するであろうが、俺は提案を受け入れて馬から降りる。

 

「なんだ又兵衛、鉄砲が怖いのか?」

 

「銀子も降りろよ、狙撃されるぞ」

 

「なに、私には毘沙門天の加護が付いている。そうそう弾丸が当たることは無い!」

 

 と言って銀子は頑なに降りなかった。

 

 更に銀子は自身の直感で若武者を500名程俺から借りると、森の奥へと消えていった。

 

「奥方はこれだから……追いますか?」

 

「いや、自由にさせておけ。こっちは雑賀の防衛線をぶち破る」

 

 下っていた雑賀衆の一部を前に出させ、防衛線を張っている敵と対峙して射撃合戦が始まった。

 

 流石雑賀というべきか、火縄銃を大量に運用して、絶え間なく射撃音が響き渡る。

 

 一方こちら側の雑賀衆も木々を盾代わりに利用して損害を抑えながら応戦を続けている。

 

 まぁこれでちまちまやっていてもキリが無いので、俺は息子の音将に指示を出し、大筒隊を前進させ、鉄砲の射程外より砲撃を開始した。

 

 ドンドンと鉄の塊が柵や竹の盾に直撃し、障害物が吹き飛んでいく。

 

「火力差で押しつぶしてしまえ!」

 

 俺は前に出て激励をしていく。

 

 勿論そんな俺を敵は狙撃してくるのだが、俺の全身から溢れ出したローションが弾丸に当たっても受け流してしまい、身体に一切の傷がつかないのである。

 

 これが本当のローションプレイ……なんて馬鹿な事を考えていると、防衛線の一部で混乱が発生して、抵抗が薄くなり、俺はそこに向かって突撃を指示するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 私が率いる別働隊は、私の直感を頼りに進んでいくと、敵の防衛線をくぐり抜けて、内側にいつの間にか浸透することに成功していた。

 

「敵後方に出た! これより敵の頭を刈り取っていくぞ! 私に続け!」

 

「奥様を死なせるな!」

 

「これも金精大明神の加護であるぞ!」

 

「津田家万歳!」

 

 又兵衛の側室……ということになっている私が率先して突っ込むと、死なせるわけにはいかないと、他の兵も覚悟を決めて、敵陣に突っ込んでいく。

 

 それが見事に奇襲となり、鉄砲や弓で武装していた敵は乱戦になると脆く、次々に討ち取られていく。

 

「はは! これよこれ! 戦はこうでなければな!」

 

 私自身も槍を振るい、馬の突進を利用して、敵を次々に串刺しにしていく。

 

「……ち、健康になっても、所詮女の体か……もう手が疲れで痺れてきたか……どれ!」

 

 槍を使って敵が発砲寸前だった火縄銃を奪い取ると、馬上で発砲して敵将と思われる人物を討ち取る。

 

「ふむ、これぐらい暴れればもう陣も機能しないだろう。味方と合流するぞ!」

 

 防衛の為に建てられていた木壁をなぎ倒して、味方が入りやすい様にすると、又兵衛の方も気がついたのか、そこから侵入し、更に敵の防衛線をズタズタにしていく。

 

「全く無茶するなぁ銀子は」

 

 そう言われて又兵衛の方を向くと、甲冑が穴だらけになっていた。

 

「おいおい、鉄砲当たりまくっているじゃないか! 大丈夫なのか?」

 

「かすり傷1つないぞ」

 

「相変わらず妖怪の類だな君は……」

 

 又兵衛はそのまま槍を振るって敵をなぎ倒していき、勝敗は1刻も経たずに決したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 陣中で食事の準備をしながら、次の戦場を確認していく。

 

「鈴木家はここの防衛線に力を注いでいたらしいな。物見によるとこの先雑賀荘や雑賀城まで防備が完成していないらしい」

 

「それは吉報ですね。まだこちらの被害の殆どが寝返り組の雑賀衆なので、土橋隊、的場隊は何時でもいけます」

 

「大将、一気に攻め落とすか?」

 

「いや、休める時に休もう。明日の早朝に総攻撃をかける勢いで挑むぞ」

 

「朝駆けですか……うちの練度であれば問題なく出来るでしょうね」

 

「ただ普通に朝駆けをしても雑賀なら対応されるだろうから……二段奇襲といこうか」

 

 それは俺にとって初めての大きな戦であった桶狭間の戦いにて、信長様がやられた時間差による奇襲であった。

 

「なに、夜目が利く者を集めて、敵陣に鉄砲を射掛け続けるだけで良い。それで相手は勝手に勘違いしてくれるであろうからな」

 

 島がそう上手くいきますかね? と聞いてくるが、朝駆けの成功率を上げるためにも、相手を寝させないというのは効果的であると俺は説明する。

 

「なに、朝駆けが失敗したら、相手の疲労を蓄積させる戦いに切り替える。長くても1週間でケリをつけるぞ」

 

「「「「は!」」」」

 

 ちなみにうちの飯は豚肉の味噌漬けにした物を焼いた西京焼き風なのとみそ汁、それに麦飯と、陣中食とは思えない豪華な食事であり、下っていた雑賀衆がこんな食事が陣中で出てくる織田家には勝てないと思わせることにも成功するのだった。

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