【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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柴田勝家の甲斐開発奮闘記

「ぬふふ、又兵衛から新作が届いたな! うむ! 今回も素晴らしい出来だ」

 

 儂の名は柴田勝家……現在織田家で筆頭家老を務めておる。

 

 北信濃を所領として持っているのだが、最近滝川一益が領地替えがあり、儂が甲斐国も領有することになってしまった。

 

 甲斐は奇病が流行っていて、農作業をすると腹が膨れて動けなくなり、最終的に死に至る……という病気で、又兵衛に何か知らないか聞いたところ、田んぼに住む貝が悪さをしているのでは無いか……と言っておった。

 

 解決策は水田を作らない事らしいが、それだと米が作れなくて、領民が飢えてしまう。

 

 馬鈴薯(じゃがいも)も数年前の大不作で領民が危機感を持ってしまった為に、率先して作れとも言いづらい。

 

 それを踏まえてどうにかならんかと相談すると、麦、蕎麦、そして果実に活路を見出すしか無いと手紙で書かれてしまった。

 

「ふむふむ……昔食った切り蕎麦やうどんを領内で広めれば米を食らう量は減らせる……か。適した麦と蕎麦の種は又兵衛から譲ってもらったからな」

 

 又兵衛がやる品種改良なる作物の質や量を増やす取り組みは津田家の秘匿技術な為真似ても短期間で成果は出ない。

 

 それでも経験則で質の良い米同士を配合すると良い物ができるという理屈は何となくわかる。

 

 まぁ儂の領地でやれるほど余裕はないのだが……。

 

 又兵衛が送ってくれた小麦や蕎麦は、肥料を適切に与えれば、普通の麦や蕎麦より約3倍の収量となるらしい。

 

 それに馬鈴薯を組み合わせれば飢える事は減らせるだろう……と書かれていた。

 

 あとは果樹を植えて、果実を売ったり、加工したりして金を稼ぎ、その稼ぎで他所から米を買う……というやり方を提示された。

 

「それで又兵衛が発見した三度栗や一年桃を譲ってくれたし、甲斐に元から生えている葡萄を加工したワインなる酒も儂は又兵衛の所で飲んだことがあるからな。あれを作れれば売れると思うのだが」

 

 三度栗は1年に3度実をつける栗であり、一年桃は1年で桃が実る品種で、これも又兵衛が発見した物である。

 

 ワインに関しての作り方は又兵衛が知っていたので、これも教えてもらった。

 

「現地を見てないのに書かれた事で適切な解決策を提示してくれる又兵衛は、やはり内政の天才だな! ここまでの大器だとは思わんかったな!」

 

 佐久間が筆頭家老の地位から転げ落ち、代りに儂が筆頭家老となったが、津田又兵衛、羽柴秀吉、明智光秀、滝川一益、丹羽長秀と優秀な者がズラリと並ぶ。

 

 一応織田家親族となった又兵衛は別枠であるが、あと本願寺方面軍を持っている塙直政か……奴と林秀貞、村井貞勝、美濃殿と慕われている斎藤利治……ここらへんが家老衆と言われるな。

 

 又兵衛の下に居る前田利家や佐々成政なんかも儂をオヤジ殿と慕ってくれているが、正直又兵衛ではなく、こっちを助けて欲しかったがな。

 

 まぁ甲斐の統治や関東の北条、越後の上杉に睨みを利かせるのは儂でないと難しいだろうな……。

 

 ただ掘り出し物として真田を筆頭に、旧武田国人衆が有能な者ばかりで助かった。

 

 長篠で多くの将兵を失っていたが、難しい立地で戦国最強の軍団を作り上げた武田の底力は絶大で、領民の多くも武田を慕っていた。

 

 そのため武田旧臣は徳川殿と取り合いになり、最終的に旧今川から武田に寝返っていた者達を含め、結構な数の武田家臣を召し抱える事ができた。

 

 お陰で武官に関しては困ることはなくなったし、長篠の敗戦で、鉄砲の重要性を認識したらしく、鉄砲への理解度を高めることも貪欲で、鉄砲職人を畿内から招集して、鉄砲を作る村を作ったりもしていた。

 

「それにしても……うむ、今回の木像も実に美しい」

 

 儂の趣味でもある又兵衛が作る木像の収集。

 

 あいも変わらず、儂と手紙のやり取りをする際、美少女の木像を一緒に贈ってくれることがあるが、儂はそれを屋敷に専用の部屋を作って保管している。

 

 かれこれ500体は貰ったが、家臣達に見せびらかした際に欲しそうにした奴には何体か譲っていたので、屋敷にあるのは300体と少しになるがな。

 

 儂の家臣の中にはその木像を再現するべく彫刻にハマった者も居たが、中々又兵衛並みの作品はまだ生み出せていなかった。

 

「またここに居たのですか! 権六!」

 

「むむ! おつやか!」

 

 おつやとは儂の嫁で信長様から見ると同じ年の叔母に当たり、戦国の数奇な世を巡った女性であった。

 

 最初は斎藤家の日比野清実に嫁いでいたが、森部の戦いで討ち取られて未亡人となり、その後2度再婚と死別を繰り返し、一時は岩村城の城代をするに至った女傑でもある。

 

 武田の西上作戦の際に岩村城が攻められたが、儂の救援が間に合い、落城を防ぎ、逆襲に転じた際に儂が惚れてしまい、口説いた末信長様の許可を取り婚姻と至った。

 

 婚姻した時既におつやの方は40歳となっており、儂も子宝は期待していなかったが、又兵衛の奴がせっかくだからと子宝を願う祈祷をすると、幾度か交わったら本当に懐妊し、無事に男子を産んでくれたのである。

 

 儂には何人も男の養子が居たのだが、皆早世してしまい、息子が産まれた時は養子も居ない状態だったので、問題なくこの子を柴田家を継がせることができると喜んだものだ。

 

 その子も今では4歳(数え年)となり、元気にすくすくと成長しておる。

 

 流石におつやの年齢的に子供をこれ以上産むのは危ないからと、それ以来交わっては無いが、儂を支えてくれる良き妻である。

 

 まぁ、儂の木像集めの趣味は怪訝そうな目で見ているがな……。

 

「オヤジ殿!」

 

「おお勝照か! どうした?」

 

「又兵衛殿より追加で贈り物です! 大きな馬数頭に銀を産むアヒルだとか」

 

「銀を産むアヒルだと! はは、また又兵衛には驚かされるな!」

 

 今飛び込んできたのは毛受勝照……毛受本家の次男坊である。

 

 毛受はすっかり又兵衛の影響力が凄いことになってしまったが、元々は儂の重臣の一族であり、勝照は儂勝家の勝の字を与えた有望な若者であり、こやつの兄である毛受茂左衛門と共に柴田家を支えてくれておる。

 

「又兵衛殿は凄いなぁ……毛受家に婿入りした際にあまり良く思われてなかったって聞いたけど、うちの父上は馬鹿な事をしたなー」

 

「はは、仕方がない。又兵衛の才にあの頃気づいておったのは一部だけだからな」

 

「オヤジ殿は流石です! いち早く才に気づいていたのですから! 僕も又兵衛殿に負けないように強くなって見せます!」

 

「うむ! その意気だ! よし、又兵衛がよこした馬を見に行くとしようか!」

 

「はい!」

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