【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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越後攻めへの準備

 摂津争乱により一時的に織田の勢力は後退したものの、乱の鎮圧に成功し、攻め込んできた毛利軍に打撃を与えたことで織田家としては但馬を失うだけにとどまり、その但馬も今秀吉殿が再び勢力圏に組み込もうと調略の手を伸ばしている。

 

 他にも備前の大名である宇喜多直家が現状の毛利は頼りにならないと離反し、秀吉殿に同調する動きを見せていた。

 

「これで毛利は東進することはほぼ不可能になったか」

 

「あの場で織田と決戦を選ぶことができない毛利輝元の器はそれまでよのぉ」

 

 越前に戻った俺はマリアと銀子と喋っていた。

 

「儂らは田植えが終わり次第上杉攻めかのぉ」

 

「そうなるな……銀子悪いが留守番頼むぞ」

 

「……わかった。今回は素直に従おう」

 

 上杉家を滅ぼす戦……それに銀子を連れて行くわけにはいかない。

 

「荒木の一族の皆さんはどうだ? 先に越前に来ていると思うが」

 

「それは問題ない。それぞれ一乗谷で空いている屋敷を与えて、そこに住んでもらった。何名か救護してくれた又兵衛に惚れている娘も居るが、そ奴らはどうする?」

 

「まぁ津田屋敷で働かせてみて、嫁達と相性が良ければ抱くこともやぶさかではないが」

 

「ほほぉ」

 

 荒木一族の娘達は俺が庇護していなければ織田領から追放を言い渡されていたのを知っているため、俺の気を引くことに躍起であった。

 

 一族のため、自身のために頑張っている彼女達を安心させるために1人くらいは抱かないといけないかもしれない。

 

 それは後々の話として、上杉攻めの陣容の確認である。

 

「息子達にそろそろ指揮をさせてやりたいが、最年長の高貞で18歳だから……若過ぎて不安か」

 

 一応後方だったり中隊規模(数百人)単位での部隊指揮は既にやらせているが、別働隊や大部隊の指揮はまだ経験させてやれてなかった。

 

 まぁ俺も大部隊の指揮は苦手な方だ。

 

 島が得意だから結構丸投げしてしまうことが多いが……。

 

 銀子からも、俺は数千の兵を指揮するのは天才であるが、万を指揮する大将としては個人が強すぎると評された。

 

「大軍を指揮する手本は信長や信玄みたいに部下を手足の様に動かせる重さがある大将だ。又兵衛は個人の武威が強すぎて大将としては動きすぎている」

 

 銀子がそう指摘するが、銀子自身も動きすぎる大将なので自己批判的でもあった。

 

「信長もどちらかと言うと動きすぎる大将の部類ではあるのじゃがな。ただそれ以上に使える部下を配置するのが上手い。又兵衛なら分かるのではないか?」

 

 信長様は確かにどっしり構えているというよりは自ら斬り込んでいくタイプの大将だけど、自分が出る必要が無い場合は部下に任せられるのが多分他の動きすぎる大将との違いだろう。

 

 必要に応じれば敵陣に自ら斬り込み、敵将を討ち取る……実際に何度もそれを行っているが、姉川や長篠等の重要な戦は部下の働きに任せている部分が多かった。

 

 時と場合に応じて自らの戦い方を変えられるのが信長様の凄いところであろう。

 

 そう考えると秀吉殿や明智殿はどっしり構えるタイプの武将で、部下を使うのが上手い。

 

 滝川殿と丹羽殿はどちらかといえば信長様タイプで切り替えができるタイプ、柴田のオヤジ殿も歳で最近はどっしり構えるタイプに切り替えていた。

 

「あれ? 敵に突っ込む大将、織田家だと俺くらい?」

 

「気づいた様じゃな。又兵衛くらいじゃぞ」

 

 敵に突っ込むタイプの大将は強いが、同時に脆い。

 

 上杉謙信を失った上杉軍を見ていればよくわかる。

 

「俺も戦い方を変える必要があるのか?」

 

「時と場合によるのぉ。切り替えられるのであれば戦の幅が広がる。戦は手数の多さと使える手駒の強さで決まる。将棋をやっていれば分かるであろう。使える駒が少なければ、それだけで不利になる。逆に駒が多ければ有利じゃ」

 

 全ての駒が龍や龍馬に成れば強いし使える戦術も多いが、強い駒1つだけではその駒が取られれば全体が瓦解する。

 

 しかも俺の軍は、それが王である故に取られると負けに繋がる。

 

「幸い駒は育ってきておる。又兵衛はもう少し部下に任せてみよ。それだけで幅が広がるからのぉ」

 

 マリアのアドバイスがやけに染み渡るのであった。

 

 

 

 

 

 越後侵攻まで約1ヶ月半の時間があるので、兵の鍛錬に力を入れていた。

 

 津田軍でも段階的に兵農分離が行われていて、銀のアヒルや各種加工業の発展、競馬や競輪等の税収が確保できる施設や明との密貿易の拡大で輸出が絶好調というのもあり、常備兵の人員が増加していた。

 

 基本その兵士達は越前の福井の町と一乗谷、加賀の金沢御坊跡地に建てられた毛受屋敷……毛受高貞が拠点としているので毛受屋敷と言われている……の周辺と越中の前哨基地として建設した高岡城周囲の4カ所に分散して居住しており、総兵数は約2万5000人を数えていた。

 

 兵だけでなく、忍び衆も含めると更に5000名追加され、3万人が常備兵として雇われている。

 

 金食い虫ではあるものの、津田軍が上杉軍とがっぷり四つで戦えたのも常備兵あっての代物。

 

 最近だと銀輪部隊(自転車部隊)、砲兵隊、騎馬隊と専門職に分かれて部隊運用がされるようになったが、兵の主兵装は鉄砲になっていた。

 

 鉄砲を訓練でも扱えるだけの火薬の生産が安定したことや、鉄砲そのものの品質向上、集団運用するための戦術の確立等で、一般兵でも鉄砲が扱えるだけ兵の質が上がり、それが俺の前世で行ったような自衛隊式の訓練を一部取り入れたので、どんどん練度が上がっていく。

 

「戦になってもこれならば大丈夫だろう」

 

 軍全体を管理している重臣の島左近も練度に納得していた。

 

 次の戦に向けた準備も万端である。

 

 

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