【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「はぁはぁ……相変わらず凄かったな馬よ」
「興奮も落ち着きましたか信長様」
「ああ、最高の気分だ。力が漲る」
結局あの後、信長様と床に就くことになり、信長様の怒りを鎮めた。
「正直塙に任せて大丈夫か怪しいぞ。アヤツは確かに軍功は挙げてきたが、大軍を任せるのはちと不安があるぞ」
「しかし、塙殿以上に大軍を率いるのに適した重臣が居ないのも事実ですし……」
「膨張を続けたツケか。大軍を任せる人材の枯渇……馬の家臣で大軍を任せられている奴は居ないのか?」
「島なら操れるでしょうが、うちの軍は島の指揮によって柔軟的に動くことができます。引き抜かれると謙信公の居ない上杉でも手こずるかもしれません」
「うむ……育成が追いついて居ないな……森の倅や又兵衛に貸してる堀、河尻に蒲生……又兵衛と同じか少し下の世代でも育ってはきているが、まだ万を超える軍を与えるには少々厳しいからな」
一応信長様も次世代の育成には注力していた。
ただどうしても俺と同年代から少し上……秀吉殿や利家の世代は特に人材が枯渇していた。
ちょうどその頃は織田家が今川や斎藤家に押されていた時代を直撃した世代であり、織田家のお家騒動や親族同士での動乱、そして今川義元率いる今川軍によって織田家存亡の危機を乗り越えるに当たって、信長様自身が育ててきた親衛隊の多くを失った為、ちょうど30代の世代……が織田家はスカスカなのであった。
明智殿は40代後半、柴田のオヤジ殿は55の年であり、滝川殿も50過ぎ、丹羽殿も40代とものの見事に30代が秀吉殿位しか方面軍を任せられる人材が育ってなかった。
その穴を埋めるために度々信長様は他所から引き抜いて戦力を整えてきたので、中途採用が多かったのもある。
身内にべらぼうに甘い信長様は譜代家臣を使えるようにするため、機会を与え続けていたが、それに失敗しないで生き残ったのは俺と秀吉殿、後は信長様の乳母兄弟の池田恒興殿くらいか?
池田恒興殿も信長様と同じ年なので若手ではないが……。
「余が直接指揮をしてきた弊害か、指揮官の育成に失敗してしまった感じはあるな」
「まぁ私がそこは塞ぎますので、駄馬の如く扱いください」
「うむ……馬も悪かったな、北陸が安定していないのに呼んでしまって……ただ助かったぞ。これで陸は抑えることができた」
「水軍の再建には数年かかりますからね……陸路から毛利を押し込んだ方が良いでしょうが」
「うむ、播磨の国人達は余になびいているが、播磨より西は毛利の息がかかっておるからな。国力だけ考えれば上杉や武田よりも手ごわい相手であろう」
毛利は中国地方約11国を有する巨大勢力であり、これを崩すとなると相応の戦力を抽出しなければならなかった。
「頃合いだろう。敗戦の雰囲気を切り替えるためにも、余は家督を信忠に譲り、次世代の育成に注力するべきであろうな。中華の曹操の様に人材収集により力を入れるべきなのであろうか……」
「人材の扱いは難しいですからね……確かやってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かぬ……でしたっけ? どこかで人の育て方はこうあるべきと聞いたことがありますが」
「やってみせか……結構余やってないか?」
「いや……信長様がやりすぎなんじゃないですかね? 人生50年で焦るのはわかるのですが、多分今の健康状態であれば、信長様70歳くらいまでは生きれると思いますよ」
「ほぉ……70か! 爺の年を超えるな」
爺というのは信長様の教育係を務めた平手政秀殿の事だろう。
幼少期信長様が懐いていた人物であったが、信長様の先見性と自身の常識に苛まれ、更に息子達が信長様に不手際を働いた事を理由に切腹してしまい、信長様に癒えない傷となっていた。
人生50年を目安に信長様は動いているが、あと25年は人生が続くとなれば焦りも少し落ち着くだろう。
「又兵衛は何時まで生きるつもりだ?」
「自分は100までは生きたいですね」
「100か! 人生50年を2度も繰り返すとは贅沢な! まぁ馬が病気で死ぬとは思わんから、戦場で死にそうであるな!」
「はは! 戦場では死にませんよ! 死ぬとしたら女の胸の中って決めてるので」
「であるな!」
そんな事を話して、信長様と同じ部屋で眠るのだった。
翌日、津田軍は北陸の抑えの為に帰国が許され、越前へと戻ってから軍を解散させた。
本願寺攻めは長期戦に切り替え、4年から5年かけて倒すことに信長様は戦略を切り替えた。
「いやぁ……楽しき戦だったな又兵衛!」
「楽しかったら何よりだ銀子」
銀子こと上杉謙信も今回の紀州征伐は満足だったらしく、特に綺麗に決まった朝駆けは最初心配していたが、見事だったと褒められた。
「ただ又兵衛は神通力に頼りすぎる点があるな! 神の力は強力だが、神が力を貸さなくなったら崩れる脆い力でもあるからな!」
「俺の能力は神通力って言っているが、俺自身が生み出している能力なんだが」
「……やっぱり妖力じゃないか」
「妖力ではないんだがなぁ……」
そんな事を銀子と喋っていたが、活躍した俺には茶器や大量の金が褒美として振る舞われた。
流石に紀伊の土地は飛び地になって管理が難しいし、北陸と本願寺の2方面を支えるのは家臣の数的にも不可能なので、仕方がない。
「ただこれで俺は越後の上杉を見据えるのと、加賀の再建に注力する事ができる」
それに更に常備兵の拡充や、国力を上げることもやらないといけない。
「休んでいる暇は無いな。頑張らないと……」
ただ越前に帰った俺は直ぐに竹取のおっちゃんに呼ばれて京に行くことになるのだった。