【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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北府競馬場

「遂にできたか……想定よりも長くかかったな」

 

「へぇ……ここが又兵衛が言っていた競馬場って奴ね!」

 

「広いですね……ここを馬が走るのですか?」

 

「そうだ。馬を育成する上で競争できる環境は必要だと思ってな」

 

 俺は連れてきた玉と雫にそう説明する。

 

 そこには木製のスタンドに1周1600メートルの砂のコースが広がっていた。

 

 越前に来る前から馬を使った催しをしたいと考え続けた結果が競馬だった。

 

 俺も前世では競馬にハマっており、血統やコース等を色々調べたり、擬人化したゲームをやったりもしていたが、まさか戦国の世で、自分が設計して競馬場を作るとは思わなかったが……。

 

 現在津田家が管理している軍馬は5000頭近くおり、領民に貸して土地の開墾や農耕馬として使われているのを含めると1万頭近くが飼育されている。

 

 これは織田家内でも飛び抜けた数であり、馬車や駅伝制といった高速で物資や人を運搬するのに役立っていた。

 

 しかし、馬を管理するには金が掛かる。

 

 最近では自転車の登場により、軍馬の価値が少し下がってしまったのもあったり、競輪場ができて、競輪選手が脚光を浴びる中、馬術が得意な人々の不満が溜まっていたのである。

 

 その不満を発散させるためにも、自転車では足りない馬の力による輸送力向上の為にも、そして馬術の向上による軍事力を上げるためにも競馬場を作り、賭け金によって馬産を支えていければと思ったのである。

 

 出来上がった競馬場近くには競走馬を管理する厩舎も幾つか建てられ、馬の調教を行う調教師や厩務員には、馬の扱いに長けた元忍び達の働き口となり、戦で負傷して、戦力にはなり得ない負傷兵の働き口としても機能していた。

 

 そして乗り手の騎手は兵の中でも特に馬の扱いに上手いとされる者達であり、レースに勝つもしくは入賞すれば報奨金が支払われるのと、常備兵待遇なので、給金もある程度支払われる予定である。

 

 そして馬は俺が手塩をかけて育てた、大型の馬達であり、戦国の世では中型馬といえど300から400キロ程度の中、500キロや600キロの大きな馬が競走馬として登録され、厩舎で育てられている。

 

「模擬レースが始まるぞ」

 

 まだ競馬場がオープンしていないので試験運用中であるが、実際にレースが行われるようだ。

 

 10頭の馬が並べられ、騎手達が馬に乗り、紐が下ろされるとスタートである。

 

 スタートするとコースを1周してスタンド前のゴール板を通り過ぎていく。

 

 馬と騎手に取り付けられているカラフルなゼッケンで判別するようになっていて、数字も記載されていた。

 

「おお! これだけ馬って全力疾走できるんだ!」

 

「思ったよりも速いわね! あと迫力が凄かったわ!」

 

 玉も雫も興奮気味で語り、俺も久しぶりに競馬を観られて満足していた。

 

「さてこれが文化として根付いてくれると良いけど……」

 

 俺の願いはギャンブル中毒の日本人にドンピシャで盛り上がっていくことになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 北府に建てられた競馬場は4月より領民にも開放され、1着もしくは1着と2着の2頭を当てると米や着物、茶碗や布団等越前の様々な産物と交換することができる馬券が発券された。

 

 流石に最初から金と交換になると銭がどれだけ必要になるか分からないからという判断だったが、競輪でも商品券方式だったので、それに模した形であった。

 

 それに場内には安く食事ができる場所を設けて、うどんやそば、丼物なんかを振る舞い、勝ち負けの他にも金を落とせる様にしたり、馬の情報を記した記事や領内の情報を書いた瓦版……新聞のはしりみたいな物を無料公開して、人が集まりやすい社交場としての機能を持たせた。

 

 すると人々は全力疾走する馬の迫力に圧倒され、すぐに熱中するようになり、馬券は飛ぶように売れるようになっていった。

 

 勿論偽造する馬鹿も出てきたが、そういう奴は重罪としてしょっぴかれる為運営に支障が出るような事は無かった。

 

 ただ当たり馬券と交換できる米券というのが少々問題になった。

 

 競輪場でも当たると米券の交換がされていた為、紙幣代わりとして流通を始めたのである。

 

 記載された量の米と交換できる米券は商人達は銭を持つより場所を取らないし、領主である俺が信用を担保していたので、紙幣として取引できるだけの信用ができてしまったのである。

 

 大蔵長安は硬貨不足を補う為にも米券を更に発行するべきと詰められた結果、信長様の許可を取って、津田家領内で使える米券を正式に発行をし始めたのである。

 

 そんなすったもんだがあったが、競馬の試みは上手くいき、領内では馬の売買も活性化。

 

 更に屋号や馬に名前を付ける際に冠名……苗字みたいなのを付けることを許可すると、店の宣伝になると馬を持ちたがる商人が続出。

 

 勝つと馬の名前が連呼されるし、強い馬ならば種牡馬や繁殖牝馬として高値で転売できる為、投資先としても人気になっていった。

 

 商人が馬の生産牧場にも金を出してくれるので馬産家達……元忍び達も懐事情が良くなり、牧場を拡張したり、強い馬を作るのにより力を入れ、それが軍馬の質も上げる結果へと繋がっていく。

 

 なお北府競馬場の成功を見ていた丹羽殿が自身の領地である若狭でも競馬場を作りたいと言い出し、こんな面白い催しを無視できない信長様も安土城近くに競馬場を作れと命令されることになるのだった。

 




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