【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「エッホエッホ」
今日の俺は自転車を乗り回して領内を見て回っていた。
馬に乗って移動するのも良いが、自転車に乗って移動するのは結構な運動になるし、俺が乗ることで自転車の普及にも繋がる。
今日も困っている領民の為に種付けおじさん動きます!
というわけで、やってきたのは一乗谷から自転車で約15分の場所にある福井の町。
一乗谷は政治的要所の為、北部は家臣や要人の屋敷や裕福な商人達の屋敷が立ち並び、南部は工芸品を作る職人街が立ち並ぶが、福井の町は今一番成長を続けている町である。
現代では県庁所在地の福井県福井市の中心部なだけあって、開発できる土地も広く、越前町、鯖江町、福井町、坂井町の4つの大きな町が点在していた。
それぞれ特徴があり、越前町は俺が建設した北府競馬場がある町であり、元々鎌倉頃までは越前国の国府……国を統治する役所の様な場所が置かれていた重要な町であり、朝倉一族が越前国を統治するに当たり一乗谷に行政機関が移動したが、商業的に発展している地域でもあり、1万人近くが生活をしていた。
特に和紙造りの職人が多く住む地域でもあり、紙座が作られ、領主である俺も紙造りの職人を保護したり、設備投資に金をかけていた。
最近では藁から繊維を取り出す技術も浸透して、紙の生産量も増加し、競馬場で発券されている米券の生産もここで行われていた。
鯖江町は浄土真宗誠照寺の門前町として栄えている町であり、一向宗と繋がりが深い浄土真宗ながら、歴代の住職は領主に従順な姿勢を取り続けてきた為、戦火に晒されることなく繁栄している場所であった。
最近は神仏ガブリエル教が越前と加賀で悪性腫瘍の様に広がりを見せているが、それを怪しんだ保守派の拠り所になってもいる。
人口はこちらも1万人ほどが住み、漆細工や紡績が盛んである。
越前でも広がりを見せている木綿栽培の中心地でもあり、品質の良い布が多く作られていた。
福井町は津田家が今一番開発に力を入れている地域であり、ゴム農園やゴム製品の工場、酒蔵や陶磁器の工房が建っていた。
商業地として発展している地域でもある。
この町では楽市令を出して、商人を呼び込み、中央通りには商店が建ち並ぶ。
そして越前一の宿場町でもあり、色街の側面も持ち合わせていた。
加賀や各地の戦災から逃れてきた女性達が娼婦として働き、娼館が建ち並んでいる。
また俺が掘り出した温泉も各所から噴き出していて、温泉宿が12カ所、公衆浴場が7カ所もある町でもあった。
一乗谷の次に湯源が多くある。
人口は2万人ほど。
最後に坂井町であるが、ここは俺が発見した炭鉱があるのを活かして製鉄が盛んである。
そのため鉄砲や大砲の工房や自転車の工房があり、坂井町と福井町の間に競輪場が建てられて賑わいを見せている職人街であった。
人口は1万人ほど。
一乗谷に住む住民も合わせて越前約20万人の人口のうち3分の1がここら一帯に住んでいた。
そんな福井の町に自転車で出かけた俺は、町民達の様子を確認しながら散策していく。
すると昼時なのに人が入ってない飯屋を見つけた。
気になったので入ってみると、店主とその息子と娘が俺を見てギョッとしていた。
「りょりょ、領主様!」
「うちに何用でしょうか!」
「ん、昼時なのに賑わってない飯屋があったのでな。立ち寄ってみたのだ」
何故賑わってないか話を聞くと、饅頭を販売する店で、数年前までは賑わっていたそうなのだが、俺が考案したそばやうどん、天ぷら、鰻屋等の飯屋が多く出店する様になると、饅頭をわざわざ食べる人は少なくなり、人が離れていってしまったのだとか……。
「とりあえず食ってみないと分からないな。饅頭を1作ってくれ」
俺は饅頭を注文すると、20分くらいかかって饅頭が出された。
食べてみると不味くはない。
戦国時代の饅頭は膨らし粉を用いた薬饅頭と酒粕を使った酒饅頭の2種類があるが、この店では薬饅頭を用いているらしい。
餡は野菜を細かく刻んで練られた物で肉は一切入っていなかった。
野菜餡と呼ばれる餡で、この時代では小豆を使った餡よりも、この野菜餡の方が普及していた。
そもそも饅頭は寺とかの精進料理として大陸から伝わった経緯があるので、まだ甘い饅頭は普及していないのである。
食べてみて分かったが、不味くはないが、これを食べるのであればそばやうどん等に流れてしまう領民の気持ちも分からなくはない。
しかも注文してから20分近くかかるというのが勿体なく感じた。
「店主、聞きたいんだが、饅頭にこだわりがあるか? それとも稼げる店にしたいのか?」
「でしたら稼げる店にしたいです……今のままだと息子に継がせる前に店が潰れてしまいそうですし、娘の嫁入りにも影響が……」
「ふむ……」
ならばと饅頭の作り方を応用して作れる食べ物を考案するまで。
俺は餡に肉を混ぜて作る小籠包と似た餡で焼く餃子の作り方を伝授した。
「稼ぐんだったら米を食べれる店にした方が良い。飯1杯2文に小籠包4つで2文、餃子4つで2文、酒1杯4文……出す料理はこれだけで良い。もしくは客を思うなら余った餡で汁物を作っても良い」
肉はうちが豚の牧場を増やしていたので、契約をすれば安く卸してくることもできるし、餃子や小籠包で使う肉の量はたかが知れている。
それに饅頭で使っていた小麦粉で生地を作って餡を包むというのは、饅頭の技術を応用が可能。
料理工程も蒸し焼きと焼く作業で饅頭を膨らますよりも時間はかからない。
俺が台所を借りて試作品を作り、彼らが食べてみると、旨い旨いと喜んでいた。
「餃子と小籠包は赤字にならなければ良い、米と酒で稼ぐ」
後は座席を工夫し、座敷ではなく、丸椅子にテーブルと1人でフラッと立ち寄れる様に変更し、餃子や小籠包を一気に焼ける様に鉄板や蒸し器も俺が調達してきた。
「あとはのぼりでも出して領主オススメの品とでも書いておけ、それで客が来なかったらもうどうしようもねぇ」
「ありがとうございます! ここまでしてもらったら、後は自分達の力で盛り立てていきます!」
その後1ヶ月して再び福井の町を散策すると、アドバイスをした元饅頭屋の店内は人で溢れかえっていた。
「良かった……繁盛したか」
なおこの店は息子が餃子を娘の婿が小籠包の技術を引き継いで、更に改善していき、現代に続く越前餃子と越前包という郷土料理にまで昇華していくのだった。