【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
年が明けて1577年が始まり、信長様に命じられていた秀吉殿が山陽方面軍を、明智殿が山陰方面軍を創設し、本格的に侵攻を開始したのである。
元々調略が伸びていた播磨の国は秀吉殿の弁舌が火を吹き、次々に織田家に下っていく。
秀吉には俺も昔お世話になった今孔明こと軍師である竹中半兵衛も居るし、絶好調状態。
半兵衛殿は一時期体調が芳しく無いから秀吉殿より診察して欲しいと言われ、診たことがあったが、肺結核の初期症状が見えていた為、精気を流して完治させ、半兵衛殿の食事を作っている奥方に、身体に良い料理のレシピを1冊贈り、食生活を改善したところ、新しく子供を作れるくらい健康となり、秀吉殿の軍師としてキレッキレの軍略を披露し、抵抗する播磨諸勢力を一瞬で蹴散らし、約2ヶ月で播磨全土を制圧する。
俺の方も兵糧や弾薬を送ったりして支援していた事もあり、連絡を取り合っていたが、長期戦だと奥さんのねねに会えない事を嘆きながらも、小寺家の重臣で同じ苗字すら与えられていた小寺官兵衛という若者が半兵衛並みの軍略家であり、羽柴家は両兵衛体制で戦っていくと喜んでいた。
「俺も又兵衛だから兵衛が付いているんだがな……まぁ秀吉が元気そうなら良いか。うちの娘も元気そうだし」
3年前に羽柴家の長男の秀頼君に嫁いでいた雫の次女の桜は、種付けおじさんの力を引き継いでいたのか、ボテ腹少女となっていた。
数え年12歳で桜は秀頼君の嫁となったが、翌年には男子を産み、その次の年には女の子を産んでいた。
秀頼君まだ14歳なのに2児の父親である。
秀吉殿は孫の誕生に飛び上がるほど喜んでいたし、秀頼君の教師として竹中半兵衛を付けて英才教育を施し、今回の山陽攻めにも1人の将として滞陣していた。
ちなみに竹中半兵衛から忖度無しに聞いた秀頼君の評価は頭の切れて誠実な呂布になりうる大器……と言っていた。
「武将や大将としては文句無しの器を秘めていますし、何より若い世代の家臣達から好かれているので、彼らが互いに支え合えば大領を任せられても大丈夫でしょう」
と言っていた。
「うちの軍も十二分に充実しているが、秀吉の軍も中々充実してきているんだよな」
というのも秀吉殿は一族で頼れるのが弟の秀長殿位しかおらず、家臣団を作っていくのも俺と同じで1から作っていったが、俺が雑賀衆や伊賀や甲賀の忍び出身者を引き上げたり、美濃時代に徹底した教育で家臣を育てたのに対して、秀吉殿は旧近江出身者を多く再雇用したのである。
浅井家の凋落により悪名も多かったが、京に近い立地かつ、六角や朝倉、三好等の大勢力としのぎを削って戦闘していた集団なので、武官の質もさることながら、六角や朝倉の素晴らしい政務を吸収した内政官も育っており、能力がありそうな者を秀吉殿は拾い上げたのである。
これにより十分軍団を運用できる将を確保した結果が播磨の早期降伏にも繋がった。
「問題があるとすると……明智殿の方かもな」
明智殿は京の隣である丹波国に昨年の11月頃より侵攻を開始したのだが、丹波国の要所黒井城攻略に持久戦を選択し、兵糧攻めをしていた最中、織田家に下り、丹波の道案内役を任されていた波多野秀治という国人が突如明智殿を裏切って攻撃を開始し、混乱する明智軍に黒井城兵も突撃し、大きく後退することに陥ってしまったとのこと。
しかし流石は明智殿というべきか、大混乱していた自軍を素早く立て直して規律だって撤退し、戦線を即座に引き直した手腕は並の将ではできない。
信長様もいたずらに兵を失うことなく退いたのは見事と称えていた。
ただ丹波戦線はそれにより振り出しに戻ってしまい、後退した分だけ砦や城を落としていく必要がある。
手紙で珠子の近況も含めてやり取りをすると
『おじさんを心配してくれてありがとうね。でも家臣や兵を殆ど失ってないし、まだまだ巻き返しはできるよ。秀吉殿に比べると遅くなっちゃうけど、信長様に怒られない程度にはおじさん頑張るからね〜』
と、まだ余裕が見て取れた。
信長様も明智殿に追加で援軍を送り、2月から再侵攻をするとのこと。
頑張ってほしいところである。
あとは滝川殿が領地替えで甲斐の代りに紀伊1国を貰い、これで領土は北伊勢の一部と紀伊と1国半となった。
お祝いに特製の茶器を贈ったら滅茶苦茶喜んでくれたので、相変わらずの茶器狂いであるが、マリアからすると、外面だけに喜ぶ成り上がりもののそれと侘び寂びが全くできてないと滝川殿の事を批判していた。
マリアにそんな批判されていることを知らない滝川殿は水軍の再編の為に信長様から無茶振りをされていた。
全面を鉄板で覆われた船を造れ……鉄甲船と命名されたそれの増産に苦悩していた。
『又兵衛! お前の所の大砲を回してくれ、船に備え付けの大砲としたいから』
と大砲の発注もあり、輸送する……なんて事もあった。
水軍が再編するにはもう数年を要するとし、その間の大坂湾の制海権は握れない。
塙殿が本願寺包囲を頑張っているが、どうなることやら……。
「と言っても俺は更に国力上げて、嫁を孕ませるくらいしかできないけど」
軒下で日向ぼっこをしながら、各種手紙の確認をしていた。
俺の横で日向ぼっこをするのはイシガメの玄武である。
いつの間にか庭にある池に住み着いていた亀で、去年の夏頃よりペットとして飼い始めた……まぁ基本放し飼いしているのだが、餌をあげたり、甲羅を磨いたりしてやったら、どんどん大きくなり、今1メートルを超える大きさにまで成長していた。
あと亀なのに俊敏で、餌を持って近づくと、嫁達や娘達が世話している猫達よりも素早く俺に近づいて餌の魚を咥えると、そのまま丸呑みしてから池に逃げるという亀とは違う生き物に進化しつつあった。
「玄武、お前冬なのに冬眠しないよな? 大丈夫なのか?」
キューキューと愛くるしく鳴いて俺は大丈夫だ! と言っているみたいだった。
「そうか。玄武、お前亀だから長生きすると思うけど、俺とどっちが長生きするか勝負だからな」
キューキューと分かった! と返事してくれた。
なおこの玄武は最終的に3メートルを超え、馬並みの速度で動く怪物となり、400年近く生き続ける本当の意味で玄武という神獣扱いとなり、津田家の守り神として生き続けることになるのだった。
現代の生物学者達は玄武を調べて泡吹いて倒れることになるが、恐らく種付けおじさんの能力で亀甲縛りから亀に能力が移ったのと、亀は生命や長寿のシンボルでもあり、種付けおじさんの健康長寿というのが合体した結果だと思われる。
なおマリアの息子が玄武を気に入り、よく上に乗って移動している姿が町で見られることに将来なるのだった。