【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
京に到着した俺は奈々の長男である秋定を連れて竹取のおっちゃんの屋敷に向かった。
俺が援助した事と、織田家が責任をもって京の治安維持活動をした為、治安は劇的に改善され、数年前までは亡骸が転がっていたり、浮浪者や賊が蔓延っていたが、追い出した影響で、都市としての機能が復活していた。
竹取のおっちゃんの家もその恩恵に与り、俺が修繕したとはいえ、ボロっちい屋敷だったのも建て直されて、新築の住みやすい屋敷へと変わっていた。
竹取のおっちゃんだけでなく、多くの貴族達も生活が少しずつ改善し、貴族らしい振る舞いができるようになっていた。
「おっちゃん居るか?」
「おお、又兵衛! それに秋定もよく来てくれた! ささ中に入ってくれ」
「失礼するぞ」
竹取のおっちゃんも年なのか白髪が増えて初老というくらいになっており、元気ではあるが、現役で活動できるのも10年は無いだろう。
「秋定も大きくなったなぁ……今歳は幾つになる」
「はい、今10歳(数え年)になります。元服もこの前に済ませましたし、紀州征伐で初陣も済ませました!」
「そうかそうか! 戦にも出たのか!」
「はい! 敵兵を20人程討ち取り、将の首を上げることもできました!」
「そうかそうか! 秋定、武士は楽しいか?」
「はい……と、言いたいのですが、私は奈々母様に似たらしく、兄弟に比べると武芸はからっきしでして……奈々母様に貴族としての教養を教わったり、武田恵瓊という家臣より色々習っておりましたが」
「今日呼んだのは他でもない。秋定、悪いが竹取家を継いではくれんか?」
「名門である竹取家をですか?」
「そうだ」
竹取のおっちゃんとは手紙で何度もやり取りをしていたが、来る歳には勝てないから、奈々の長男が大きくなったら竹取家を継いで欲しいとお願いされていた。
秋定にも竹取家を継ぐ意思はあるか聞くと、武士としての活躍は兄弟に比べると劣るため、できるならば貴族の道を進みたい……と言っていたので、竹取のおっちゃん……秋定からすればお祖父さんのお願いを了承するのに時間はかからなかった。
「僕やります! やらせてください!」
「そうか良かった……ところで秋定は又兵衛ができた祈祷の力は持っているのか?」
「祈祷?」
「ほら気を流し込むアレだ。治癒力を上げたり、痛みを軽減したりする……秋定もできるだろう?」
「あれですか、はいお祖父様勿論できます!」
「そうかそうか! 又兵衛の子供ならできるかと思ったが……できるのであれば話は早い。祈祷ができれば貴族達からのウケが良いからな」
「ただ秋定の祈祷はまだ未熟。私も1ヶ月程京でやらなければならないこともありますし、秋定を連れ回して祈祷のやり方を伝授しておきましょう。基礎はできているので早いと思いますよ」
「そうですか! いやぁ……又兵衛の祈祷を受けたいという貴族は多いのでね。秋定もできるとなれば、私の引退後従五位下の位を引き継いでも文句は言われないだろう」
ちゃっかり竹取のおっちゃん俺が援助したお陰で侍女や従士を雇うことができたようで、10人ほど新しい屋敷で働いていた。
秋定に、まずは手本を見せるからと竹取家の従士達に気……精気を流し込むのを、秋定にもその従士に触れて流れる精気を感じてもらう。
「男と女で気の流し方も違うし、疲れを取りたいのか、傷を癒やしたいのか、体の悪い部分を見いだすのもこの力を使えば分かってくるだろう。まだ秋定は力は弱いが、それは経験と歳を重ねれば力は強くなっていくからな」
「はい! 父上!」
「じゃあ彼女にやってみろ」
「はい……」
手を触りながらツボを押して不調の部分を探し出してその部分に服の上から手を添える。
俺ならば手を握るだけで不調を治す事が出来るが、秋定は力を使い始めたばっかりなので、その部位に近い場所に手をおいて、精気を流していく。
「上手い上手い、これなら数日教えれば、あとは経験していく事で大丈夫そうだな」
「はい! 父上ありがとうございます!」
流石種付けおじさんの子供……種付けおじさんの力も一部引き継がれている。
精気を操る力を使いこなすのもお手の物か……。
「よし、とにかく経験を積んでいくぞ。秋定、一緒に来なさい。おっちゃん、俺を必要としている貴族の方わかるか?」
「ああ、勿論だ。最初は高倉家の娘が石女の疑いがあるとこちらに頼み込まれていたから、見てやって欲しい」
「ああ、わかった」
俺は秋定と竹取のおっちゃんを連れて貴族の家々を巡るのであった。
「胃の動きが鈍っていますね、当分は粥等の胃に優しい食べ物を食べてください」
「いやぁ又兵衛の息子さんも立派な祈祷師に成られて……しかも竹取の奈々さんの息子さんで京に滞在してくれるとは! ありがたやありがたや」
数日も祈祷を続けていると、多くの貴族達が俺に祈祷の依頼が来て、秋定に経験を積ませることができた。
秋定が俺とは似ずに、奈々と同じく肌が焼けにくい、白い肌をしていたし、体は10歳にしてはがっちりだが、小顔で整った顔立ちをしていたので、秋定と同世代の少女達はもうメロメロ。
祈祷を行った数日後に竹取家に恋文が届くことが多くなり、竹取のおっちゃんも嬉しい悲鳴をあげていた。
秋定にある程度任せられると判断すると、俺はより位の高い貴族の方に祈祷を行うことになり、左大臣である西園寺公からも祈祷を依頼されるのだった。
「いやぁ、私だけでなく嫁や息子にも祈祷をしてくださるとは……信長殿が精力的に活動できるのがよくわかりました」
「信長様にも度々祈祷はしておりますが、あの方は元より神仏に愛された肉体を持ってらっしゃいますので」
「ほほ、家臣の鑑よ……近衛殿も京に居れば津田殿の祈祷を受けれたのに、巡り合わせが悪いよのぉ」
近衛とは前関白の近衛前久殿の事で、銀子こと謙信もお世話になっていた人物である。
信長様とは鷹狩り友達という関係だったが、足利義昭が目の敵にしており、兄である足利義輝公殺害の際に、朝廷側が即座に松永久秀や三好勢を朝敵認定しなかったことに腹を立て、立場の弱かった朝廷に圧力をかけて関白であった近衛前久殿を追放処分としたのである。
それに怒った近衛殿は本願寺を影から操り、織田と敵対させたり、武田や上杉といった諸勢力に上洛を促したりと義昭以上の外交能力を発揮したが、足利義昭が信長様に京を追われた事で、信長様とは関係を改善。
現在は毛利の後ろにいる九州が騒乱状態になっている為、信長様のお願いで九州諸勢力の仲裁に尽力している方だった。
「近衛様にも会ってみたいものです」
「そうかそうか。なに、彼も九州の諸大名を宥めれば戻ってくるだろうから、その時に会う場を用意しておこう」
「ありがとうございます。西園寺様」
「ホッホッホ、なに、津田殿の頼みですからなぁ……そうそう、津田殿の息子……確か秋定君でしたかな? その子に嫁ぎたいと女子が殺到しているそうではないか。私も一枚噛んでもよろしいかな?」
「息子も喜ぶと思います。是非お願いします」
「ホッホッホ、貴種には相応の女を用意するのが生業。無下には扱わないので安心なされよ」
「は!」
こうして秋定の嫁も何人か決まることになるのだった。