【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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性転換された農民の独白

 僕の名前は那智……元々加賀で百姓をやっていた元男だ。

 

 寺の坊さんが仏敵織田家に仏罰を下すと僕達を招集して越前に攻め入ろうとしたら、皆女にされちまった。

 

 実家に戻ろうにも姿も性別も変わってしまったため、戻ることもできず、途方に暮れていると、同じく性別や姿が変わってしまった者でも受け入れてくれる場所があるという噂を聞き、仏敵とされた織田家が占領する加賀南部へと向かい、そこの娼館で働くことになった。

 

 最初は娼館で働くことに抵抗があったものの、女の体というのはよくできているもので、上手いこと肉棒を気持ちの良い場所に当てると、こちらも気持ちよく、相手も気持ちよくなれ、大きくなった胸を使って男を気持ちよくさせてやれば、村で汗水垂らして働くよりも多くの金を手に入れることができた。

 

 ただ先輩娼婦達からはその金を使って更に自分を磨けと口酸っぱく言われる。

 

 娼婦として働ける時間は短い。

 

 その期間で身請けされるか、稼いだ金で商売でも始めないと、あっという間に野垂れ死ぬと忠告され、僕と同じ境遇でも真面目な者達は長生きするために忠告を聞き入れて、自分を磨くことに勤しんだ。

 

 勿論言うことを聞かないで酒に溺れる者もいたが、そういう奴には上客が中々付かない。

 

 芸や教養を覚えて、客を楽しませることができてようやく身請けの可能性が出てくる。

 

 最初の数ヶ月は女の体に慣れながったが、仕事をするうちに慣れていき、1年が過ぎる頃には心も女へと変わっていた。

 

 それに元男達は奇抜な髪色だったり、日ノ本の者とは別の意味で美しい容姿をしているので、需要は確かにある。

 

 そんな娼館が集まり、更に領主になった津田の殿様のお陰で、道も整備されて、色々な店が建ち並び、人の行き交いも増えていった。

 

 娼館で働いている者達も町の中ではある程度自由に動くことが出来て、買い食いしたり、着物をこしらえたりして過ごしている。

 

 勿論勉学を学んだりもだ。

 

「先生居るか?」

 

「おお、那智来たか」

 

 僕が日中通うのは津田の殿様が作った学び舎で、子供達から学を身に着けたい大人まで通うことができる勉強を教えてくれる場所だ。

 

 先生というのは領主から認められた教師の事で、学び舎で成長した生徒を領主に推薦して家臣になる試験を受けさせてくれたりもする。

 

 大陸では科挙という制度があり、それを日ノ本でもできるように改善したのだとか。

 

 津田の殿様は色々領民の為に動くからすげーや。

 

 仏罰ばっかり言っていた坊さんとは人としての徳が違う。

 

 僕が学び舎で学んでいるのはこんな成りでも津田の殿様の家臣に成りたいと思い、勉学に励んでいる。

 

 津田の殿様は娼婦だろうが女だろうが、差別されている者だろうが、使えると思った者は登用する。

 

 うちの娼館でも先輩娼婦が試験を受けて合格し、今では町役場でそろばん弾いていたり、領主直轄の施設で娼婦よりも高い給金を貰って蜂蜜作りに従事していたり、領主が建てた孤児院の院長に抜擢された者も居る。

 

 娼婦だと家を持つことは許されないが、他の仕事であれば家を持てるし、娼館で身籠ってしまっても、自分の子供を育てることもできる。

 

 娼館の仲間で恋仲になって別の仕事に就き、女2人で家庭を持つんだとぶっ飛んだ考えをしている奴もいたり……。

 

 まぁ僕は単純に娼婦をしているよりも良い生活できるし、試験に受からなくても、勉学を身に着ければ身請けされる確率が上がると思って学んでいた。

 

「願いましては、125銭也、249銭也、では374」

 

「御明算」

 

「ご破算願いましては17銭也、112銭也、224銭也、では353」

 

「御明算」

 

 そろばんを使いながら算術の練習を繰り返す。

 

 農民として田畑を耕していた頃は勉学なんて何に使うんだと思っていたが、先生に教えられる勉強の中には農学という学問があり、文字通り農業に関する知識を教えられるが、そこにも算術が関わってくる。

 

 肥料を作る際に学が無かった僕達は刈り取った草を干してから畑の上で燃やして、灰を畑に撒いたりする程度しか思いつかなかったのであるが、津田家が実践している農法だと肥料にも色々な種類があり、糞尿から作るたい肥でも人由来、牛由来、豚由来、鶏由来と同じたい肥でも違いがある。

 

 乾燥した魚を粉末にして撒く魚肥、骨を砕いて畑に撒く骨粉、米ぬかの肥料なんかはぬかと藁を混ぜ合わせて作るのに比率の勉強が必要になる。

 

 そしてこれらの肥料を育てる植物によって変えるのだから、学が無いと新しい農法についていくことができない。

 

 実際に新しい農法をやった畑とそうでない畑を比べて見せられるとその差は歴然であり、僕達がやっていた農業がいかに考え無しだったか見せつけられた。

 

 それだけでなく、娼館でも算術が使えれば金を扱う仕事を割り振られる事が多くなり、娼婦達への給料の支払い計算や食材費や消耗品の購入費の計算なんかだったり、他所の娼館と比較し、娼婦個人の権限で追加してあげれる行為の相場を計算したりと算術ができるようになったおかげで娼婦としてもやれることが色々増えていった。

 

「うっ!」

 

 算術の勉強が終わったと同時に吐き気がして便所に駆け込んで吐いた。

 

「……当たったか?」

 

 つわりに似た事が起こったということは妊娠した可能性が高い。

 

 まだ僕は身請けの話は来ていないが、来週には登用試験があるので、それに受かれば仕事に困ることは無い。

 

 何が何でも合格しないと……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 試験の結果は合格。

 

 配属された部署は新しい村の代官補佐であった。

 

 代官は佐原という若い男性で、彼も数年前の試験に合格し、代官補佐として経験を積んでから代官に抜擢されたのだとか。

 

 代官補佐は僕以外にも数名いたが、それぞれ屋敷が与えられて、そこで生活を送れることに。

 

 娼館では相部屋が基本なので、複数の部屋が使えるのは凄い嬉しかった。

 

 そして代官補佐として数ヶ月すると、流石に妊婦として動くのが難しくなり、お産のために休ませてもらって、出産。

 

 僕でも子供が産めた事に喜び、村民の協力を得て、子育てしながら代官補佐の仕事を務めることができた。

 

 2年ほど代官補佐として経験を詰んだ僕は、代官の佐原から告白され、それを機に家庭を持つことになった。

 

 今は旦那を立てながら代官の仕事を手伝ったり育児をしたりしているが、男であったのならばこんな恵まれた生活はできていなかっただろうし、僕は女になって恵まれたかもしれないなと思うのであった。




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