【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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天正摂津争乱 2

「かかれや!」

 

 反乱軍……いや、国人一揆衆とでも言えば良いか……。

 

 一揆衆は暴徒となり、摂津各地で暴れていたが、俺達の軍が到着し、戦闘が始まると、瞬く間に敗走していった。

 

 銀子は、

 

「不甲斐なし」

 

 と、不完全燃焼気味ではあったが、こちらとしては敵は弱い方が有難い。

 

 一応敵の指揮官らしき兵は土橋配下の狙撃兵達が討ち取っていたため、早期に瓦解したというのもあるが……。

 

 伊丹の町に到着すると、町は一揆衆に荒らされ尽くしており、摂津でも有数の町だったのに見る影もない。

 

「補給は難しいか」

 

「父上、補給に関しては私にお任せを」

 

「継成できるか……此度はなかなか難しいぞ」

 

「大丈夫です。後詰めの織田本軍も居ますし、補給路の確保の任に就かせてもらいます」

 

「……ならば任せるぞ」

 

「は!」

 

 伊丹の町で息子の継成に兵1000名を預けて、俺達は裏街道を進んでいく。

 

 道中一揆に加担している寺や道場を見つけては潰していき、砦を接収して何とか中川清秀殿の籠る茨木城が見える位置まで到達し、城を取り囲んでいる一揆衆に向けて発砲を繰り返した。

 

「碌な指揮官は居らぬ様じゃな。一揆衆が脆すぎる」

 

「マリアもそう思うか」

 

「加賀の一向宗はなまじ僧兵達の指揮能力もある程度あったが故に軍として機能していたが、これではただの暴徒じゃな。稲に群がるイナゴと同じじゃ」

 

 しかし銀子は別の見方をしていた。

 

「そういう者達が厄介なのは、戦とならないから逃げ出した先で賊となり補給路を荒らしまくる。今私らが線の戦いをしているとすると、彼らは点での戦いを仕掛けてくるぞ」

 

 線というのは道を表し、道を確保して退路を作ることがこの戦の意味であるが、一揆衆は点……何処から攻撃してくるか分からないと銀子は言う。

 

 過去の越中攻めの一向宗や関東遠征をした際に北条方の忍び衆に同じ戦い方をされ、長期戦となり撤退する羽目になったと彼女は語る。

 

「摂津の統治については信長様が考えるであろう。今は味方の救援を続けるまで」

 

 とりあえず茨木城にて中川殿と合流を果たした俺は彼に詳しい状況を聞き出す。

 

「こちらとしても何が何やら……ただ民から摂津の者では無い者が混じっていると聞いた。扇動した者が潜んでいるかと」

 

「また厄介な」

 

 扇動している者によって対応が変わってくる。

 

 まず本願寺から派遣されている者であれば、村々から略奪した物資が本願寺に持ち込まれた可能性が高く、本願寺の力が一時的に増す事に繋がる。

 

 本願寺が力を持てば倒すのにまだまだ時間がかかることに繋がる。

 

 一方で毛利が民衆を扇動していた場合は、毛利との和睦は不可能と思った方が良く、以後も扇動をして補給線を脅かす戦術を使ってくる為、侵攻速度を落としながら、足場をより固めなければならない。

 

「中川殿、まだ籠城できるだけの備蓄はあるか? 今我々は播磨の秀吉殿の救援に向かわねばならないのだが」

 

「……ならば私も同行させてもらおう。それに荒木殿の一族救援もするのだろう。荒木殿にはよくしてもらっていたからな。信長様に保護してもらわねば」

 

 摂津がこの状態かつ、責任者であった荒木殿やその息子が暗殺されてしまっているため、摂津の管理は荒木一族に任せることは不可能だろう。

 

 しかもこんな荒れ放題になっている場所を統治できる人物も限られてくる。

 

「中川殿、悪いが恐らくは」

 

「……わかっている。恐らく私が次の摂津管理を任せられるのであろう」

 

「ええ、私からも信長様に支援してもらえるよう取り計らいますが」

 

「かたじけない」

 

 荒木殿と同じくらい有能であり、信長様からも名指して褒められたりしていた中川殿に、若年ながら将として信長様から可愛がられている蒲生氏郷あたりが半国ずつ管理することになるだろうか……。

 

 茨木城にもいくばか兵を残し、南下して花隈城に向かう。

 

 道中に一揆衆約2万の兵が集まっていたが、俺は全軍突撃を命じた。

 

 先頭を突っ込むはもちろん俺であり、大型の馬に跨り、俺用に作られた大太刀を振り回して、敵兵を轢き潰していく。

 

「矢だ! 矢で射掛けろ!」

 

 指揮官らしき者が俺に矢を射掛けろというが、一揆衆で弓を扱える者は限られており、扱いも不慣れ。

 

 そんな者達には馬上で弩を扱う者達が逆に狙撃していき、津田家が育てた大柄の馬達を操る兵達によって簡単に敵中突破に成功する。

 

「敵は混乱している! 数を減らせ!」

 

 一揆に流れで加担している農民には悪いが、ここで数を減らさせてもらう。

 

「放て!」

 

 次々に鉄砲や弓による攻撃で、混乱していた一揆衆はバタバタと亡骸を晒していく。

 

 それを遠目で見ていた荒木一族の生き残りが籠る花隈城からも見えていたらしく、城から打って出て、一揆衆に攻撃を加え、一揆衆は離散。

 

 俺や中川殿の軍は花隈城兵達と合流するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「荒木元清も流れ矢で……」

 

「はい……」

 

 花隈城に到着し、責任者を聞くと、城代として高山友照という荒木家の重臣がまとめ上げていた。

 

 城主である荒木元清殿も流れ矢で俺達の到着前に戦死しており、荒木一族を纏め上げられる人物がこれで軒並み死亡したことになる。

 

「高山殿、よく花隈城を守り抜いた」

 

「は、はは!」

 

 一応これで裏街道にて播磨までの道は繋がった。

 

 あとは秀吉殿と連絡を取り合い、街道を死守できれば、織田本軍の後詰めが来て軍崩壊の危機は脱せるだろうか……。

 

「伝令! 毛利及び村上水軍が東進。瀬戸内海を通り、海上封鎖を試みているとのこと!」

 

「伝令! 播磨に向けて毛利両川(吉川元春、小早川隆景)が動き出した様子!」

 

「街道死守どころではないな……高山殿、兵糧の一部と兵をここに残し、我々は羽柴軍の救援に向かう!」

 

「でしたら私の息子の右近をお使いください!」

 

「息子?」

 

「はい、私には出来た息子でして、津田殿のお役に立てるかと」

 

「……使える将は1人でも欲しい。右近とやらを預かるぞ」

 

「は!」

 

 この時預かった高山右近という青年はそのまま俺の家臣に加わり、島左近、高山右近と両近と呼ばれる重臣に成り上がっていくことになるのであった。

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